prweb_logo sponsor1sponsor2
about sponsorship
list of this NGO's information about this NGO what is prweb?
大台ケ原>虚しい数字が踊る自画自賛の鹿検討会
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会 提供日付  : 2005/01/01 21:21 登録経由地 : prweb情報受付 01 #00725 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

           虚しい数字が踊る自画自賛の鹿検討会
       <平成16年度第1回大台ヶ原ニホンジカ保護管理検討会>

 標題の検討会が2004年11月11日奈良市で開かれた。鹿の検討会は足掛け4年になるが、
もともと、「初めに鹿捕殺ありき」と、科学的データのないまま、パブリックコメン
トの反対を押し切って強引に見切り発車した計画だけに、検討会の度に見せられる虚
しい数字に白々しい思いを強くするだけである。

 【捕殺計画追認の後追い調査】
 確かな科学的データがないまま鹿をトウヒ枯死の犯人と断定して捕殺計画を立て、
すでに3年間で110頭捕殺した今になって、「針葉樹と広葉樹では剥皮による影響が異
なるので、樹種ごとに剥皮率の推移、剥皮から枯死に至る年数、枯死した理由などを
調査するとして、新たに7ケ所の調査地点を設けた」と自画自賛してもらっても白け
るだけだ。もともとこれらの調査は鹿を殺す前にやるべきであったものを、今頃にな
って“後追い調査”をしてどうするつもりだ。
 すでに前回の検討会で環境省は「鹿の剥皮が枯死に結びつくかどうか明確にはわか
らない」と報告している。また、捕殺計画を見切り発車した時点で、「モニタリング
をして捕殺効果がなければ止めればよい」と語られた言葉を私は鮮明に記憶している。
このHPの他の場所でも指摘したが、検討委員の最近の報告の中に、真実を歪めて環
境省の方針に媚びる強引な言説がみられるだけに、捕殺追認のいかがわしいデータが
出てくる危険性が多分にあり、注視する必要がある。

 調査は、1kmメッシュ(100万m^2)の調査区の中に1m^2のコドラードを110ケ設定し
てその中の鹿の糞を数えて鹿密度を推定するという。概算1/9000の面積を調べて鹿
の頭数を推定し、密度を出すという。当然、その密度算定計算式は「この世界」では
認められたものであるようだが、それがフィールドワークの限界としても、研究者の
知的興味の限りであれば許されるかもしれないが、内輪で認めた不確かな数字でもっ
て鹿の生命を奪うことが許されるとはどう考えても納得できない。しかもそれが、
“生物多様性”を守るためだと最近流行の都合の良い理屈をつけるから尚更いかがわ
しくなってくる。このあたりは、委員の自然観、哲学の問題であり、それを抜きにし
て数字を弄ぶ検討会の討議は虚しい。研究の陥穽でもあるが、委員にとって鹿はすで
に生命体ではなく物理的存在に過ぎないのであろう。

 殺されている鹿達はもともと山麓にいたものが皆伐で棲み家を追われて山上台地に
追い上げられてきたことに今では異論はあるまい。鹿は人間の被害者である。いま問
題になっている熊と同じ状況だ。その被害者である鹿を加害者呼ばわりして殺すには、
万人を納得させる哲学と科学が必要であり、この検討会にその責任がある。

 すでに何度か書いたのであまり繰返したくないが、生物学の一分野である医学畑で
数字の処理を業としていたとき、「一例報告」を除いて症例数の少ない統計処理は当
然認められなかったが、「この世界」では、統計処理の対象にすらならない少ないデ
ータで断定的な結論が語られる様子に、「一寸待てよ、それでも科学か、学問か」と
叫びたくなる衝動をたびたび感じる。例えば、昨年の報告にも書いたが、鹿捕殺の効
果判定の基準になったのはたったの1地点である。さすがに委員から、これでは判断
できない、と発言があったが、捕獲の効果とする検討会の評価が変えられることはな
かった。そのような虚しいな検討と資料から、いかほどの真実が見えてくるというの
か。

【捕殺による生息密度の比較】
 本年度の捕殺効果の評価は次回検討会に先送りされたので、発表された鹿の生息密
度だけを記す。委員から小数点以下2桁の数字に意味がないとの発言があった。ここ
でははずした。
 捕殺が行われたA1地区では、2001年75頭、2003年48頭、2004年62頭(km^2)。
昨年は累積70頭捕殺して密度が下がったので「捕獲の影響がうかがわれた」と検討会
は評価したが、今年は累積110頭捕殺したにもかかわらず密度は上がった。この数字
をどう評価するのか次回検討会が待たれる。

 捕殺しなかったA2地区では2001年14頭、2003年 25頭、2004年17頭。捕殺しない
 状態でこれだけの増減がある。もともと1/9000の精度の低いフィールドワークで
 あるので、ばらつきとみるのであれば捕殺効果の評価も同じ視点でみなければ科学
的でない。測定値の少ない中で、有意、無意、測定誤差が出せるのか。捕殺追認のた
めに都合の良い理屈づけは許されることではない。

