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大台ケ原>周回線歩道整備の評価と要望
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会 提供日付  : 2004/10/04 14:10 登録経由地 : prweb情報受付 01 #00521 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

                                  2004年9月29日
環境大臣
 小池 百合子様
                           大台ヶ原・大峰の自然を守る会
                           会長 田村 義彦・常任委員会
                          奈良市紀寺地蔵町1001−1谷幸三方

  吉野熊野国立公園大台ヶ原地区に於いて今春実施された周回線歩道整備事業について、
 本会常任委員会は現地調査の結果、下記の評価と要望をまとめた。

                    記

        大台ヶ原周回線歩道整備についての評価と要望

 1969年に創立した本会は1994年4月に活動を休止し、1999年9月に鹿の大量殺戮計画に抗議
して活動を再開した。その間の1998年に環境庁が策定した大台ヶ原整備5ヵ年計画によって、
日出ヶ岳〜正木峠の木道、木製梯子、展望デッキなどの一期工事を終り、二期工事の正木峠
〜正木ヶ原の木道“空中回廊”の設置工事が行われていた。
 遅きに失してはいたが、時の環境庁長官に工事中止、木道の撤去を求める要望書を提出し
た。あまりの異様な木道に、日本山岳会、自然保護団体、各種メディアから全国的な批判が
起きた。時の自然保護局長は「あれはまずかった」と言い、担当官は「反省しなければいけ
ない」と言った。
 環境省はすでに設計図面を作成していた周回線歩道整備を2001年は一旦中止して見直すこ
とにした。2002年9月、奈良県を督励して初めての現地説明会を開き、併せて利用者に対す
るアンケート調査・利用動態調査などを行い、その上で改めて策定した基本計画の説明会が
2003年2月に開かれた。しかし、その内容は“空中回廊”への反省が見られず、既定方針の
踏襲でしかなかったため本会はじめ住民は拒否した。

 偶然にもその同じ月に、環境省は「山岳地域における歩道のあり方」を明らかにして「推
進すべき利用、整備方針の明確化と合意形成の推進」を謳った。環境省近畿地区自然保護事
務所は9月に再び現地説明会を開催、意見を聴取した上で、「住民の要望を95%認めた」基
本計画を10月に明らかにした。それは、“空中回廊”と木製デッキで覆い尽くされるはずで
あった歩道を「コンクリートを使わない地場材の空積み石階段にする。必要最小限度の整備
に留める。」という、正にコペルニクス的政策転換であり、本会は高く評価した。

 その画期的な基本計画に基づく歩道整備が本年8月に完成した。その様子は本会会長が本
会HPですでに4回にわたってレポートしてきたが、ここに常任委員会として評価と要望を
まとめる。

【評価】
(1)今回の歩道整備を高く評価したい。必要最小限度の整備に留めるという約束が守られ
た。ロープ柵以外は違和感なく歩くことができる。環境省が全国で実施してきたこれまでの
全ての事業のなかでおそらく、歴史上初の肯定的評価(やってよかった)を下せるものであ
る。工事の積算、具体的工法の工夫、現地に適した資材の確保などさまざまな困難をのりこ
えて今回の工事を実現した、環境省、奈良県、上北山村、建設会社、ならびに関係者各位に
感謝申し上げる。とりわけ現地で直接工事にあたられた方々の誠実な努力に心から敬意を表
する。
(2)今回の整備事業は大いに誇り、宣伝すべきものである。環境省や奈良県のホームペー
ジに紹介し、他県や県内の他の整備事業にも是非この成功を生かし広げていただきたい。
(3)歩道整備は、あくまでも過剰利用してきたための対策であり、本来の自然に近づける
意欲こそが求められる。整備だけで解決する問題ではなく、今後の利用のあり方こそが我々
に課せられた最重要課題である。

