大台ケ原>第2回大台ヶ原自然再生検討会
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会
提供日付 : 2004/02/14 16:01
登録経由地 : 自然環境フォーラム プレスリリース08 #00445
注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した
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また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ
のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている
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『 保全再生手法(案)に仮説がない 』
<平成15年度第2回大台ヶ原自然再生検討会>
平成16年1月16日に奈良に於いて標題の検討会が開催された。森林生態系部会
と利用対策部会の2年間にわたる調査検討の結果を持ち寄って、自然再生計画を
取りまとめる大詰めの会議であった。
議事【1】平成15年度調査結果の概要について
(1)森林生態系調査について・・・森林生態系部会
1. 植生タイプ別再生ポテンシャル調査
2. 野生動物調査の目的・視点
3. 利用による自然環境への影響調査
4. これまでの対策等の評価分析
(レポート「失敗に終わり、その経費すら不明の大台ヶ原トウヒ林保全
対策事業」参照)
(2)新しい利用のあり方について・・・利用対策部会
1. 大台ヶ原の特性把握と他地域の事例
2. 歩行者行動分析調査結果
3. 利用者アンケート調査結果
4. 入込車両数等調査結果
以上の各調査について環境省から概略報告があり、重大な質問もなく、本題に
入った。
議事【2】今後の進めかたについて
(1)森林生態系の保全再生手法について
「実証的に取り組むべき植生タイプ別の保全再生手法(案)」
(レポート「植生タイプ別保全再生手法」参照)
「従来のように苗木を移植するのでは駄目だ。ワーキンググループを作り、現地
調査をして、発芽環境の改善を図る手法を考えた。播種は手法ではなく擬似的に
行なう。発芽床をどう作るかが課題である。」という環境省・部会の説明を受け
て、委員から「自然再生事業は仮説をたててそれを検証していくのであるが、こ
の案には仮説がない。調査の目的を明らかにして、仮説を言葉で表せ」と再生計
画の基本に関わる厳しい批判が出た。森林生態系部会は「データ解析がまだ出来
ていない。頭にある程度あるが、まだはっきりしない。」と答えたが正直なとこ
ろであろう。
保全再生手法が、失敗に終った苗木移植を捨てて発芽環境の改善にしぼり、種
子の播種もあくまでも擬似的と断わって「自然の復元力に委ねる」としているこ
とは評価したい。しかし、再生計画の基本的な理念、仮説について検討会で論議
されたのを聞かないし、書かれたものもない。この「再生手法」もあくまでも「
発芽環境の改善」にとどまり、その後の森林更新手法、見通しには全く触れてい
ない。いくら順応的手法とはいえ、それを不明確なままで再生計画を発車させて
いいのだろうか。一面それが慎重な態度だとも言えるが、他面、見切り発車とも
言えるだろうか。
委員からは「実生調査区で高さ20cm以下を調べる、とあるが樹種も、それぞれ
生活史の意味も違う。統計解析をせよ。」という批判が出た。
座長から「落ちが多い。方法について疑問が多い。言い出したらきりがない。
原稿を事前に委員に見せて訂正せよ。」と厳しい指摘があり、決定は次回最終の
会議(3月末)に持ち越された。
この問題に関連して、座長の許可を得て、傍聴席から質問した。
「資料で明らかにされたように、1986年以来17年間継続されてきたトウヒ林
(森林)保全対策事業は完全に失敗した。昨年でこの事業は終わり、費用対効果
の低さが明らかになってきた。それをなぜ、自然再生計画でも再びトウヒなのか。
自然再生は過去の姿の復元ではない。1000年前、大台ヶ原はミズナラ、ヒノキの
山であったという報告もある。大台ヶ原を遷移に任せて何故いけないのか。なぜ、
