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大台ケ原>第3回利用対策部会
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会 提供日付  : 2004/03/27 09:31 登録経由地 : 自然環境フォーラム プレスリリース08 #00573 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

     自然再生推進法でマイカー規制を行う難しさ 
  
      <平成15年度 第3回大台ヶ原自然再生検討会 利用対策部会>

 2004年3月11日、奈良に於いて表記の検討会が開催された。

(1)「大台ヶ原における自然再生と新しい利用のあり方に関する懇談会」報告
 去る2004年2月8日に上北山村に於いて、地元住民、登山利用者、関係機関など
60人が集まって行なわれたワークショップの報告がされた。
◇「マイカー規制による利用適正化」については、「賛成」あるいは「やむをえな
い」という意見が多数を占めた。しかし、今後検討すべき項目が多く挙げられた。
◇「より良好な森林地域の保全の強化」については、西大台について何等かの対策
が必要であるが、利用調整地区の設定には十分なデータの蓄積が必要であるとの指
摘があった。
◇「総合的な利用メニューの充実については、多様な意見が出されたが、ビジター
センターの充実については、すぐに取り組むべきとの指摘があった。
◇今後の地元と大台ヶ原の関わり方については、多くの提案があった。また、大台
ヶ原の自然再生は長い目で考えるべきであると共に、これからは地元が参加してい
くべきであるということも再確認された。
 委員から、自然再生は地元のアイデンティテイィと誇りを高めるための素晴らし
い事業であることを地元にわかってもらうことだ、との発言があった。9月までに
もう一度開催される予定である。

(2)来年度調査計画について 
 〔1〕大台ヶ原自然再生推進計画策定のための補足調査 
  目的:新しいメニューに係る基礎的条件の把握 
 〔2〕推進計画の実施に向けた調査  
   1)マイカー規制に向けた社会実験の実施計画検討調査 
    目的:社会実験実施のための条件調査  
   2)利用調整地区設定に向けた検討調査   
    目的:基礎的データの把握 
 〔3〕総合的な利用メニュー検討調査 
    目的:ソフト面の充実に向けた条件把握
 各事項の調査項目は多岐にわたるため割愛したが、本年9月の自然再生計画策定
を目指して調査する。

(3)大台ヶ原自然再生推進計画(案)について
 昨年12月6日の第2回利用対策部会に提案された「大台ヶ原における新しい利用の
あり方メニュー(案)を全面的に書き直された「修正案」が議事日程の都合で利用
対策部会より先に本年2月19日の自然再生検討会に提案されたが、それを自然再生
推進計画のために更に再構成されたのがこの「推進計画(案)」である。
 「修正案」は、すでに、レポート「保全再生手法(案)に仮説がない」で「刮目
に値する」と評価したように具体的でわかり易いものであったが、この「推進計画
案」は、所謂定番の官庁用語と様式に統一されて抽象的になり、具体的イメージが
浮かばないものに改悪されていた。官庁の文書としてはこれが模範解答であろうが、
自然再生計画は官庁の文書になじまない人々の理解が不可欠であり、そのためには
わかり易い「修正案」を可能な限り取り入れて書き直すことを要望した。
 また、従来の「新しい利用のありかたメニュー案」の呼称がここにきて突然「利
用誘導推進計画」に変わっていて驚いた。この文言は利用対策部会の論議のなかで
一度も使用されたことがない。環境省の自然公園・自然再生関係の資料をざっと通
覧しても見当たらない。多分、「基本計画」のなかの「質の改善に誘導」と「一体
的・総合的な取り組みを推進する」から「誘導推進」がつくられたのであろうが、
主語が「質」から「利用」にかわったことで、利用の量的増加を誘導推進する、と
誤解を招く可能性があり、再考を求めた。例えば「利用改善(推進)計画」「適正
利用(推進)計画」などを提案した。
 環境省からは、「この計画案はあくまでも叩き台で、わかりやすいものに改善し
ていきたい」との回答があった。
 委員からは「期間設定」に就いて多くの意見が出たが、座長から、「マイカー規
制、利用調整地区などの連絡協議会を1年間で立ち上げてほしい」と強い要望が出
された。
◆ 上北山村住民の訴え
 上北山村代表者からは「大台ヶ原の現実を村民が知らない。ワークショップで認
識を新たにした村民が多い。地元と協議して進めてほしい。大台ヶ原への依存度が
今後高まるであろう。」「村全体としてのコンセンサスがもてるところまで来た。
利用制限の根本目的は自然再生であるが、計画の三本柱を同時進行して、地元民が
大台ヶ原で生活できるようにしてほしい」という発言があった。また重ねて、傍聴
席から「連絡協議会に村民も参加したい」という発言があった。上北山村からは役
場の職員、議員、村民など多くの出席者があり、村民の期待と不安がうかがえた。
◆ 奈良県の発言
 ここで奈良県から極めて重要な発言があった。「県の大台ヶ原における博物展示
事業や地区の管理体制は約20年前にできた。以来県南部の貴重な自然と重要な観光
資源という位置付けの中で熱意をもって関わってきた。ここ数年、環境省は自然再
生計画を推し進めてきたが、国土の自然再生という大きな国家事業の下、現体制は
再検討の時期にあるのかもしれない。現在の県の施策の優先順位はそこにはない。
大台ケ原の自然再生について環境省と同じ熱意で一緒にやっていこうというところ
まで来ていない。現状では、協議会の設立すら「協議会イコール実施主体」という
懸念から県や村は設立・参画に賛成できていない。県としてこの自然再生のプロジ
ェクトにどんどん予算を確保することも非常に困難な状況である。環境省の今回の
計画(案)について、せめて短期の計画については実施主体の明確な提案がほしい。
たとえば利用調整地区について誰がどのような方法で行うか示してもらわないと実
現可能な計画か否かを判断できない。計画全体は勿論大台ケ原のためになることだ
と理解できるので協力できる範囲での協力は惜しまないつもりである。また、今は
少しかげりが感じられるが、長年大台ケ原で宿泊サービスの提供に尽力してきた大
台荘の今後の位置付けがこの案に明記されていないのは疑問である。」
 誠に率直で的確な発言である。予算についての意見は昨年11月の行政連絡会でも
各行政機関から出たと聞いている。当然の意見であろう。