【今後の課題】
 工事箇所を個別に見ると、気になる点がいくつかあるので指摘しておきたい。 
(1)区間E−2の水路工では数箇所で石が流されている。流されたのはここだけである。
設計書には石の大きさがφ150程度と規定されているが、この大きさでは直線的に急傾斜の
長い斜面を流下する水勢に耐えられなかったのか検証の必要があり、更に、雨水を谷に逃が
す水路の増設など設計の見直しが必要であり、再整備が必要であろう。
(2)区間Dのコンクリート丸太撤去後1段だけ石段が組まれた場所で、水叩石がないため
水流で石段の基礎が掘れている。路面が土壌で段差の低いこの場所では、石段よりもスロー
プが良かったのではないか。何もしないか、現地石敷均し工―Bが適切かと考える。
 段差があればすぐ石段という発想ではなく、区間 Cに見られるようにスロープ化するこ
とも今後の重要な課題であろう。
(3)一方、区間E−1などでは、従来土壌であったところに小石が敷きつめられている。
土壌の流失を防ぐ目的は理解できるが、靴のショックが大きくなったとリピーターからの声
も聞く。二律背反の難しい課題ではあるが、今後経過観察をしながら、可能な限り土壌面の
回復もはかっていただきたい。
(4)区間Aの3箇所の横断側溝は見事に機能しているが全体に数が少ない。土砂が詰って
機能していないのも見受けられる。豪雨大台ヶ原では雨水を歩道から逃がす役割は重要であ
るので順次整備していただきたい。
(5)ロープ柵の木柱の根元から、間詰工用の土砂とセメントを混ぜたものがはみだしてい
るのが目につく。また、僅かではあるが石組みの隙間でも使用されている。使用を必要最低
限度におさえた配慮は理解できるが、セメントを使わないと聞いて、期待が大きかっただけ
に、やはり少し違和感がある。生態系に対して悪影響もあるのでセメントの使用は避けても
らいたかった。強度・耐久性の課題はあるが、出来れば木柱固定には小石を叩き込むだけ、
石垣も充分な裏込め栗石だけにして、大台ヶ原初の壮大な実験的整備に挑戦してもらいたか
った。セメントに助けを借りたのでは伝統工法の名折れであろう。
 しかも、工事の殆どの部分でセメントを使用せず、伝統工法の意地をかけた整備は、1ヶ
月に満たない短期間に4度の台風の襲来を受けたにもかかわらず、合算3000ミリの豪雨に耐
えることを立証しただけに、この僅かなセメント使用で整備全体の印象・評価を下げること
が残念である。将来の大きな検討課題であろう。
(6)ロープ柵工は目立たなければ意味がないが、余りにも圧迫感があり過ぎる。ロープ径、
支柱径、支柱間隔、色彩等について改善が必要と思われる。
 区間E−1ではロープ外に出ることが不可能な地形にさえ設置されているのは理解できな
い。将来的に撤去を検討していただきたい。また、地形によっては、支柱の長さに拘束され
てロープの凹凸が激しくて見苦しく、ロープが地を這っている。支柱の長さを変えることで
ロープの直線性を確保する配慮がほしかった。
 ロープのつなぎ方が設計書に明記されていないために業者によって違っている。つなぎ方
によってはたるんだロープを張りなおすメンテナンスが簡単に出来ず、区間E-2では支柱に
巻きつけているが杜撰な印象を与える。
 以上、工事にあたられたの皆さんが、作業の多くを手仕事でされた大変な努力を十分知り
つつあえてお願いするものである。

【要望】
(1)上記【今後の課題】を充分検討して善処していただきたい。
(2)工事区間によって仕上がりの状態に違いが見られる。工事期間中に国、県による適切
   な指導と確認を行っていただきたい。
(3)今後、年間5000ミリ近い豪雨により歩道が傷むことが当然予想されるが、今回の整備
   を維持、改善するために、きめ細かな補修をしていただきたい。そしてそのデータの
   蓄積によって、我が国古来の伝統工法とヨーロッパを起源とする近自然工法が長所を
   生かして、大台ヶ原にふさわしいよりよい工法をぜひ確立してもらいたい。それが、
   特別保護地区にあえて鍬を入れたものの責務であると考える。
                                       以上

   -----------------------------------------------------------------------

<回答>
                                事 務 連 絡
                                平成16年10月1日
大台ケ原・大峰の自然を守る会
会 長 田村義彦様
                                環境省自然保護局
                             近畿地区自然保護事務所

      大台ケ原周回線歩道整備についての評価と要望について(回答)

 日頃は吉野熊野国立公園の管理運営にご理解とご協力をいただき、また、この度は平成
16年9月29日付けで今年度の大台ケ原周回線歩道整備について高い評価をいただき誠にあ
りがとうございます。
 同日付でいただきましたご要望書につきまして、下記のとおり回答いたしますのでご理
解の程よろしくお願いいたします。
                    記

 大台ケ原周回線歩道につきましては、平成14年度策定の「大台ケ原周回線歩道整備基本
計画」で、優れた自然景観の保全を図るため、必要最小限の整備をするとしたところです。
 今年度の工事は、環境省の施工委任工事として奈良県で施工されておりますが、上記考
え方に基づき、近自然工法の考え方も参考とするとともに、貴会等の皆様のご意見も踏ま
えて設計を進めてまいりました。また、施工にあたりましては奈良県担当者及び業者のご
協力によりまして、設計に沿った工事ができたものと思っています。
 今年度整備した部分については、これまでいただきましたご要望も参考とさせていただ
き、土が露出している部分に現地の倒木を並べたり、必要な個所に新たに水叩石を設置す
るなどの補強に努めるほか、適切な維持管理という面からきめ細かい補修を心掛けること
はもちろん、今後とも大台ケ原の優れた自然景観にふさわしい歩道整備を今回の整備の経
験も活かして順次進めていきたいと思います。

 具体的には下記のとおり考えております。

 1 区間E−2について
    部分的に石が流されている個所については、今後様子を見ながら必要な補修を行
   うとともに、水路の増設及び水きり等を検討します。
 2 区間Dについて
    水叩石が必要な個所については、とりあえず今年度予算の範囲内での補修を検討
   します。
 3 区間E−1について
    路面の洗堀状況等、今後経過観察します。
 4 区間Aについて
    既設横断側溝は、定期的な土砂の除去に努めるとともに、今後の課題として、必
   要な個所については新たな横断側溝の設置を検討します。
 5 ロープ柵の木柱の根元について
    現地の土質等の関係で木柱及び石積の固定が困難な場所に限り、間詰用として、
   現地掘削土砂とセメントを混ぜたラッフルコンクリートを必要最小限の範囲で使用
   しました。
    局所的にやむを得ない処置であったと考えますが、今後はそうした土質等の場所
   への木柱設置を極力避けるなど、コンクリートは可能な限り使用しない方向で対応
   に努めます。
 6 ロープ柵工について
    ロープ径・支柱径・間隔等につきましては、ご意見等も踏まえて具体的な改善方
   策について今後検討します。

 なお、今回の台風21号による豪雨のため、今回の整備個所にも被害が出ているとの一報
を受けており、現在詳細を確認中であることを申し添えます。



  

[article_prweb]oodai.htm