トウヒでなければならないのか。」 森林生態系部会座長と環境省から口を揃え
て、「再生を目指しているのはトウヒだけではない。森林の再生を目指している。
」という説明があった。この説明は以前に何度か聞いている。それなら何故、ト
ウヒではなくウラジロモミなどの種を播かないのか、という素朴な疑問がわいて
くる。環境省のパンフレット『忘れてきた未来』にも、トウヒ群落の変遷図を載
せて「トウヒ群落の分布域が減少しています」と「トウヒ」を強調している。こ
の姿勢は昔も今も変わらない。
勿論、この説明で納得したわけではないが、現時点では今後の経緯を注意深く
見守って、この言葉の真実を確かめていくしかない。
それにしても、霞ヶ関官僚に、トウヒの呪縛から解放されない何があるのか・・。
(2)新しい利用のあり方について
委員から、「環境省としてようやく表に出せることになった」という発言があ
ったが、正にその通りで、感慨無量である。1978年にマイカー規制を提案して以
来26年間、環境省と地元に門前払いを受けて来た身には信じ難いことである。
「マイカー規制について環境影響評価をせよ」「メニュー案に調査研究部門と
して、学際的な共同利用施設の設置を加えるべきである」という提案もあったが、
メニュー案巻末のフローチャートに長期展望の項目として記載されている。
この「メニュー案」は昨年12月6日の利用対策部会(レポート「環境省 地元
の合意抜きに駐車場候補地公表・・」参照)で報告、検討された上で全面的に書
き直されたものであるが、見事な仕上りに驚いた。私は先の案が余りにも杜撰で、
行政手法の杜撰さも加えて環境省のやる気の無さを感じて絶望し、激しく批判し
た。レポートには「砂上の楼閣」でないか、とすら書いたが、その批判や各検討
委員の意見を正確に反映して、かつ、新たにカテコライズされた改定案(マイカ
ー規制と利用調整地区が基本的方向にグレードアップ)を見て、環境省の積極的
姿勢を強く感じた。
この改訂案は次の利用対策部会で再度検討されるものであるが、今回、公開の
検討会で公表されたものであるので、ここに項目を列記する。見事に整理された
項目から環境省のやる気が見えてくる。
このメニュー案は、2月8日の第2回ワークショップ(懇談会)で環境省から
住民、利用者に説明され、意見を求める叩き台になるが、充分その大役を果たす
であろう。なぜなら、このメニュー案には、森林生態系の再生計画で問題になっ
た仮説と展望がしっかりと丁寧に書かれてあるからだ。
刮目に値する『大台ヶ原における新しい利用のあり方メニュー(案)』
1.目指すべき「新しい利用のあり方」
2.計画の進め方 進め方のイメージ
3.大台ヶ原における新しい利用のあり方メニュー(案)の検討
(1) マイカー規制(パーク&シャトルバスライド)
(2) より良好な森林地域の保全の強化 (註 利用調整地区)
(3) 総合的な利用メニューの充実
1)登山道・自然観察路の充実
2)キャンプ指定地の設置
3)山上駐車場の周辺の活用
4)自然解説・自然体験プログラムの充実
5)情報提供・情報発信の充実
6)ビジターセンター機能の充実
「新しいワイズユースの山へ」短期・中期・長期展望のフローチャート
今後の展開
環境省はやはり、一応本年度末に自然再生計画を出したいとしている。そのた
めに、2月中旬から3月初めにかけて、ニホンジカ保護管理検討会、森林生態系部
会、利用対策部会、ワークショップを連続開催した上で、3月下旬に自然再生検
討会を再度開いて、その席で計画を決める予定であるようだ。
2001年にニホンジカ保護管理計画が見切り発車された苦い体験があるだけに、
この度はそうであってもらいたくない想いでいたが、やはり霞ヶ関の思惑があっ
て、再生計画のモデル地区に指定された大台ヶ原のタイムリミットが迫ってきた
感じを強く受ける。森林生態系部会の調査の多くがまだ中間報告であり、利用対
策部会でもメニュー案は急遽できたが肝腎の合意形成はいつになるかわからない
段階であり、見切り発車の感は否めない。
いよいよ大詰が迫ってきた。
2004年1月17日 田村 義彦
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