【暴論】
 ところで、ある委員が、メッシュによる鹿密度のデータから「ミヤコザサ林床でな
いところはシカ密度が減っている。餌がなくなってきたのだ。」と断定するのは聞く
に耐えなかった。鹿犯人説の予断を前提にしてミヤコザサにこじつける我田引水に過
ぎない。このお話にはまともには付き合いたくないが、一つだけお付き合いするとす
れば、委員が大台ヶ原自然再生推進計画(案)図2−5で、ミヤコザサが拡大して豊富
な餌を与えて鹿が増えたと強調している「メッシュー3」の三津河落〜日本鼻〜大和
岳の鹿密度がたったの2頭なのはどうしたわけか。自然の不確実性を逆手にとって、
かくも手前勝手な解釈を断定するとは、真実に忠実であるべき研究者の姿勢とは裏腹
の、信じ難い傲慢さと言う他ない。山上台地の鹿増加の原因から目をそらして、ミヤ
コザサに原因を求める視野狭窄は、大台ヶ原の生態系の保全を願う立場からは説得力
に欠ける。

【正論】
 ことほど左様に虚しい数字について書き連ねても意味がないが、委員の名誉のため
に言えば、大台ヶ原の鹿を最もよく知る研究者である委員から「2003年は10月下旬と
2004年は9月上旬に調査して比較しているが、9月はまだ糞虫が活動しているときで10
月は活動していないからその差は大きい。来年は同時期に調査されたい。」と真っ当
なサジェッションがあった。この委員の糞虫の研究がまとまって、正確な鹿の頭数が
明らかになることを期待したい。正確な鹿の頭数が全くわからないまま、区画法、糞
粒法の3倍以上の違いがある二つの方法で“科学”を装った論議をして、平然と鹿が
殺されている現状が少しでも改善されることを願いたい。

【防鹿柵】
 環境省は本年度から西大台で、地元の間伐材を使った木柱を使用することにしたが、
その地元への配慮に対して委員から「何故木柱に替えたのか!」「防鹿柵の効果は教
育的にやるべきで、恒久的にやるべきところはきっちりやれ」と強い発言がある一方
で、「鹿の密度が下がれば防鹿柵は撤去すべきだ」との正論も出た。
 鹿捕殺が“行政的措置”であることを理解せず、ひたすら“科学的措置”だと信じ
て疑わない研究者がいるのも困ったものだ。「教育的」とはどういうことか。鹿犯人
説を固定するためのデモンストレーションか。
 何度も書いたように、環境省には科学など必要でない。鹿捕殺をいかにスムースに
行うかだけだ。そのためには森林組合の協力が必要であり、地元への配慮は当然必要
であろう。冒頭に述べたように、検討会では調査項目、手法を増やしたことに委員の
自画自賛が目だったが、所詮それは委員の自己満足と実際調査をする事務局の負担を
増しただけで、環境省にとっては関心の外であろう。

【奈良県の個体数調整】
 奈良県の個体数調整の実態について、座長から列席の奈良県森林保全課の担当者に
質問があり、確かな数字の回答はなかったが、今後、大台ヶ原周辺の鹿の実態につい
て広域的に見ていこうということになった。2001年の委員会発足以来、時折この話が
出るが、具体的に検討されたことは一度もない。本会は、大台ヶ原周辺の針葉樹の単
一林を混交林に戻す以外に鹿問題の真の解決はない、と以前から言って来たが、果た
してその時がいつ来るのか。特定計画にしても自然再生推進計画にしても広域が前提
である。そのために、縦割り行政の壁を環境省自身がどう破るか、そして閉鎖的な周
辺自治体がどう協力するかが最大の問題であろう。

【捕殺実績・40頭】
 さて、64頭を目指した今年の捕殺はすでに40頭(アルパインキャプチャー13頭、麻
酔銃27頭)を捕殺したが、あと24頭を残して捕獲を担当する事務局はあせっている。
前回の検討会で時期尚早となった「くくりわな」を再び持ち出して使いたいという。
日光国立公園特別保護地区で使っているが、人間の事故は起きていないというが、委
員から「事故が起きたら終りだ」との批判出て、錯誤捕獲の可能性もあり、法的にも
クリアーしなければならない問題点があるので、委員の合意は無理だと再び見送られ
た。
 その論議のなかで、防鹿柵を開ければ鹿が入ってくるのでそれを捕獲すれば、との
意見も出たが他の委員から、「柵を開けて鹿が入ると植生がすぐ変わる。反対だ。捕
獲用の柵を別に作れ。」「妊娠中のメスシカを春先の出産前に捕れ。」などの意見が
出たが結論には至らなかった。

