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大台ヶ原>歩道整備についての質問・要望書
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会 提供日付  : 2003/08/01 10:18 登録経由地 : 自然環境フォーラム プレスリリース07 #00982 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

                             2003年 7月19日
環境省自然環境局 近畿地区自然保護事務所
 所長 亀 澤 玲 治 様
                           大台ヶ原・大峰の自然を守る会
                                  会長  田村 義彦
                    奈良市紀寺地蔵町1001−1谷幸三方

    大台ヶ原周回線歩道整備基本計画についての質問並びに要望書
                
                記

 所長ご就任おめでとうございます。ご着任早々でご多用のところを恐縮に存じ
ますが、下記の諸点についてご教示戴ければ幸いであります。

[I]2003年 2月27日、環境省直轄事業施行委任を受けた奈良県と環境省は関係
機関、自然保護団体等に対して標記基本計画の説明を行いました。(レポート添付)

 本会は、「大台ヶ原周回線歩道整備基本計画」(以下【基本計画】)について、
「1999・2000両年に亘り行なわれた「空中回廊」などへの反省がみられず、旧態
依然とした観光客の利用促進に役立つ歩道整備であることを納得し難い」として、
設計図の完成(8月頃)を待って、施工前に再度説明することを求めました。同
席した自然保護団体も同様の希望でした。地元自治体も、図面を希望しました。
 一方、本会は鈴木俊一環境大臣宛に『大台ヶ原周回線歩道整備基本計画の凍結
と入山規制早期実現を再度求める要望書』(添付)を提出しました。
 8月が迫りましたが、どのような予定なのかお尋ねします。

[II]本会は既に、2002年 9月 1日に『大台ヶ原周回線歩道整備基本計画策定へ
の提言』(添付)を提出してありますが、貴省が本年2月14日に公表した
『山岳地域における歩道のあり方』と【基本計画】を対比しながら、その問題点
を指摘します。
(『 』は貴省の方針)

(1)貴省は最初に『歩道に対する考え方』として『自然を理解するには五体五
感で直接的に自然を体験することが最も効果的であり、そのための手段として自
らの足で「歩いて」ふれることが基本となるべきものである。』と掲げています
が、【基本計画】は自然と『歩いてふれる』ことを阻害しています。
 全国各地に見られる木製デッキ、大台ヶ原の空中回廊はその最たるものですが、
【基本計画】の対策工もその流れにあります。観光客の歩き易さを追うあまり、
『歩いてふれる』意義を忘れ、上記の方針に矛盾する結果になっています。

(2)【基本計画】は貴省がいう『自然条件、自然景観に合致する登山道整備』
ではありません。 貴省は、大台ヶ原が年間5000ミリ近い豪雨が降る亜高山帯の
虚弱な『自然条件』であるという認識に欠けます。雨が降れば、シオカラ谷は濁
流になり、数日間はにごりが引きません。隆起砂岩の上を覆う薄い表土が雨の度
に洗い流されて、基岩が露呈している山岳地帯であります。貴省はそれを都市公
園に近い認識をしています。

(3)この基本的自然認識の間違いから、歩道を『探勝歩道』もしくは『園路』
と規定して【基本計画】が作成されていますが、大台ヶ原の歩道は『登山道』で
あります。登山道と認識すれば、緊急に整備を要する個所は見当たりません。
2002年 9月 9日の現地説明会(レポート添付)においても積極的に整備を求める
声は聞かれませんでした。

(4)又、基本的自然認識の間違いが過剰整備を生んでいます。登山道であれば
無整備若しくはは若干の整備ですむ個所に踏板工、梯子階段を並べています。露
出根の上を踏板工で覆うなどは必要のない整備です。「歩行ルートの明確化」に
しても、入山者が多いためにそうなるのであって、過剰利用を前提にした歩道整
備は間違いであります。

(5)『整備技術の向上』のために近年注目を集めている近・自然工法など『伝
統的工法』をぜひ取り入れていただきたい。予算上の配慮もあったと聞きます。
河原の石を積んで石垣を造る地元に伝わる技術は大台ヶ原でも利用できるでしょ
う。

(6)大台ヶ原に必要な整備は箱物的整備ではなく、正に『継続的な維持、補修
の充実』であります。ボランティアによる歩道補修が行われているやに聞きます
が、大台ヶ原の自然は、素人の定年退職者の手に負えるほどチャチではありませ
ん。経験豊富な地元住民の労働力、技術にゆだねるべきです。昨年の現地説明会
においても、地元住民から強い要望が出ましたので、『きめ細かな補修』を喜ん
でやってくれるでしょう。
 
 現在の大台ヶ原の最大の課題は過剰利用による人為の影響の排除であります。
そのために、ご承知の如く、現在、大台ヶ原自然再生検討会において入山規制の
早期実施に向けて論議を進めています。歩道整備は過剰利用による人為の影響の
排除を考慮すべきであるにも拘わらず、逆に過剰利用を前提に考えて、かえって
人為の影響を加えようとしているのが、この【基本計画】の致命的欠陥でありま
す。今になってもまだ、5年前の空中回廊建設時の計画完結を意図するのは間違
いであります。

