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大台ケ原>山岳利用から新しい利用を
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会 提供日付  : 2003/11/02 17:00 登録経由地 : 自然環境フォーラム プレスリリース08 #00216 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。


ワークショップでの提案

       「山岳利用から新しい利用を考える」

 環境省は一昨年11月、自然再生検討会の中に利用対策部会をつくり、私も委員
の一人として参加して、昨年から論議をはじめました。長嶋先生はその座長です。
本来であれば、その部会としてこの席に何等かの提案をもって臨むべきですが、
まだそこに至っておりません。従って今夕は検討委員としてではなく、自然保護
団体代表としてお話をさせて戴きます。

 私共の会では25年前に、『大台ヶ原の自然保護と利用への提案』を作成しまし
たが、今年の正月に改訂しました。その改訂版が今、お手元にお配りしました
『自然保護ニュース』です。これもまたその後若干改訂しました。
 
 最初に、自己紹介を兼ねて個人的なことを少し話をさせて下さい。
 私は若狭で生まれ育ちまして、初めて大峰・大台に来たのが敗戦後の旧制中学
3年の春休みでした。吉野から山上ヶ岳まで登り、ワサビ谷を下り、天ケ瀬から
尾根を越えて木和田に出て、河合道を大台ヶ原に登り筏場道を下りました。大台
教会は留守でしたので日出ヶ岳の測候所らしき建物にもぐりこんで寝ました。目
を覚ますと枕もとに雪が積もっていたのを覚えています。
 
 それ以後、ひたすら山を登りました。自然保護と出合ったのは、1970年でした
か、発足間もない守る会の会長が登山雑誌に「大台ヶ原の自然を破壊しているの
は登山者だ」と書いているのを読んでおかしいと思い、たまたま総会が奈良であ
ることを新聞で見て、出かけまして「ドライブウエーや皆伐による自然破壊のひ
どさを思えば登山者のキャンプなど高が知れている。登山者を自然破壊者呼ばわ
りするのはおかしい」と反論したのですが、「外から批判するより中から言え」
と言われて入会したのが運の尽きで、ミイラ捕りがミイラになってしましました。

 何が言いたいかといえば、私は学者や評論家のように高みから自然保護に関わ
っているのではなく、登山者の感性、立場にこだわって自然保護に関わってきた
ということと、大台ヶ原では、観光客には甘く登山者に厳しい偏見が一部学者に
よって流布されて行政の政策を誤らせて来たが、それは正されるべきだというこ
とを最初に申し上げます。

 前置きはこれくらいにして、持ち時間がたったの15分しかありませんので、資
料をご覧ください。
 まず、2ページのIIの「基本理念」ですが、私達の基本的な考え方は、「大台
ヶ原の原生的自然の保護」です。理由は、原生的自然が「人間の生物的基盤にと
どまらず精神性の基盤」だからです。 そして、その原生的自然を保護するため
には、IIIの「原則的に保護して、例外的に利用」するということです。このあた
りの論議は今日は時間がありませんので次の機会にしますが、あとで資料をぜひ
お読みください。
 
 さて、ドライブウエーが開通した昭和36年(1961)から40年間、官も民も観光
開発のために、大台ヶ原を観光資源と見たてて経済的利益を追求してきましたが、
年間25〜30万人の過剰利用で原生的自然はダメージを受けて回復が危ぶまれる状
態になりました。環境省もその事態を深刻に受け止めています。

 そして、なによりも大事なことは、村の将来を真剣に考える地元上北山の心あ
る方々が、すでにそう感じておられるということです。村の将来を真剣に、深刻
に考えておられる上北山村住民の皆様に、心からの敬意を表します。

 大台ヶ原の原生的自然は上北山村の財産です。それは子孫からの預かりもので
す。いま食いつぶしては子孫に申し訳がたちません。目先の利益に目を奪われる
のではなく、長い目で総合的にお考えいただきたいと思います。

 大台ヶ原の自然再生のための調査と議論が昨年からはじまりましたが、一旦失
われた原生的自然は人間の知識や技術をもってしても二度と甦らせることはでき
ません。昭和61年(1986年)から始まったトウヒ林の再生事業も15年かけて失敗、
税金の浪費でした。これがもし民間企業の事業でしたら、会社は倒産しています。
環境省内部で投資効果の評価を受けることになりました。かりに原生林を人工林
化しても、それは原生林の再生ではありません。私達にできることは、残された
原生的自然を全力を尽くして保全することです。これ以上過剰利用で原生的自然
を損なってはなりません。

