大台ケ原>大台ヶ原に人工林を作るな
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会
提供日付 : 2003/05/08 11:30
登録経由地 : 自然環境フォーラム プレスリリース07 #00775
注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した
情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向
けにのみ提供された情報が含まれています。
また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ
のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている
場合があります。
『植えてまで回復には賛成できない』 『大台ヶ原に人工林を作るな』
・・・・各委員から意見
― 第2回大台ヶ原自然再生推進計画調査・森林再生手法検討部会 ―
2003年 3月 3日奈良に於いて開催された。
環境省近畿地区自然保護事務所長の挨拶に続いて議事に入る。
議事(1)森林再生手法検討調査について
{1} 大台ヶ原の森林再生の現況について
過去文献、現地調査、空中写真の判読などによる植生現況図作成のプロセスが
事務局(関西総合環境センター)から説明された。現況植生は以下のカテゴリー
に区分された。トウヒ群落 ブナーウラジロモミ群落 トチノキーサワグルミ群
落 コウヤマキ群落 ミヤコザサ群落 崖地・崩壊裸地等。
続いて、自然再生に資するために一委員の研究の概略説明があった。対象地は
ブナーウラジロモミ群落の中でミヤコザサが租に生えている群落。
・今まで鹿と天然更新の関係が扱われてきたが、実際には実生は鹿だけでなくネ
ズミも食べ、鳥も加わった複雑なネットワークが繰返されている。
・ササは5年間で上限に達する。ササが急激に回復するのが大きなポイントであ
る。
・針葉樹はササより鹿の影響が大きく、広葉樹はササの影響が大きい。鹿がササ
を食べることによって広葉樹の生存率が上がる。鹿は必ずしも悪者ではない。
・シカが居てササが生えている状態が節足動物が最も多い。土壌水分が多いため
である。
・ササの現存量が多い程土壌動物が多い。土壌動物が多いということはその生態
系が健全であるということである。
・鹿が少ないところはスズタケが密生する。
・鹿が少ないとササを利用するウグイスなどが増え、鹿が多くなって枯れ木が増
えるとキツツキなど が増える。鳥にとっては鹿が多くても悪い影響はない。
鹿の数が中途半端なのが一番悪い。
・現在、鹿とササは平衡状態にある。
・鹿が多くても天然更新が進めば問題がないが、現在はササが天然更新を阻害し
ているので何等かの 処置を施す必要がある。
・鹿を駆除するとササが急速に回復してきて天然更新を阻害する。ササは数十年
に1回一斉枯死をするからそれを待つか。
・鹿の駆除を途中で止めるとササは今の3倍に増えるので、一旦捕り始めると捕
り続けなければならない。捕るのを止めると今よりひどい状況になる。
・ササを刈るしかない。鹿は春から秋まではミヤコザサを主な食料にしている。
鹿を捕らなくても、毎年ササを半分以上刈れば鹿は減り、枯死木も減り、実生
は増える。
{2} 地域区分の基本的な考え方について
1.大台ヶ原地域の現在の植生における問題点について
(1)トウヒ群落
1.分布域の減少
2.群落構造の衰退―母樹の減少・後継樹の欠落・後継樹生育環境の悪化
(2)ブナーウラジロモミ群落 群落構造の衰退
(3)大台ヶ原における確認種の減少―夏緑樹林帯・山地草原
2.森林再生を目的とした地域区分の考え方
・生物多様性の高い大台ヶ原の植生の分布および群落構造とはどのようなものか
・トウヒ群落、ブナーウラジロモミ群落、コウヤマキ群落、トチノキーサワグル
ミ群落をもとに地域区分することを基本とする
・トウヒ群落は潜在的に生育可能な地区もトウヒ群落として地域区分する。
・詳細な地域区分については多様な群落構成種の生態的特性、立地特性を考慮す
る。
第1回部会のレポートでは、正確を期すため各委員の発言を忠実にテープ起し
をしたが、その労力に比べてあまり意味がないことを知った。今後は、賛否を別
にして注目すべき発言の要約を記すことにする。
委員の発言
「土壌の調査もすべきだ。」
「地域区分の考え方の中で、トウヒを特別視しているのは納得できない。現在、
他の植生が生えているのでそれをトウヒ群落にするには大きな改変を伴う。積
極的に手を加えて大台ヶ原に人工林を作ることは嫌だ。」
「ササを減らせ。本来なかったところはなくせ。ササを減らせば鹿は減る。ただ、
どこまで減らすかが問題だ。」
「西大台ではスズタケがなくなったところに鹿が来てブナの実生を食べている。
ササが減れば鹿が減り森林が回復することにはならないだろう。」
「草本植物の実生の調査が必要。シードバンクは果たしてあるのか。」
「潜在植生的なブナ林を最後の目標に設定するのか、中間的なギャップ的なとこ
ろに生える樹種を目標にするのか。群落ではなくもっと細かい目標が必要では
ないか。」
「植生現況図は自然再生事業には役立たない。」
「北海道ではブルトーザーで地剥ぎしてエゾマツを植えるのが常識だが、地剥ぎ
の後になにを求めるのかが問題だ。基本的には植えてまで回復には賛成しない。」
「植えても再生を図るべし。人為の導入も選択肢に入れるべし。」
傍聴者の発言
「下層植生の調査不足」
「ミヤコザサを刈るだけで森林再生はできるのか。鹿を駆除しているのだから防
鹿柵はいらないのではないか」
最後に、環境省から、懸案の大台ヶ原自然再生推進事業と自然再生推進法との
関連について、「結論的には、現時点では、自然再生推進法の適用を考える状況
に至っていない。現在検討中の調査は法律に基づくものではなく予算に基づくも
のであるので、自然再生推進法とは切り離して検討していきたい。自然再生推進
法は手続き法である。平成13年度に自然再生推進計画調査の予算措置を準備し、
大台ヶ原では14年度から行なわれている。更にその計画が作成された後の事業
【自然再生整備事業】の予算措置を措置した。」という説明があり、座長からの
「出来るだけ早く適用してほしい」との要望に対して「遅れることのないように
やりたい。」と環境省は答えた。
環境省の説明にあるように、自然再生推進法の適用は時間の問題のようだ。全
国で10箇所余りの、自然再生推進法の「先取り」といわれる計画調査の一つであ
ったことがはっきりした。
大台ヶ原は国民の共有財産である。官僚や一部研究者の恣意的な行為は許され
ない。部会の論議は「大台ヶ原での自然再生とは何か」という基本的な論議を積
み残して、自然再生推進法適用を前提にした技術論を急いでいる感じを受ける。
枯葉一枚、枯れ枝一本拾ってもいけない特別保護地区の原生的自然の“再生”で
ある。学問的にも技術的にも未経験な“再生事業”をこの度初めて行なうだけに、
その「危険性」が多方面から指摘されている。失敗は許されない。より慎重に、
謙虚に、冷静に熟慮検討・論議が進められることを熱望する。
2003年3月8日 田村 義彦
|