[III]自然公園法改正と自然再生推進法との関係についてお尋ねします。

(1)貴省は大台ヶ原における直轄事業と自然再生推進法に基づく自然再生事業
との関係について、「現時点で自然再生推進法を適用して、基本的な考え方を示
して協議会を呼びかける段階ではない。将来、条件が整った段階で、自然再生推
進法を適用するかどうか検討して判断したい。」と大台ヶ原自然再生検討会の席
上でも繰り返し説明して結論を先延ししてきました。
 ところが、2003年 5月19日に開催された「中央環境審議会自然環境部会自然公
園のあり方懇談会(第4回)」の席上映写されたスライドによれば、「自然再生
事業の実施個所 環境省平成14年度実績」と題して、大台ヶ原が「直轄事業の調
査段階」として記載されています。標題の「自然再生事業」は、自然再生推進法
適用必至の先取り表記でしょうか。それとも、法律に基づかない一般用語でしょ
うか。
 貴省は従来、法律に記されている言葉と全く同じ言葉を、あえてその法律に基
づかないあいまいな形で多用して国民を混乱させてきました。現在の「自然再生」
にしても同じですが、行政・メディアが多分に恣意的に混乱を惹起しているきら
いがあります。「自然再生」が正義の象徴であるかのイメージを、曖昧な状態で
国民の間に定着させたい国家の意志がうかがえます。
 最近、貴省の情報のあらゆるところに「自然再生」の言葉が踊り、あたかも自
然公園法までもが自然再生推進法に包含されてしまったかの如きイメージを与え
ようとしています。自然公園法で出来ることは何も「自然再生」など名乗らずに
行えばよいものを、すべて「自然再生」と銘打たなければならないような印象を
与えようとしています。そのために、「新・生物多様性国家戦略」に「国立・国
定公園を自然再生事業を優先的に実施する場所と位置付ける」と布石が打たれて
いて、深慮遠謀が読み取れます。

(2)貴省は2003年 6月30日に開催された「自然公園のあり方懇談会(第5回)」
の席上配布された懇談会事務局による中間整理表「自然再生と自然公園について」
の中で、「自然再生事業と自然公園との関係」について「国立自然公園は国民的
資産であり、自然風景を支える生態系が健全であってこそ価値が保たれるので、
損なわれた自然環境の再生は、その価値を高めるために不可欠」と、いままで全
く見聞しない「価値論」を開陳しました。
 この標題にいう「自然再生事業」は自然再生推進法に基づく自然再生事業とは
考え難いのですが、ここでも自然再生推進法との関係が曖昧です。又「健全な生
態系」「損なわれた自然環境」とはどのような状態をさすのか定義不明確なまま
の論議に当惑します。 そこで、大台ヶ原について具体的に考えますと、トウヒ
の純林が台風のダメージをきっかけに、現在遷移の過程にありますが、それは決
して「価値の低下」ではなく「失われた自然環境」でもありません。従って、当
然「再生」の必要もありません。森林は動いて変化しています。
 30年前に「人為を排するために」税金で買い上げた大台ヶ原は文字通り「国民
的資産」であり(この言葉は本会が言い続けて来た言葉で、今回貴省が初めて明
記したことは感慨無量であります)、人為が加わらない原生的自然そのものが
「価値」なのであって、そこに再生事業によって人為を加えることはそれこそ
「価値の低下」を来たします。 
 大台ヶ原には「失われた自然」はありません。従って「自然再生」の必要もあ
りません。大台ヶ原の「自然再生」事業は貴省の方針に矛盾しますが、ご所見を
うかがいます。

(3)貴省は、自然公園法の改正に基づいて2003年 4月 1日、自然公園法施行令
第4条を改正して、「公園事業となる施設」に「自然再生施設」を追加しました。
「公園事業となる施設」は施行令第4条に既に網羅されており、そこに何故「自
然再生施設」を追加しなければならないのか理解に苦しみます。「自然再生施設」
を追加したことは、自然再生推進法とどのような関係にあるのかお尋ねします。
 
(4)上記「自然公園のあり方懇談会(第4回)」の席上映写されたスライドに
よると、施行令第4条には明記されていないカテゴリィ「利用施設」と「保護施
設」に分類して、「自然再生施設」は保護施設に属しています。
 「自然公園のあり方懇談会(第5回)」資料「自然再生と自然公園について」
の中では、「自然再生施設の具体的イメージ」として、釧路湿原・広里における
地盤掘り下げ対策が提示されていますが、この対策に対して、釧路湿原自然再生
大会の応用生態工学会のシンポで、国交省から「そこまで(表土を剥がしてまで)
して、戻さなければならないものは何か」と疑問が呈されました。私も現地を見
ましたが同じ想いであります。 大台ヶ原の場合「自然再生施設」という「保護
施設」をどのようにイメージすればよいのか具体的にご教示ください。
 
(5)標題の「大台ヶ原周回線歩道整備事業」は「自然再生事業」として行われ
るのでしょうか。その場合、従来数々の自然破壊を行なって来た施設整備と、何
がどのように異なるのかご教示ください。

「新・生物多様性国家戦略における自然公園における自然再生事業の位置付け」
によると、「調査設計段階から事業実施、完了後の維持管理に至るまで、地域住
民やNGO等との合意形成を十分に図ること」となっております。又、施設整備
事業は公共事業であります。
 【基本計画】を、従来の如く、地域住民やNGOの合意なしに強行施工するこ
とは、貴省の最近の基本政策にもとる由々しきことであります。【基本計画】を
再検討して、住民との合意形成を図るべきでありましょう。
 本会は、貴近畿地区自然保護事務所の情報公開、合意形成の姿勢を評価してき
ました。日出ヶ岳頂上周辺整備については両者の協議により、不充分とはいえ、
それなりの成果があったと考えます。この状態を継続し、更に住民の意見が反映
されるべきです。
 ご多用中恐縮ですが、誠意あるご回答を期待します。
                                 以上





  

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