 そのためには、3ページのVに書いていますが、大台ヶ原を観光の山から登山
の山に復権することです。それは何も観光客を追い出せというのではありません。
いま、心ある登山者に見捨てられた大台ヶ原に、登山の対象として登山者を呼び
戻したいというのが私の夢です。

 この8月に、環境省は自然環境研究センターに依頼して利用者アンケート調査
を行いました。その結果は明日、利用対策部会で初めて報告されるのですが、そ
れに先立って、環境省と自然環境研究センターのお許しを得てこの席で引用させ
て戴きます。このアンケートは地元の皆様にとって示唆に富む内容を示しており
ます。

 そのアンケートによりますと、利用者の目的は、登山、ハイキング、風景鑑賞、
自然観察の四つがほぼ1/4づつで、登山とハイキングを足しますと5割になりま
す。しかし、ツアーバスで来て日出ヶ岳に登るのは登山ではありません。服装は
登山者ですが、中身は観光客です。そうではなく、筏場道、河合道を額に汗して
登る登山者の姿を見たいのです。しかし、近鉄上市から筏場までタクシーで2万
円かかります。奈良交通さんへ、筏場まで朝夕1便のバスをお願いに行きたいと
思っています。河合道も同じです。山上からの眺めも素晴らしいですが、額に汗
して登ってこそ、大台ヶ原の素晴らしさ、大きさ、値打ちがわかります。
 
 そのためにまず必要なことは、4ページの入山規制です。
これを、入山者数の規制だけだと受けとらないで下さい。入山規制は利用者の教
育との二本立てでなければ意味がありません。その意味で11ページの(8)ビジ
ターセンターの教育的機能の強化は絶対にやらなければ駄目です。環境省が3億
円もかけて改修したビジターセンターの中に、県の職員しかいないのはおかしい
のです。環境省職員が常駐し、ボランティアの協力を得て、質の高い利用者教育
をするべきです。利用者はビジターセンターでレクチャーを受けないことには山
に入れないくらいにすべきです。
「量」の適正化と「質」の改善が目的であることをぜひご理解ください。

 又、入山規制を即収入減と短絡して受け止めないで戴きたい。昨年調べてきま
したが、上高地では「行きにくい」という付加価値がついて土産物の売上はかえ
って延びています。ツアーバスが路線バスの運行を妨害していますので地元では
ツアーバスはもういらないと言い出しています。マイカーから乗り換えた利用者
を運ぶ路線バスの定期運行の方が大事なのです。

 これからはエコツアーの時代です。立山では地元の自然保護団体が10回も主催
して好評でした。各地の経験に学んで、上北山村でもぜひ計画していただきたい。
 将来、人口は確実に減ります。それに対応した長期的・総合的な政策で、経済
の改善を図る努力が求められるでしょう。

 ちなみに、私が所属する日本山岳会自然保護委員会は関西支部長と連名で、10
年間の入山停止期間を設けて、自然がどのような方向に変化するのか、今後の自
然保護方策をきめる資料をとれと環境省に提案しました。
 いつでしか、かなり前に旧伯母峰トンネルの天井が崩落して一夏、利用者が入
れなかった年がありましたが、その年、大台ヶ原の自然は実にみずみずしかった、
とここにおられる田垣内さんがおっしゃったのを私ははっきり覚えています。自
然に対する人間の影響を除くことが、自然を甦らせる特効薬であることは確かで
しょう。

 さて、では入山規制のためにどうするか。まず、4ページの(1)のマイカー
規制です。さしあたってはマイカーからシャトルバスへ乗り換える方式ですが、
大台ヶ原の場合は季節変動が激しいですから、年3回のピーク時規制から始めて
様子を見ればよいと考えています。 アンケート調査では、利用者の7割がマイ
カーで来ているにも拘わらず、「マイカー規制・シャトルバス」に賛成する人が
41%、「路線バスの運行便数を増やし、バス利用を誘導する」という意見が28%、
合わせると7割の人がマイカー規制に賛成しています。すでに、全国に28ある国
立公園の半数以上でマイカー規制を実施しています。マイカー規制はすでに世論
だといえます。

 そして、このようなマイカー規制を行っても47%の人は予定通りまた来ると答
えています。更に、予定通りには来ないと言った残り半数の人の9割が、予定を
延期して規制のない日、即ち混雑を避けて来ると答えています。これは計らずも、
尾瀬などで行われている「利用の分散」です。自然公園の望ましい利用のあり方
を国民自身がすでに先取りしているといえます。むしろ、現在まで入山規制を尻
込みしてきた行政の方がはるかに遅れているのです。

