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大台ケ原>第2回森林生態系部会・続々
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会 提供日付  : 2004/01/18 14:15 登録経由地 : 自然環境フォーラム プレスリリース08 #00363 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。


   森林生態系部会 実証的植生タイプ別保全再生手法案まとめる。
        < 承前 平成15年度第2回森林生態系部会レポート >

 森林生態系部会は、「2003年度に実施した各種調査、これまでの対策等の評価分
析の結果概要(中間とりまとめ)により、●土の上では針葉樹の実生がみられない
(コケの生えた倒木・根株、岩上では生育する)こと。●防鹿柵・ラシ巻きにより
シカの被食を排除することで、母樹の保全が可能なこと。●ササの繁茂は実生の生
長を阻害すること。 と言った点がデータの面からも確認されつつある」として、
「中間的な段階ではあるが、次年度以降防鹿柵内にて森林を6タイプにわけて実証
的に取り組むべき保全再生手法の案を、以下のように整理」した。(但し、針葉樹
の実生が巴岳の山頂近くの土の上に見られるし、防鹿柵・ラス巻きが母樹の保全を
可能にしているとは独断に過ぎるが、ここはそれを論ずべき場所ではないので稿を
改める。)

タイプI(ミヤコザサ)
 1)地掻き+播種
 2)地掻きのみ(有機物が含まれる表土を除去して岩を露出する)
 3)ササ刈り+播種
 4)ササ刈りのみ(ミヤコザサの地上部を除去)
 5)播種のみ
 6)地掻き、ササ刈り、播種のいずれも行なわないコントロール(柵内対照区で
   代用)

 1)〜5)の5つは正木峠既設柵内の南向き斜面で実施。
「播種」については、本来地掻きのみを実施したところに母樹からの種子散布を予
想しているが、トウヒの結実に変動があり、次年度は種子散布が期待できないため、
保存されている種子の播種を実施し、擬似的に散布された状態をつくりだす。
[地掻き、ササ刈り、調査区の規模]
  面積は3m四方とし、その内部に調査区2m×2mを設定し、調査。なお、各調査枠
 の中央(東西方向)に被陰を行なうための遮蔽物を立てて、北側は乾燥化を防ぐ。
 ササ刈りは、新桿が出る5月頃及び地下部への養分の転流が起きる前の8月頃の2
 回とする。

タイプII(トウヒーミヤコザサ)
 1)倒木・根株上の実生の追跡調査+倒木・根株周りのササ刈りを実施する。
   (ササ刈りは防鹿柵設置によるササ伸長に伴う被陰を除くため)。
 他のタイプとの比較として。
 2)ササ刈り+播種
 3)ササ刈りのみ 
 の2パターンも実施する。ササ刈りの規模、調査区はタイプIと同様とする。
 ・現在あるトウヒ林を傷めてしまうおそれがあるため、地掻きは行なわない。
 ・トウヒの更新だけを考えるのであればササ刈りの必要はないが、林床植生の衰
 退を防ぎ多様性を確保するという考えに基づき、実験的に狭い範囲でササ刈りを
 実施する。誤伐に注意する必要がある。
 ・倒木・根株を設置する前に、実際に更新が起きている現状の分析を行い、実験
 デザインを設定する。
 ・倒木・根株設置後は光条件の記録も行なう。
 ・倒木・根株と呼んでいる発芽環境としての土台の作り方について、基本的な実
 験は早めに実施したほうが良い。
 ・現在伸長しつつある倒木・根株上の幼木について、光条件などの推移とともの
 成長をモニタリングしてゆく。

タイプIII(トウヒーコケ疎)
 特に試験を実施しない。防鹿柵を設置する。シカが排除されたことに伴い、点在
するミヤコザサの前線やコケの推移を、記録する。

タイプIV(トウヒーコケ密)
 特に試験を実施しない。保存の対象であるので防鹿柵を設置する。柵内対照区の
みがある区であり、 岩れきのコケ林床へのミヤコザサの進入やコケの状況を監視、
記録する。
 光条件の調節(被陰)によるミヤコザサの除去が考えられないか検討する。

タイプV(ブナーミヤコザサ)
 1)ササ刈り 2)地掻き(ミヤコザサの根系を破壊する程度)を実施する。
防鹿柵を設置する。地掻き、ササ刈りの規模、調査区はタイプIと同様とする。

 タイプVIA(ブナースズタケ密)。
 特に試験を実施しない。
柵内、柵外対照区内の林床植生調査枠9ヶ所において、スズタケの新桿及び現存株
を記録する。
 スズタケのないところでは、スズタケの回復や伸長がみられるかどうか、下層植
生の回復が期待できるかを監視する。

タイプVIB(ブナースズタケ疎)
 特に試験を実施しない。
 柵内、柵外対照区内の林床植生調査枠9ヶ所において、スズタケの新桿、現存株
及びミヤマシキミの 消長(面的な分布の変化)を記録する。

