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大台ケ原>環境省は入山規制を明記せず
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会 提供日付  : 2003/05/08 11:45 登録経由地 : 自然環境フォーラム プレスリリース07 #00779 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

        基本目標に「入山規制」を明記しない環境省

     < 平成14年度第2回大台ヶ原自然再生検討会 >

 2002年11月15日に第1回検討会が開かれた後、野生動物・利用対策・森林再
生手法の三部会がそれぞれ2回づつ開かれ、その結果を持ち寄ってまとめるた
めに標題の会議が2003年 3月27日に奈良で開催された。

議事 [1] 第1回自然再生検討会及び各部会における検討状況について
 吉井環境省近畿地区自然保護事務所長の挨拶に続いて議事に入り、事務局の
(株)八千代エンジニヤリングが説明をはじめたところでハプニングが起きた。
座長から「委員からクレームがついた。この説明はコンサルタント会社がする
のではなく環境省がするべきではないか。」との発言があり、更に座長から「
各部会の検討状況は各部会長に報告してもらいたい。形をしっかりしておくこ
とは大事なことだ。」との要望があり、環境省も了承して各部会の座長が報告
をすることに変更された。

 最初からそうすべきが当然であるのに、何故環境省はそれをしなかったのか。
役人がするべき仕事を税金を遣って民間業者へ“丸投げ”する“行政慣行”は、
それを知らない市民には全く理解し難いことである。本会は鹿捕殺問題が生じ
た当時からその疑問をしつこく環境省に糾してきたが「最終責任は環境省にあ
る」で済ましてきた。
 官僚自身が何故しないのか。その理由は検討会蔑視である。許認可業務など
権力を伴う仕事はまさか民間業者に丸投げすることなどあり得ないであろうが、
検討会の資料作りとか実際の野外調査、鹿の捕殺などの実務は民間業者にやら
せて自分の手を汚すことはしない、というのが永年の官僚の伝統なのであろう。
その結果、現場・実務を知らない官僚の机上の空論がまかり通ることになる。
官僚の常識が市民の非常識であるこの構図を正さない限りこの国に未来はない。

【委員の発言】
・資料『大台ヶ原の森林生態が衰退した原因と現状』のフロー図について
「原因と現状を示していない。仮説でよいから考えられる問題構造を示せ。
事業を進めることで仮説 を検討していくことになる。」
「タイトルの<衰退した原因>を<衰退したと考えられる原因>に書き換える
べきである。」
「現状把握が主体になっている。回復のストーリーに集約せよ。<再生>とい
う言葉は嫌いで<健全 な姿に戻す>が適切。」
「各部会で検討したことをこの検討会でまとめられるのか。出口でまとめるの
は難しい。」
論議の結果、このフロー図はもう一度書き直すことになった。

・森林再生手法部会報告について
「トウヒ減少の理由は?」
 森林再生手法部会座長答えて曰「何回かの台風です」
「森林衰退の面積と要因を示せ。場所的な特異性を示せ。」
 森林再生手法部会座長答えて曰「1972年と2002年とは組成が違い把握しにく
い。」
「退行遷移の過程を示せ」

・野生動物部会と利用対策部会の報告についてはさしたる論議なし。
「現在の駐車場を撤去して下に駐車場をつくれ。根本的対策が必要で、できる
はずだ。」

議事 [2] 自然再生の基本的考え方〔案〕について
1.対象地域の現況と課題
(1)生物多様性保全の観点からの大台ヶ原地域の重要性
(2)大台ヶ原地域の森林生態系の衰退の現状
(3)自然再生に向けた課題  植物からみた課題  動物からみた課題 
                              利用についての課題
2.自然再生に関する目標  植物からみた目標 動物からみた目標
                            利用についての目標
3.事業の基本的な考え方  順応的管理 慎重な取り組み 多様な主体の参画
                            新たな施策展開への展開

【委員の発言】
「山上の駐車場はいらない。特別保護地区の道路は歩かせろ。山上では泊めない。」
「自然再生推進法との関係は?」環境省「この検討会では自然再生推進計画調査
だけ。」
「修復すべきものとして、<生態系の機能、構造>となっているが、本来の構成
要素の関係性の視点を入れる必要がある。」
「大台ヶ原の特性を踏まえろ。現在の調査と<この基本的な考え>では作業仮説
ができない。」
「<自然再生に関する目標>のなかに衰退に至るメカニズムを明らかにしながら
修復していく、わかっていない原因を明らかにしながら順応的手法で進むことを
明記すべし。」
「順応的利用をしながら課題を解決していこう。」
「<基本的な考え方>を今日中に決めなければならないのか。予算に関係するの
か。」
環境省「予算に関わることはない。方向性を出してほしい。」
「単なる修復ではなくて、原因を明らかにしながら修復していくということでな
ければならない。原因究明と修復が平行して行なわれなければならない。原因究
明してからやるのではない。事業目的の中に原因究明を入れろ。」
「鹿の影響が大きいにも拘わらず書かれていなのは何故か。」
「<課題><目標>の順になっているが、目標が設定されて課題が生じるのであ
る。目標を作成することが最終目標になっている。」
「課題と目標の整合性がよくない。」
「<順応的管理>を<順応的管理・質的管理>にしてほしい。」

