長良川>円卓会議(1〜8)
情報提供者 : 長良川河口堰建設に反対する会
提供日付 : 1995/04/30
登録経由地 : 自然環境フォーラム プレスリリース01 #396
注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した
情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向
けにのみ提供された情報が含まれています。
また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ
のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている
場合があります。
長良川河口堰に関する「円卓会議」(第1回〜第8回)
調査委員からの発言を中心に,会議の中で確認されたことをまとめました。
第1回 テーマ「防災」 3月12日
・この地域は世界的に珍しい活断層の宝庫。活断層性の地震がこのすぐ近所に起こる。
・プレート境界型の地震、内陸の地震含めて15回は少なくともこの地域は被害が歴史の
中に残っていると思う。その履歴は学問的に調査して調べることをやってほしい。
・今回の調査で活断層の典型というようなデータを出した。河口堰があろうがなかろう
が、地震に対する対応を今早くやらなければならないものととらえてほしい。
・桑名断層系は典型的な逆断層。ずれると数メートルの上下のずれを起こす。平野の方
は沈み、液状化で低くなる。その後にすぐ連動して別の地震で大津波がやってくること
も十分あり得る。
・過去の事例の議論だけではなくて、もっと息の長い、広い視野から議論をしてもらい
たい。調べるのが人間の英知。(以上、尾池委員)
注)「この地域」とは,長良川河口堰建設現地近傍の意味です。伊勢湾北部域周辺には
養老断層,桑名断層,伊勢湾断層,天白断層など多くの断層があります。福井県の敦賀
湾から伊勢湾さらに南海トラフにかけては「敦賀湾−伊勢湾構造線」というものが認め
られます。プレート境界型の地震とは,この地域の場合には南海トラフにおいて発生す
る地震をさします。内陸の地震とは,福井地震や兵庫県南部地震のように活断層型の地
震をさします。エネルギー源は同じですが発生のメカニズムは違います。この地域には
この2つのタイプの大地震と被害がくり返しあったことが史料からわかっていますが,
史料に残されていないものもあると考えられています。この地域の地震については地震
学者よって地震発生のメカニズムについての解釈がいろいろあるようですが,共通なの
は,今後十分に監視していかなければならない重点地域であるという認識です。
第2回 テーマ「水需給」 3月26日
専門の調査委員はいない。
・近年の水需要の実績値を確認した。今後の需要予測について,見解の相違が明らかに
なった。
第3回 テーマ「環境等」 3月27日
・夏の渇水期で水温が非常に高いときに、溶存酸素の限界3mg/lを割るか割らないかと
いうことは、やはり実験したかった。(西條委員)
・汽水域で重要なのは成層状態。淡水と塩水の濃度が徐々に変わっていたところに、非
常に大きな飛躍をつくるわけで、これはやはり生態系にとっては大変なことだと思う。
(奥田委員)
注)昨年度1年間行われた環境に関する調査項目には水質調査も含まれていました。
昨夏は記録的に降水量が少なく,ゲートを降ろしての水質調査を行なえませんでした。
調査を行うつもりで雨が降って流量が増えるのを待ってゲートを下ろそうとしていたよ
うですが,結局そのような流量に達しなかったため断念したということです。昨5月に
調査のためにゲートを降ろしたときに,川底部の溶存酸素が予想をこえて著しく減少し
ました。限界3mg/lとは生物が辛うじて生きられる値として想定したものです。夏の実地
調査ができなかったので,室内実験とシミュレーションで代替実験になっているのです
が,5月の実測はそれまでの常識をこえていたので,やはりぜひ実地で実験したかった
という発言になっています。
注)ゲートを降ろすことによって,堰上流は淡水になり,堰上流の汽水域は完全に消滅
します(建設省も認めている)。
第4回 テーマ「塩害など」 3月29日
・マウンドをとれば塩水くさびは今までより長くなる。しかし、行ったり来たりで先端
はぼやけたようになる。濃い塩水が底をはって一挙に上流まで行くという状態にはなら