今後の課題・・適切な発芽床(木材、岩等)の設置に関する実験(例:倒木の利用等)
[設置する根株・倒木]
 ・正木峠周辺の倒木・根株は使用可能であれば使用する。
 ・外部から持ち込む場合は、上北山村の間伐材を使用する。使用する材はヒノキ
 が望ましい。
 ・材を組むなどいろいろな手法を検討する。
[発芽床の調査・実験の実施場所]
 ・駐車場周辺でよい。
[播種する種子の入手先]
 ・上北山村森林組合が毎年トウヒの種子採取を行なっており、ストックがある。
     __________________________

 ようやく「森林再生手法」が具体的に見えてきた。実験段階ということもあるが、
一昨年の部会発足当初、検討委員が口にした「重機で土を入れ替えて、根瘤菌をま
いてトウヒの苗を植えさせろ」といった乱暴な結果には一応ならなかった。

 部会は「森林再生への慎重な取組と、自然の復元力に委ねるという観点から、発
芽環境の改善に関する手法案について検討した」としている。 そして、「数年後
には結果が見えるようにするか、若しくは実験当初から長期間を要する旨を明記す
るなど、第三者にわかりやすくしておく必要がある。」と国民への配慮を見せた。
 更に環境省は、「これはあくまでも実験である。将来、森林再生事業を行なう場
合は別の検討を行なう」と説明した。

 それにしても、またまた「何故トウヒなのか。」
 昨年暮れ(2003年12月25日)の森林生態系部会で、1986年以来17年間継続された
トウヒ林保全対策事業(後に森林保全対策事業に改称されたが内容はトウヒ)の失
敗が明らかになった。
 現地に12万2千粒を播種したが現在1本も育っていない。圃場にやはり12万粒播
種したが、726本を移植しただけで、現在は山上駐車場のそばでわずかに育てられ
ているだけ。移植した726本のうち現在生育しているのは71本だけ。一昨年、昨年
に移植した140本についてはその可否を云々する段階ではない。
 このように、トウヒ林保全対策事業は失敗し、その非効率性から現在費用対効果
の評価にかけられている。普通はここで幕が引かれるはずである。それが何故、自
然再生計画でもやはり「トウヒなのだ」。
自然再生は過去の復元ではないと官僚はいう。そして、森林は変化する。1000年前
にはミズナラ、ヒノキが優先種であったというデータもある。トウヒが消えて、他
の樹種に替ってなぜいけないのか。本会は17年まえからそれを環境省に問い続けて
きたが、未だに答えを得ていない。今、改めて問いたい。

 環境省の自然再生宣伝パンプ『忘れてきた未来』では、「トウヒ群落の分布域の
減少」を強調している。森林総研は昨年、京都のシンポで、大台ヶ原の森林はあと
20年で消えると市民を脅した。思うに、国民に悲惨に映る正木峠の白骨林の風景を、
巨大予算を伴う自然再生事業の目玉として利用しようとする官僚、研究者の意図を
強く感じる。何度も言ってきたが、大台ヶ原のトウヒ問題は、科学の問題ではなく
官僚ノメンツと思惑のからんだ政治の問題としか思えない。

 当初の予定では、今年2004年3月に大台ヶ原自然再生事業計画が策定されるはず
であった。そのためか、この案は「中間的な段階であるが」とことわってまとめら
れたが、他の野生動物の調査は不充分であるという複数の検討委員の意見に基づい
て、本年春、夏も調査を継続することが環境省近畿地区事務所長の決断で決まった。
その他、各種の調査、評価もまだ結果が出ていないものが多い。仮にこの手法でこ
れから3季調査を行なったとして、データがまとまるには、検討会が認める通り「
数年若しくは長期間を要する」であろう。そしてその上で、再生事業を行なう場合
は、「別の検討」に時間が要る。

 一方、利用対策部会も2月8日に上北山村で第2回ワークショップを開いて地元住
民の意見をようやく聞けるようになった段階である。環境省が求める「合意形成」
は果たしていつのことか。

 やがて、今月16日に親会議と称される自然再生検討会が開催され、本手法などが
検討されて、予定ではここで事が決するはずであろうが、拙速を慎むべきである。
一昨年の「大台ヶ原ニホンジカ保護管理計画」のような見切り発車は絶対にすべき
でない。

 かつて「大台ヶ原は里山だ」と言って後で取り消した検討委員が、この検討会の
最後に「再生計画が絶対に必要なので、調査が目的ではない」と、真剣に科学的検
討を加える検討委員諸氏と環境省に対して失礼な暴言をはいた。霞ヶ関に媚びを売
ったつもりかもしれないが、今や官僚ですらこのような愚かな言葉は口にしない。
すでにそのような時代ではないことを知るべきだ。この暴言が検討会にも環境省に
も何の影響も与えなかったことは幸いであった。

 信頼できる過去のデータが存在しない大台ヶ原で、2年間で事業計画を策定する
ことは最初から無理である。自然再生計画は大台ヶ原の自然も人間も初めて体験す
る危険な事業である。過去に人間は多くの失敗を重ねてきたが、事業規模の大きさ
からして自然再生事業の失敗が回復不能の壊滅的自然破壊を大台ヶ原にもたらすこ
とは必定である。
                       2004年1月7日  田村 義彦


  

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