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大台ケ原>解説標識に関する要望書と回答
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会 提供日付  : 2004/01/18 14:23 登録経由地 : 自然環境フォーラム プレスリリース08 #00366 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

解説標識記載内容に関する要望書、回答、回答の見解
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「回答」の見解。
           『 さしあたってデザインだけ。内容は後で。 』

 本会が、本年(2004年)1月5日に提出した「大台ヶ原サイン計画策定に当
って解説標識記載内容の訂正並びに撤去の要望書」についての1月9日付の回答が
届いた。今までにない早い回答は多としたい。しかし、内容は残念ながら標題の通
りである。
  今回のサイン計画の策定は、「市民の要望を95%認めた」と環境省自身がいう
「大台ヶ原周回線歩道整備基本計画」に基づいて行なわれるもので、その検討課題
の一つに「配置・内容の不整合」が上げられている。にもかかわらず、今回は「配
置、デザイン面を主眼として」策定し、記載内容の見直しはその後で順次行なって
行くとの回答である。デザインよりも間違った内容の訂正が先ではないのか。それ
が「歩道整備基本計画」の精神であろう。
 確かに鹿の剥皮と枯死との関係、ミヤコザサの関わり、防鹿柵の評価など、一昨
年来調査と検討が重ねられている難しい問題であることは事実であるが、だからと
いって、恣意的に鹿をトウヒ枯死の犯人に仕立てたり、現在では環境省自身がまず
かったと思っている空中回廊を合理化する解説標識を放置しておいていい訳はない。
その間、その解説標識を読まされる利用者は間違った認識を与えられてしまう。
直ちに撤去して、見直しを急ぐことを再度、要望する。
                  2004年1月10日     大台ヶ原・大峰の自然を守る会

             _________________________________________________
                              
                                                   事  務  連   絡 
                                    平成16年1月9日
大台ヶ原・大峰の自然を守る会
 会 長  田 村 義 彦 様
                            環境省自然保護局 
                                              近畿地区自然保護事務所
     
     大台ヶ原サイン計画策定に当たっての解説標識記載内容の訂正。
     並びに撤去の要望書について(回答)

 日頃は吉野熊野国立公園の管理運営にご理解とご協力をいただきまして誠にあり
がとうございます。
 さて、平成16年1月5日付けでいただきましたご意見等につきまして、下記の
とおり回答いたしますのでご理解の程よろしくお願いいたします。

                記

 大台ケ原のサインにつきましては、平成14年度策定の「大台ヶ原周回線歩道整
備基本計画」で、現況標識について、配置・内容の不整合、老朽化及び意匠の不統
一等の問題点を記載し、これを受けて、今年度、大台ケ原地区サイン計画を定める
こととしたところです。
 今回の計画は、国立公園にふさわしいサインのあり方を、配置、デザイン面を主
眼として検討することとしています。今回の計画策定後、それに沿って大台ケ原の
サインの再整備を順次行っていく考えですが、記載内容については、その際に必要
な見直しを行う予定です。
 記載内容の見直しの検討に当たっては、大台ケ原自然再生検討会との整合性を図
るとともに、今回いただいたご意見を十分に参考とさせていただきたいと思います。

       __________________________________________________
                         
                                              2004年 1月 5日
環境省自然環境局
環境省近畿地区自然保護事務所
所長 亀澤 玲治様
                                       大台ヶ原・大峰の自然を守る会
                                                 会長  田村 義彦
           大台ヶ原サイン計画策定に当って
                       解説標識記載内容の訂正並びに撤去の要望書

 今般、貴事務所において「大台ヶ原地区サイン計画」を策定されることを、本会は
時宜を得たものと考え、基本的に賛同します。
本会は従来、解説標識の記載内容について意見を出してきましたが(『自然保護ニュ
ース』No.50)、サイン懇話会では記載内容については検討しないとのことですので、
ここに改めて具体例について理由を付し、訂正、撤去を要望します。

 現在、自然再生計画の中で、マイカー規制による利用者の質の改善が大きなテー
マとして取り上げられている時だけに、解説標識の記載内容は極めて重要な意味を
持ちます。現在の標識は設置後時を経て記載内容の訂正が必要になってきましたが、
誤った内容のまま存続することは国民を正しく啓発する国の責任からして由々しき
問題であります。又仮に、デザインを統一しただけで記載内容の訂正のないまま再
び設置されてしまえば当分は訂正できないと予想されますので、この際充分ご検討
戴いて後顧の憂いがない処置を強く要望します。