 ここでマイカー規制のいきさつを振り返ってみたい。まず、マイカー規制具体化
の扉が開いたのは、2001年11月の大台ヶ原ニホンジカ保護管理計画の付帯提言に、
「大台ヶ原森林生態系保全対策検討会」の中に「利用対策部会」を新設して、マイ
カー規制・立入等制限の導入を論議すると決まったところからスタートした。
 ところが、その頃環境省は自然再生推進法案作成を進めていた。その成立を見越
して「大台ヶ原森林生態系保全対策検討会」は翌年早々「自然再生検討会」と改称
された。しかし、法案成立が遅れたため12月になって、ようやく初部会が開催され
た。そして、検討会発足後の最初の1年間は、環境省は全ての検討会に於いて、霞
ヶ関から臨席した官僚が自然再生法への移行をかたくなに否認し続けたが、昨年夏
臨席が終り、自然再生法への移行が既成事実化して行った。言い換えれば、当初は
独自の事業として企画された計画が、その後自然再生推進法に移行包含されたので
ある。尤も、正式策定は9月の予定ではあるが。
 一方、奈良県の特定計画に基づいて策定されたニホンジカ保護管理計画もここに
至って自然再生推進計画に移行包含された。法的整合性はついているのであろうが、
予算は従来通り環境省が出すから問題がないにしても、自然再生推進法で鹿の捕殺
をするのは前代未聞であろう。
◆ 予算は環境省で
 さて本題に戻って、奈良県から強い発言があった予算である。元来、自然再生推
進法は直接的な財政措置を含まないゆるやかな法律である。環境省は本年度に全国
の国立公園の自然再生事業費として12億1400万円の予算を計上しているが、これ
が関係自治体に補助金などの形で出ないとすれば県をはじめ関係自治体の負担は深
刻であろう。奈良県に予算が無ければ上北山村には更に無い。となれば、環境省が
出す以外にマイカー規制を実現する道はない。環境省が自ら土地を所有する唯一の
国立公園である。そこで自然再生推進法に基づいてマイカー規制を行う初めての事
例である。更に、改正自然公園法に基づいて我が国最初の利用調整地区を設定する
のである。予算についても環境省の初めての大英断を願いたい。
 一方、組織的に考えても、従来各地で先行されてきた「連絡協議会」と、自然再
生推進法のいう「自然再生協議会」とは性格が全く違う。従来の連絡協議会は、例
えば上高地の場合は39人、乗鞍の場合は岐阜県で30人・オブザーバー12人、長野
県で27人で行政機関中心で個人は入らない。一方、釧路湿原自然再生協議会は個人、
団体105人で構成されている。大台ヶ原の場合、自然再生推進法でマイカー規制を
行うとすれば、協議会の構成はどうなるのであろうか。自然再生協議会であれば村
民は参加できるが、従来の行政機関中心の連絡協議会には村民は参加できないであ
ろう。

 従来、各国立公園で先行実施されてきたマイカー規制はそれだけでも大変であっ
たにも拘わらず、今回大台ヶ原では3本柱6項目、具体的には8項目の大事業を並
行して実行しようというのである。未だかつて例の無い壮大な事業計画である。比
較される釧路やサロベツなどの自然再生計画は規模に於いては大きいが、質的な意
味からすれば大台ヶ原がはるかに優る。
◆ 環境省の答え
 自然再生推進法の生みの親である環境省近畿自然保護事務所亀澤所長は「計画案
は環境省がやりたいことだけを書いた。勿論環境省だけではできない。いままでの
計画とは全く違う。環境省が一石を投じた決意表明である。実際出来るかどうかは
わからない。県・村の分担を具体的に書き込みたい。この案はあくまでも叩き台で、
九月までの半年間、もっと叩いてより良いものにしていきたい。」と率直に答えた。

 明確に時代は変容し、新しい風が吹き始めた。今まで国、県任せで来た上北山村
住民も村の将来を展望して、その中で大台ヶ原の問題を我が事と考えるようになっ
た。今回の諸事業の全ては、地元奈良県と上北山村の熱意抜きには何一つできない。
奈良県・上北山村の積極的参加を切望するとともに、環境省の主体的努力を改めて
切望したい。
                      2004年3月12日   田村 義彦


  

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