 また、年1回以上来る利用者・リピーター、即ち大台フアンが4割程度います
ので、入山規制を実施しても、村の方が心配される利用者の激減には、直ちには
つながらないのではないでしょうか。しかし、リピーターは原生的自然が破壊さ
れていく経過をするどく見ています。アンケートにもきびしく書いてあります。
自然を良い状態で維持しないとリピーターに見放される危険性があります。その
意味でも、原生的自然の保全に官民一致して全力を尽くさなければなりません。

 次は(2)の入山料の徴収です。世論調査をみてもいまや常識です。一人
 500円として年間20万人で1億円になります。環境省は箱物予算は出しますが、
維持費などは出しませんので、入山料を公園管理財団の財源として運用すればい
いわけで、当然村も参画すべきです。

 次が5ページ(3)のトイレの有料化。自分の利益しか考えないメンタリテイ
の日本人にカンパを訴えても駄目です。1回100円か1日100円位の使用料は当然
です。

(4)は重要な問題ですので後で言います。

(5)は自然公園法の改正で新たに設けられた規制の方法ですが、ブナ林が危機
に瀕している西大台の西半分を立入禁止にしてほしいと考えています。
(6)登山者を大台荘・山の家に泊めるためにキャンプ禁止・コンロ使用禁止に
したのは実に恥ずべき規制です。山岳国立公園の正しい利用のあり方から考えて、
原生的自然を肌で感じられるキャンプを禁止するなど、もってのほかです。大台
ヶ原を登山者にとっても魅力ある山にするために、予約制有料キャンプ指定地を
作ることは絶対に必要です。

(7)の登山道については、いろいろ書いています。いま環境省・奈良県と交渉
を重ねていますが、時間の関係で省略します。
 ただ、昨年の現地説明会で村の方が「億の工事がきても村にはお金が落ちない。
鍬やスコップで直す小さな歩道整備の仕事をさせてほしい」と環境省に直訴され
た姿をみて感銘をうけました。全くその通りです。日出から正木峠をへて正木ケ
原までの約2億円の木道工事の檜材は岡山から買ったそうです。林業の村のど真
ん中の工事に何故地元材を使わないのか、不思議だと皆さんもお思いでしょう。
行政はこのあたりから正すべきです。
 
 原生的自然は微妙なバランスで維持されています。法的には利用者は枯葉一枚、
枯枝一本拾っても罰せられます。その原生的自然に手を加える作業は、経験と知
識のある地元のプロに頼むべきです。
 
 最後に重要な提案を二つ申し上げます。
 まず、5ページの(4)吉熊観光の解散と大台荘の村営山小屋化です。
 設立後40年、今年3月末の貸借対照表によると1億6千万円の借金があり、県
民の利益にも、村民の利益にもなっていません。県議会や県庁の中にも声がある
と聞いています。全国的にも破綻した第三セクターの問題が論議されています。
三セクで儲けようという時代はすでに終わったと思います。
 
 環境省のアンケート調査では、利用者の62%が宿泊しません。利用者の多くが
山麓に宿泊しています。上北山村に泊まらせる努力をしなければなりません。
 最近の利用者のニーズは高いです。すでに智恵を働かせて山麓に泊まっていま
す。温泉のない山上で、冷凍食品で観光客をひきとめようとしても無理です。
 大台荘は規模を縮小して早発ちの登山者のための上北山村村営の山小屋にして、
山の家は取り壊してキャンプ指定地にするべきです。

 もう一つが、14ページ VII の集団施設地区の国有化です。
 国が民有地を買上げた時に、本州製紙に寄付させて県有地にしたのはフェアで
はありません。昨年の検討会で大台ヶ原の管理がうまくいかない原因は行政の多
元化にあるという説明が環境省・奈良県からありましたが、そうであれば、国に
寄付して一元化を図ってもらいたい。それが本来あるべき姿です。

 盆暮れの節季には全戸にお金が配られたというくらい豊かな村有林を持つ上北
山村が、いま人口千人を割る現実には言葉を失いますが、一方、総森林面積2万
4千ヘクタールの61%が天然林であるという現実を見ますと、大台ヶ原の価値も
原生林ですが、上北山村のキイワードは「天然林の村」ではないかと思います。
村の活性化のためにその天然林を生かす道が何か開けないものかと、林業の門外
漢は夢を見ています。
 私達は大台ヶ原山麓の人工林の自然林化を要望してきましたが、環境省も一昨
年、その方針を示しました。

 蛇蠍の如く嫌われてきた自然保護団体と皆様が一堂に会してお話ができるとは、
正直、夢にも思わなかったことです。時代の流れを感じます。これから、まだま
だ道は遠いでしょう。しかし、今夕、最初の一歩を踏み出したと思います。
 後の討論でいろいろご批判をいただければ幸いです。有難うございました。

                              田村 義彦


  

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