(1)『 信じられる? ここがこんな森だったなんて・・・。
  ここの昔の写真です。この4年前の伊勢湾台風で木がたくさん倒れて、かってよ
り少し林が明るくなりましたが、地面がまだコケにおおわれているのがわかります。
 明るくなった林の地面をやがてササがおおうようになると、ササを主食とするシ
カが増え、増えたシカは木の皮をはがして枯らしてしまうようになりました。
 あなたの目の前の光景、今はどうなっていますか? 』

(2)『 昔は、緑の山だった・・・。
 この10年前の伊勢湾台風で木がたくさん倒れて、それまでうっそうとしていた林
がパッチ状になくなっているのがわかります。
 昔は暗い林の地面をやがてササがおおっていたのですが、明るくなった林の地面
をやがてササがおおうようになると、ササを主食とするシカが増え、増えたシカが
木の皮をはがして枯らしてしまうことになりました。
 あなたの目の前の景色、今はどうなっていますか? 』

 『大台ヶ原ニホンジカ保護管理計画(2003年11月)』には1982年から2000年にかけ
て、17.3〜30.9頭/km^2の範囲で生息密度が「変動」している、と書かれてあって、
従来の「増加」の文字は消えました。1970年代に山上台地に追い上げられた鹿は密
度を増やしたでしょうが、それ以後少なくともここ10年位は平衡状態にあることを
環境省は認めています。今となれば「鹿が増えた」と乱暴にいうことは科学的では
ありません。

 更に、シカの剥皮がトウヒ枯死の原因であると断定することも科学的ではありま
せん。全周剥皮の場合は枯れる可能性が高いとしても、部分剥皮の場合は元気に生
育している樹木がいくらでも見られます。
 ごく最近の2003年10月10日の大台ヶ原ニホンジカ保護管理検討会で、委員である
芝田叡弌名古屋大学院教授は「鹿は昔からトウヒをかじっていた。それでも枯れな
い木がたくさんある。山火事で半分焼けても生き残っている。剥皮された木からで
も種は採れる。名古屋大学の研究で、マーキングしたトウヒ 160本が10年間で30本
枯れた。その内10数本が全周剥皮である。大学のデータも生かしてほしい。」と発
言しました。
 仮に部分剥皮を20本とすると枯死率は12.5%になります。「大台ヶ原ニホンジカ
保護管理計画2003年11月」にある26.7%の数字は、現在では自然再生検討委員の共
通認識となっている「従来のデータに対する信頼性の欠如」からして、恣意的な高
い数字としか受け取れません。

 鹿がトウヒ林枯死の原因であることも、鹿を殺せばトウヒ林が甦ることも、共に
科学的に立証されていないにも拘わらず、環境省は従来、枯死の原因を鹿の剥皮に
あるとして冤罪をきせて断罪し、鹿を殺せば森林が甦るかの印象を利用者に与えて
来ました。この誤った認識をまず環境省自身が払拭し、山上台地の鹿の密度が上が
った原因は人間にあることを明記すべきでしょう。
  
 トウヒ枯死の原因は二度の台風による風倒木、林床の乾燥・ササの侵入、ドライ
ブウエーの開通による自動車の排気ガス、観光客の林内への踏み込み、酸性降下物、
地球温暖化などの複合的要因の結果であることは環境省の多くの文書にすでに記載
されています。利用者に対する正しい情報提供のために、この複合的要因をこそ書
くべきであります。特に、地球温暖化のなかで、「トウヒの南限」の北上は必然で
あり、それを述べることも重要でありましょう。ドイツのリューネブルクハイデ自
然公園のヒースの謂いに習い、人間の過去の行いを反省する我が国唯一の国立自然
公園に特徴付けることは意義深いことではないでしょうか。

(3)『 大台ヶ原があぶない!! いま、大台ヶ原の木々が、増え過ぎた野生ジ
カにかわを剥がされて、どんどん枯れています。剥がされないように柵で囲ったり、
金網で巻いたりしていますが、全部の森林を守るのはむりなもとです。このままで
は、本当に近い将来大台ヶ原の森林がなくなって、シカを含めたいろいろな動物が
住めなくなってしまいます。どうしたらいいと思いますか? 』

 確かな科学的根拠もなしに徒に利用者の不安感をあふる煽動的言辞を弄すること
は、利用者を正しく啓発する責任のある環境省の姿勢としては品位を欠き、恥ずべ
きことであります。仮にトウヒが消えたとしても、それは森林の変化であり、森林
全体の消失を意味するものではありません。国の姿勢としてはあるまじき、脅しと
もとれるこの解説標識は撤去すべきです。

