大台ケ原>記録的な豪雨に耐えた伝統工法
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会
提供日付 : 2004/11/06 13:37
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記録的な3400ミリの豪雨に耐えた伝統工法
大台ヶ原において地元に伝わる伝統工法で整備された東大台周回線歩道が、台風
10号、11号の積算雨量1800ミリに耐えたことはすでにレポートした。
しかし、その後更に16号の798ミリ、21号の785ミリと続き、積算合計3404ミリの
豪雨が大台ヶ原を襲った。しかもこの4つの台風は8月と9月の2ヶ月間に集中した。
(この間に18号も雨を降らせたが、気象台の記録に大雨としての記録がないためこ
の積算には入れていないので、実際の雨量は3404ミリより多いだろう。)
特に21号は、報道されたように、尾鷲市の記録的豪雨、海山町の船津川の氾濫、
宮川村の土砂崩れなどの災害をもたらした。記録からみた21号の特徴は、一時間降
水量の激しさである。29日9時に宮川村で139ミリ、尾鷲市で133ミリの集中豪雨が
あって、恐らくそれが船津川を一気に氾濫させ、宮川村の土砂崩れを招いたのであ
ろうが、その時、日出ヶ岳でも1時間に109ミリの集中豪雨があったのである。
現在大杉谷は下から登ることができないので、三重県は日出ヶ岳から下って調査
をしたそうであるが、あの頑丈な堂倉谷吊橋の基礎の鉄骨、支柱、ロープなどが破
壊されて折れ曲がっていたそうである。水面が踏み板より高くなって、水勢で破壊
されたようである。雨の多い大台ヶ原でも稀に見る集中豪雨が降ったのであろう。
ところが、その記録的集中豪雨の中で、伝統工法は見事に耐えていた。
それまでの3ッの台風には耐えても、甚大な被害をもたらした今度の21号にはや
られただろう、と重い気持ちで10月7日に大台ヶ原に上がった。事前にはいつもな
がらに安否の矛盾した情報がとびかっていた。
【工区 A,C】
日出ヶ岳に登る工区Aはびくともしていなかった。
正木ヶ原から尾鷲辻に下る工区Cも、最下部で小さな石が数個散らばっているだけ
で、水止工の石の列は全く崩れずに毅然と立ち並び、石段は折からの雨水を集めて
小さな滝を落としていたが、基礎的な石組みには全くの揺るぎがなかった。私は雨
の中、立ちつくして感動に身をゆだねていた。
ちょうどこの日、環境省近畿自然保護事務所の施設科長が先週の科員の現地調査
に重ねて、自ら現地調査に来られていた。私が中道からE-2に向かったためにお会
いできなかったが、後日、「今後補修を重ねて2年程経てば、ほぼ完全な工法とし
て確立できるのではないか」と感想をもらされた。国立自然公園歩道整備のパイオ
ニヤーワークといえる。
雨水を集めて小さな滝を落とす石段から、想像を絶する3400ミリの豪雨に耐えた
逞しさを想像することはできない。手前の段に水がたまり、近自然工法がいうステ
ップ&プールの理論通りに水勢を弱めている。
工区Cの起点(正木ヶ原)に、職人さんの工夫で、寫眞左奥に大きな石を3ヶ並
べて雨水をさえぎり、手前に倒木を置いて登山道の外に雨水を逃がしている。
登山道の負荷を減らすために見事に機能しているので、環境省はここに横断側溝を
新設するそうである。土が露出している部分に現地の倒木を並べるなど、職人さん
の提案を採用してすぐ工事を指示する環境省の謙虚で素早い対応に感謝したい。今
回の補修工事にも倒木が利用されるそうであるが、税金を浪費しないユニークで柔
軟な発想である。
【工区 E-2】
いままで何度か、この工区で使用されている石の小ささを指摘してきたが、台風
21号の豪雨によって工事の手抜き、杜撰さが露呈した。他の工区に比べてその差が
歴然として来た。この工区を担当する一社が他の工区の作業を範として改修される
ことを願う。
小さな石を並べて1段だけの石段を作ったところが数箇所あったが、殆どが流さ
れていた。この一帯は緩傾斜であるから石段にせずにスロープにした方がよい。
すべての石段に水叩き石が置かれていないために、すでに基礎の土が流されてい
る。手抜き工事と言わざるを得ない。
泥とコンクリートを混ぜた間詰剤の泥が雨水で流されて、コンクリートが目立っ
てきた。他の工区でラッフルコンクリートの使用を見かけないだけに、この工区で
は安易に使われている感じが否めない。横断側溝の周囲でも大量に使われている。
これではカンニングだ。
大きな石で作った石段はかろうじて残ったが、左端の排水溝は崩れ去った。全く
機能しない排水溝は根本的なやり直しが必要であろう。石段の乱雑な並べ方も再チ
エックが必要ではないか。
ここでは左上部の斜面から流れ下って来た雨水が横断側溝左端の大石にさえぎら
れて左下の斜面に流れ下っている。横断側溝は歩道上の排水が目的なので目的外使
用になるが、大石を取り除いて、雨水をこの大きな横断側溝に落としては如何か。
この工区は石段の作業は杜撰であるが、横断側溝はみな大きくて崩れていない。コ
ンクリートのせいだとすれば誉められない。
◆中道で見つけた伝統工法
中道が作られたのはドライブウエーが完成した1961年頃で、その後コンクリート
練り石歩道に改修されたのが1975年頃である。その間のいつ施工されたのかはわか
らないが、コンクリートを使わない空石積み工法で山側の施工がされているのに、
この日初めて気付いた。30〜40年の時を経て石は苔に覆われ、上にはミヤコザサが
繁っている。中道のシオカラ橋と尾鷲辻の間で3ヶ所、都合180mくらいの石組みで
ある。
この日時間が足らなくて工区-DとE-1を見ることが出来なかったが、施設科長
に伺ったところでは、Dは無事、E−1はシャクナゲの急傾斜のところで路面端が
流水でえぐれていたそうである。環境省は予算内で可能な補修を10月中に行うとの
ことである。従来には見られなかった素早い対応であるが、その素早い補修が被害
の更なる広がりを防ぐことは確かである。
このレポートを書いている最中に又もや台風22号が紀伊半島をかすめて北上した。
アメダスによれば、昨夜は1時間雨量が最高20ミリであったが、今日は幸い一桁台
である。このまま北に抜ければ歩道は無事かもしれない。
祈るしかない。
2004年10月9日 田村 義彦
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