【傍聴者の発言】
 ここで、傍聴者の発言が許されたので大台ヶ原・大峰の自然を守る会の田村が
発言した。「利用対策部会では質の改善と量の適正化をパラレルにとりあげて論
議したが、<利用についての目標>は質の改善に偏っていて量の適正化が記され
ていない。<利用による自然環境への影響が自然の回復力の範囲内であり云々>
とあるが、これは利用対策部会では全く論議されていない。環境容量の調査を今
からはじめるのか。量の適正化を明記してほしい。」
 利用対策部会座長「もっともだ。質の改善と量の適正化を文章の中にはっきり
入れることによって目標にして、その目標に向かって順応的利用に具体的に取り
組んでいきたい。」
 田村「利用については順応的という手法を越えたラジカルな手法が必要な段階
に来ているのではないか。」

議事【3】事業の評価手法の検討について
(1)	事業評価の概要
  ア.事業評価の必要性
  イ.環境価値と事業評価の考え方
(2)	事業評価の手法
  ア.評価の流れ
  イ.評価のスケジュール

【委員の発言】
「あらゆる公共事業で事業評価(B/C)は当たり前のことで遅きに失したくら
いだ。大台ヶ原に即した評価をするべきだ。」
「経済的評価だけでなく科学的評価をせよ。」
「調査方法の計画ができたら、関連ある何人かの専門家にみてもらったらどうか。」
「1986年から始まった大台ヶ原トウヒ林保全対策事業の評価を2002年の時点で切
って評価せよ。現在検討中の自然再生事業に続けるな。」
「評価は事業を前進させるために位置づけるべきで、自己目的化してはならない。」

「検討会資料を各委員に事前に配布せよ。事前に打ち合わせをするべきだ。」
環境省「努力する。」
 行政的表現の常識的解釈では「努力する」は「何もしない」ということであろう。因
みに、今回の資料は座長にだけ前夜にFAXで送られたそうである。これで充分な
論議ができるはずがないが、官僚はもともと充分な論議など求めていないのであろ
うか。

 最後に自然再生推進法との関係について環境省から説明があったが、他のレポー
トに何度も書いたので省略する。最近出た『釧路湿原自然再生事業ニュースレター』
Vol.1 によると、「自然再生推進法に先駆けて、環境省全国第1号としてスタート
した」とあるので、臨席の自然環境計画課課長補佐に「大台ヶ原を第2号として自
然再生推進法に移行したいのか」と重ねて質問したが、国会答弁のような“官僚の
答弁”は従来通りであった。

次回検討会は6月頃開催の予定。

【独白】
 すでに三つの作業部会の論議を聴いて各検討委員の自然再生のストーリー、イメ
ージがかなり違っていることを知っていただけに、この親会議でまとめる難しさは
予想していた。論議が噛み合わなかったことにはとくに驚かなかった。
 しかし「自然再生の基本的な考え方〔案〕」に入山規制の文字がなかったのには驚
いた。入山規制を検討するために利用対策部会を新たに設置したのではなかったの
か。私は以前、どこかの部会のレポートに、環境省は最後には、“検討会の論議を
他所に”自己の思惑を通すであろうと書いた。もしそれが当っているとすれば、環
境省にはもともと入山規制をやる気がないということになる。更にもしそれが事実
だとすれば、原生的自然の保全を真剣に願う市民に対するこれ以上の侮辱、愚弄は
ない。“検討会の形骸化”で済まされる問題ではない。数年前、突然「対等のパー
トナー」などと言い馴れない言葉を口にして不気味に市民に擦り寄って来た官僚は
まるで詐欺師だ。

 鹿の問題にしてもそうだ。「鹿がトウヒを枯らした!鹿を殺さなければ森が消え
る!」とあれだけ大騒ぎをして鹿狩を始めた以上、鹿は自然再生の重要なテーマで
あるはずだ。ところが、自然再生推進計画では重要なテーマとしては取り上げてい
ない。鹿捕殺計画を策定した検討会の座長がそれを指摘したが、環境省は黙して語
らなかった。やはり、科学的な真面目な対策として鹿狩を決めたのではなく、官僚
のメッツをたてるために強引に決めた以上、官僚にはもはや鹿を問題にする必要が
失せた。「鹿は終わった。次は再生事業だ。」鹿検討会が自然再生検討会の野生動
物部会とは別に設けられたのも、残務整理をさせるための深慮遠謀であろう。昨年
度は45頭を目標にして25頭しか捕殺できなかったが、検討会では対策の議論を抜き
に捕殺継続がきまった。頭数など問題ではないのだ。要は1頭でも殺せばよい。
 官僚の露骨な常套手段を、民主的ポーズを装った会議の場で見せ付けられただけ
に、その落差に嘔吐をもよおした。

 本会がしつこく要求してきた「トウヒ林保全対策事業」の事業評価がようやく実
施されることは一応評価したいが、内部評価だけに、環境省の不誠実な姿勢からし
てかえって責任逃れの結論を出す危険性があり、市民は目をそらしてはならない。
 しかも、事業評価すべき対象はトウヒだけではない。例えば、空中回廊の「周回
線歩道整備事業」にも2億円の税金が浪費され、顰蹙をかった。従来の歩道の部分
的改修であれば1/10の費用で出来たであろう。しかもその空中回廊を更に延長しよ
うとしている。
 また、昨年から始められた鹿捕殺も、方法を考えれば遥かに安い費用で出来ると
関係者から批判の声が出ている。正確な金額を環境省に質してまだ返事がないが、
1頭50万円位かかったことになりそうだ。大台ヶ原が官僚・御用学者・業者の“税
金浪費の山”に見えてくるのがなさけない。

 それにしても、愚かな人間どもが大台ヶ原をめぐって、かしましく不毛の論議を
重ねている姿を、大台ヶ原の<いのち>が笑っているように思えてならないが、そ
の<いのち>が風前の灯火にあることが悲しい。
                      2003年 4月 2日   田村 義彦






  

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