(4)『 シカのごちそう 木の幹がはがれているのをみませんでしたか。それは
私たちシカが角でひっかいたり、歯でこすったりして食べたあとです。でも、主食
はミタコザサです。このあたりのササはせが低くなっています。それは、私たちが
食べ続けているから大きくなれないのです。ササの葉を良くみると食べたあとが残
っていますよ。

 何が言いたいのか意味不明の解説標識です。ササが鹿の主食であることを伝えた
いのであれば、樹木の剥皮写真は必要ありません。写真の下に「どうして幹がはが
れているのかな?」と質問しても、その原因が何一つ調査、研究されていないので
すから、答えることができる者は誰もいません。正しい解答を用意しないままの質
問は、誤った回答へ誘導する危険があります。
 また、「(鹿が)食べ続けているから(ササが)大きくなれないのです。」と、
鹿がササを食み、ササの背が低いのがあたかも悪いことであるかの如き印象を与え
ていますがそれは間違っています。実生の発芽、生育に貢献している側面もありま
す。
 剥皮写真を大きく掲げて鹿を悪者に仕立てるだけで、利用者に現状理解のための
正確な科学的情報を提供しない解説版は撤去するか、書き直すべきです。
 因みに書き直しの一例。 『シカはなぜ樹皮をかじるのでしょうか?  シカの
胃の内容物を調べても、およそ98%が主食のミヤコザサで、樹皮は2%くらいです。
主食のササが食べきれないくらいたくさん生育していて、更に生息域を広げている
のに、何故シカが好きでもない樹皮をたべるのか・・・? 地元では古来、薬とし
て食べるという説がありますが、まだ確かなことは何もわかっていませ
ん。  』

(5)『 なぜ木道なの?Q せっかく自然の山々や森を歩きに来たのに、どうし
て木道を歩くようにしてあるのですか。A ここは貴重な自然が多く残された吉野
熊野国立公園の特別保護地区です。近年ここを訪れる人達の踏圧(人が植生や地面
を踏む圧力)が原因となり、貴重な植生が危機にさらされています。
 植生を保全するため、木道を設置し、歩行のルートを固定することとしました。
歩道以外を歩かないようにしましょう。 』

 木道設置の合理化のための解説にしては、「せっかく自然の山々や森を歩きに来
た」利用者に対して、説得力に欠ける言い訳に過ぎません。
 人間の踏圧が道を作り、そこを雨水が流れて植生を破壊したことになっています
が、それは恣意的実験のこじつけの結論であって、大台ヶ原では年間4000ミリを越
える豪雨の排水路を人間が登山道として利用してきました。登山道が川であること
は、先般の周回線歩道整備基本計画のなかで貴事務所が認めているところであり、
雨水の排水路を自然破壊だと規定するのは自然の本質的否定につながります。  
 また、その歩道が植生破壊を起こしているというのは全くの牽強付会であります。
今は木道で上を塞がれてしまった元の登山道で、植生破壊を起こしていたところは
一ヶ所もありません。事実に反する虚構の空論でもあります。

 「人間が地面を歩いて植生破壊を起こすのだから、地面を歩かさないように地面
から持ち上げた木道(空中回廊)にルートを固定すればよい」という理屈は、山岳
自然公園の正しい利用のあり方を放棄した恐るべき発想です。言ってしまえば木道
設置は観光客が歩き易いようにしただけで、環境省も当初それを認めておきながら、
後になって批判封じのためにもっともらしい言い訳の標識を建てただけです。無制
限に利用者を入れておいてその利用者を自然破壊者呼ばわりして、木道設置を合理
化しようとするのは卑怯です。

 登山道を歩いて五感で自然を感じ取る崇高な意義を否定するこのこじつけが、い
ま全国各地の自然公園を席捲して、「デッキ羅列現象」を起こしていることは由々
しき事態です。昨年の「大台ヶ原周回線歩道整備基本方針」に示された貴事務所の
英断を、国立自然公園歩道整備の先駆的方針として全国に発信して戴きたいと願い
ますし、解説標識も其の方針に沿ったものであるべきは当然でありましょう。

 環境省にとって空中回廊の設置は、今となれば後悔の種だと思います。木道の撤
去の前に、まずこの恥ずべき標識の撤去を要望します。           
                                   以上


  

[article_prweb]oodai.htm