ない。それはモニターで予測できる。表層は、真水が補給され、塩水の排出機構さえ備
えれば塩害が起こることはない。地下水については、モニターしてあれば十分対応でき
る。
・堰を閉め切ってしまわなくても、いろいろな対策はある。堰を閉じたときの夏のプラ
ンクトンの発生、下流側の堆積の問題なども残っている。今すぐ閉める必要はない。
(以上、奥田委員)
注)マウンド,とは河床のある地点に運搬されてきた土砂が堆積し盛り上がっている部
分をさしています。ここでさしているマウンドとは,長良川河口から約15km地点に
ある盛り上がりをさしています。マウンドの成因は,河川水の流速が潮の関係でこの地
点で著しく低下し,運搬土砂を堆積したものと考えられます。塩水くさび,とは淡水と
塩水とでは比重が異なるため,淡水と塩水を接すると,塩水が淡水の下にもぐりこみま
す。一般に海に開放する河川では流量や河床勾配などにより程度の差はありますが,海
水が河床に沿って河道をさかのぼって侵入しています。この塩水のようすが「くさび」
のようなので,塩水くさび,と呼んでいます。長良川でもこの塩水くさびが侵入してい
るのですが,マウンドの存在により,高濃度の塩水の遡上がくいとめられている,と考
えられています。塩水くさびといっても,明確に淡水と塩水の境かはっきりしているの
ではなく,河道の形状などにより混合されるので,鉛直方向での混合の度合により,先
端はぼやけた状態になります。混合がおこらない場合の塩水くさびの遡上限界について
は計算式にいれて予想できるそうなのですが,混合される場合には計算が難しいそうで
す。
第5回 テーマ「防災など」 4月13日
・活断層の活動履歴を調べれば次の活動時期はわかる。1994年度はこの調査はしておら
ず、河口堰の中央から1.5kmのところに活断層が存在することだけを調べた。すでに活
動期に入っているから早く調べた方がよい。今回の活動期で動くかもしれない5本の1
つに伊勢湾断層が含まれる。河口堰に水をためるのは危険。水をためる前に調べておい
た方がよい。(尾池委員)
第6回 テーマ「環境など」 4月15日
・夏は藻類が多量に発生するなど、水質・環境への重大な影響がある。8月の実験をし
ないと河口堰の運用はできない。運用開始前の調査と、運用開始後のモニタリングは違
う。
・夏の水質調査の必要性は大臣に直接2回も伝えてある。5月の魚の遡上調査を命じて
おいて、8月の水質調査に触れない大臣コメントは理解に苦しむ。
・ぜんそくの原因としてユスリカは重要。ユスリカの種類・量について今後も調査が必
要。
・堰の運用は汽水域の破壊である。堰下流は塩分濃度が高くなり上下層の分離も進む。
堆積も進行する。データ不足であり、もっと調査・実験すべきだ。(以上、西條委員)
第7回 テーマ「塩害など」 4月16日
・表層は水を補給すれば、稲・農業に問題はない。
・明確な塩水くさびとして塩水遡上を想定するのはやりすぎ。実際には鉛直混合が進ん
でおり、昨年の渇水時でも塩水遡上は満潮時18km、干潮時13km。塩害が出ないように取
水することはできる。(奥田委員)
・浚渫を先に進めて塩水遡上は監視するという市民からの「浚渫先行提案」は妥当。
(西條委員)
第8回 テーマ「水需給など」 4月22日
・「余剰分の水」があることを互いが認めた。
・反対市民より、愛知・三重などの行政を入れた水需給のシンポジウムの開催と「まと
めの円卓会議」の開催が大臣へむけ提案された。
・双方は、浚渫を行うという点でも一致したが、塩害防止の考え方で食い違っている。
何らかの「円卓会議」をやってよかったという歩み寄りを半歩でも残せたらと思う。
「まとめ」の会があればいいと思う。(西條座長)
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「円卓会議」に関する報道では,平行線,という語句がたびたび用いられてきました。
たしかに議論の時間の多くおいてはこれまでの主張のくり返しではありました。しかし
一つでも共通認識をもてるように努力した結果,上記のような専門委員の見解が明らか
になりました。また,円卓会議を行なわなかったなら出なかったであろう資料も出され
ました。これは大きな成果だと思います。
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