大台ケ原>第3回森林生態系部会
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会
提供日付 : 2004/03/27 09:28
登録経由地 : 自然環境フォーラム プレスリリース08 #00572
注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した
情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向
けにのみ提供された情報が含まれています。
また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ
のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている
場合があります。
「大台ヶ原自然再生推進計画(案)」提示
<平成15年度 第3回 大台ヶ原自然再生検討会森林生態系部会>
2004年3月4日、奈良に於いて上記の検討会が開かれ、森林生態系についての平成
15年度調査の分析について事務局から報告があり検討委員から質問・意見が出され
た。資料の量が多く、時間の大半が報告に費やされた。
1.平成15年度の分析及び大台ヶ原の現状について
1)植生タイプ別再生ポテンシャル調査
事務局は「ポテンシャルの[有][無]を裏付ける数字はない、定量化の必要がある。
[低][中]について対策が必要である」と説明した。検討委員から異論は出なかった。
「ポテンシャル」の学問的定義は知らないが、森林のもっているエネルギー、潜在
能力とでも理解すれば大きな間違いはないと思うが、印象として、「衰退した」と
いわれるわりには大台ヶ原の森林のポテンシャルが高いのに驚いた。これなら、人
為を加えて再生事業をしなくても遷移に任せておけばよいのではないかと感じた。
具体的には理解できないことがいくつかある。例えば、西大台のブナ林について
VIA/VIBが共に[高]になっている。稚樹はないが母樹があって種子供給があるか
ら[高]なのであろうか。だとすれば再生の心配はいらないのであろうか。最近稚
樹を鹿が食べたと喧伝されるが、思いかえせば、西大台でブナの稚樹を見かけなく
なったのは15年程前のことで最近のことではない。
また、正木峠から正木ヶ原にかけての植生タイプIは[低]になっている。トウ
ヒ林の台風跡地はいま見事なミヤコザサの草原になっていて別に砂漠化しているわ
けではない。森林再生の視点からすれば[低]かもしれないが、台風で物理的にトウ
ヒが倒されただけで、森林の潜在能力が落ちた(低い)と何故いえるのだろうか。
今の状態で遷移に任せては何故いけないのであろうか。どうやら、官僚・学者は樹
木が生えていないとお気に召さないようだが、正木ヶ原や牛石ヶ原の風衝地は江戸
時代にすでに剥げていた記録が古文書に残されている。山は木が生えていなければ
山ではないのか。
いずれにしても、環境省の解説標識に記載されている「本当に近い将来大台ヶ原
の森林はなくなってしまう」というのは「本当でない」ことが明らかになったのは
確かだ。
2)野生動物に関する調査
植生タイプ別に、地上性小型哺乳類、鳥類、昆虫類等にについて状況把握調査が
行なわれた。資料では「大台ヶ原ではこれまで様々な動物の調査が行なわれてきた
が、植生との関わり合い等から、群集を継続的に観察してきたデータはほとんどな
い。」として現状把握を行なう基礎的情報収集としての調査を今後継続することと
した。比較に耐え得る過去のデータがないことと、本調査が晩秋の1回限りであった
ことから、野生動物の増減について確かなことを言うことはできなかった。
委員からは、「森林植生の回復がどのような姿をあらわすかわかっていない。森
林交代期にある。ダイナミックスでとらえるべきだ。そのきっかけになったのが人
為的影響であるから、それを取り除くべきだ」という意見があった。
3)利用による自然環境への影響調査
ドライブウエーと園路の5地点で植生、土壌動物、鳥類への影響調査が行なわれた
が、肝腎の人間が入ることによる影響が掴めていない、という批判が委員からでた。
2.これまでの対策等の評価分析
従来設置した防鹿柵を、平成3年設置柵(コケ林床)・平成8年設置柵(ミヤコザ
サ林床)・平成13年設置柵(ミヤコザサ林床)について「柵内外における下層植生
の高さの種別最高値と種数の関係」を調査した。結果は「コケ林床では柵の設置に
より30cm以上の種がみられるが、ミヤコザサ林床では、柵を設置しても30cm以上の
種はほとんどみられない。ミヤコザサ林床では、防鹿柵設置によって母樹が保護さ
れるものの、防鹿柵を設置しただけではミヤコザサ以外の回復は困難といえる。」
という皮肉なものであった。実生・稚樹の生育には役に立っていなかった。従来放
置してきた柵内のミヤコザサをどうするかが今後の問題であると事務局は報告した。
委員からは、ササを刈り過ぎるとかえって裸地化を進める危険がある、と指摘され
た。
ところが、これ以外に重大な問題がある。2001年に策定された「ニホンジカ保護
管理計画」には2006年までに85haの防鹿柵を設置することになっているが、この計
画が(後で触れるが)「自然再生推進計画」に移行包含されることになり、その再
生推進計画によって来年度7ha設置されることになっている。検討委員から「森林
生態系部会で防鹿柵のありかたを論議している時に、すでに来年度7haの設置を決
めていたのか」との発言があったが論議にはならなかった。部会で今まで防鹿柵の
あり方が検討され、更に効果の評価、今後の問題が提起されたときに、その論議を
避けて、既定方針だからと設置を決めるのはおかしい。この部会で更に論議を深め、
計画は見直すべきであろう。ちなみに、日光では林野庁がギャップを見つけて、そ
の大きさに合わせて小さい防鹿柵を張っている。正に理にかなっている。
ラス巻きをした全立木22174本について生存・枯死の判別をした。トウヒの枯死
率は5.1%であるからモニター木の枯死率12.26%に比べて「枯死を防げたといえる」
と報告された。傍聴席から、ラスが樹皮に食い込んで生長を阻害するという発言が
あった。
3.来年度調査について
1)自然再生推進計画策定のための来年度調査について
1.再生ポテンシャル調査(基礎データ)
2.野生動物に関する調査(基礎データ)
3.利用による自然環境への影響調査
4.過去の事業対策の評価(追加)・・既設木道の効果確認調査
5.酸性降下物の調査(モニタリング調査項目として検討する)
2)大台ヶ原ニホンジカ保護管理検討会:植生調査についての提案
4.自然再生推進計画(案)について
来る3月11日の利用対策部会で検討する利用対策計画を除く自然再生推進計画が
提示された。
自然再生検討会とは別にニホンジカに特化して「大台ヶ原ニホンジカ保護管理検
討会」で検討されてきた第九次特定鳥獣保護事業計画に基づく「大台ヶ原ニホンジ
カ保護管理計画」がそのまま「大台ヶ原自然再生推進計画(案)」に移行包含され
ていたのには驚いた。委員から調査の整合性の質問はでたが、法的整合性について
は議論にならなかった。法的、組織的、財政的整合性についての説明はなかった。
この計画案について、座長はあえて論議はしないと委員の意見を求めなかった。
環境省の説明によれば、自然再生推進計画の策定は、本年度末の予定を来年度
(2004年)9月に延ばし、検討会の体制は今のままで続け、4月初旬にワーキンググ
ループ・全委員の現地視察、8月にワーキンググループ、部会開催、のスケジュー
ルでいきたいとのことであった。
2004年3月5日 田村 義彦
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