 身も蓋もない言い方であるが、“目標64頭”といっても、もともと科学的根拠があ
るわけではなく、適当なデータを入力したコンピューターがシミュレートした結果に
過ぎず、目的を達成しなければ大変なことになるわけではない。しかも、語るに落ち
た話ではあるが、予算は出来高制ではないので、1頭でも64頭でも同じであれば“勤
労意欲”もにぶるであろう。因みに、2002年には1頭捕殺するのに258,500円かかって
いる。公共事業として高過ぎないか。前回の検討会では他県の出席者から、もっと安
く捕れるよ、との声があった。本年度の経費についても質問したので後日公表される
であろう。

 本年度使用の捕獲器具はアルパインキャプチャー1基(遠隔操作)、麻酔銃1丁(打
ち手1名、運び手3〜4名<猟友会>で1クルー)だそうである。日数当りの捕獲効率は
出ていたが、一人当りの効率を出すようにとの要望が委員から出た。

【傍聴席からの質問】
・ 麻酔銃かライフルか、に答えられず  2001年に作成された「大台ヶ原ニホンジ
カ保護管理計画」P.30には、追い出し効果を狙って「銃器による捕獲を併用する。こ
の場合、大台ヶ原ドライブウエイが閉鎖中に実施する。」と記されている。一方、「
大台ヶ原自然再生推進計画(案)」P.65では同じ文章が「銃器(麻酔銃)」となって
いる。そして現在、麻酔銃はドライブウエイ開通中に使われているので、「保護管理
計画」でいう「銃器」はライフルなのか麻酔銃なのかを質問した。ところが、環境省
と座長の説明が食い違い、この記述を知らない委員もいて意見がまとまらず、回答は
後日になった。

 思うに、「保護管理計画」で言う「銃器」とは本来ライフル(散弾銃)のことで、
麻酔銃はアルパインキャプチャーで捕獲された鹿を薬殺するための前処置として使用
するものであったはずであるが、アルパインキャプチャーの捕獲が思わしくないので
麻酔銃を持って直接森に入って、あたかもライフルのように使うようになったのでは
ないか。従って、入山者の目の前で麻酔銃が使われて、間違って“人間が麻酔される”
危険がある。現に本会会員が麻酔銃使用の現場に遭遇している。行政的、法的裏づけ
はどうなっているのであろうか。入山者に危険だからと言ってアルパインキャプチャ
ーの設置場所を明かさないでおいて、入山者の目の前で麻酔銃を平気で打つのは矛盾
も甚だしい。環境省、事務局、検討委員にその危険性の認識がなく、質問されて協議
しなければ答えられないとは驚きだ。

・ 追 記
 環境省は11月15日に「大台ヶ原自然再生推進計画」P.64を下記の様に訂正した。
 「 {2}捕獲方法  捕獲方法については、公園利用者の安全確保を充分図りつつ、
以下の方法を組み合わせて、春から 秋にかけて実施する。
 ア.アルパインキャプチャーな等集団捕獲用のワナを用いて捕獲を行う。
 イ.アルパインキャプチャーによる捕獲には限界があること、および特定個体の選
択的な捕獲も必要  と考えられるので麻酔銃による捕獲も併用する。
 ウ.高密度地域からのニホンジカの追い出し効果が期待されるため、場所によって
は銃器(麻酔銃を  除く。)による捕獲を併用する。この場合大台ヶ原ドライブ
ウエイ閉鎖中に実施するなど、人の安  全に十分に配慮した上で実施する。
 エ.その他、適宜人に対して安全でかつ効率的な捕獲技術の開発や適用を試みる。」

・ アルパインキャプチャーの設置場所は教えられない
 併せて来住弘之本会常任委員が、本会の鹿捕殺、自然再生についての基本理念を説
き、先日設置現場を発見した経験からアルパインキャプチャーの他の設置場所を明ら
かにすることと、現場の看板に捕殺のための目的を「調査のため」と書いているのは
ウソだと糾した。
環境省は「設置場所は非公開になっているので言えない。掲示は最近<個体数調整>
に改めた。」と答えた。本会のHPに掲載された来住氏の指摘を読んで訂正したので
あろう。
 本会の基本理念については、座長が「シカ捕獲や自然再生は無駄ではない。事実誤
認は困る。議論をする気はない。」と答えた。

【風倒木の搬出】
 委員から、前々回の検討会で私が指摘した「伊勢湾台風による大量の風倒木の搬出」
の真偽について質問があり、環境省から「ドライブウエイを使って搬出した」との説
明があったが、不正確なので私から発言を求めて「林野庁所管地については、風倒木
は割れていて高く売れないので搬出していない。搬出したのは環境省所管地だけ。」
と訂正した。環境省は私の説明が正しいと認めたが、何故最初から正確に説明しない
のか。一旦「搬出」と書いた以上、事実調査をして修正しなければならないことがわ
かっても素直に認めない姿勢は理解できない。官僚の無謬性を持ち出すほど大袈裟な
問題ではないが、情報公開時代の時代錯誤ではあろう。
 もともと、このいい加減なことを言ったのは例の元大学教師で、それを環境庁が信
じて検証しないまま“定説”にしたのである。因みに大台ヶ原についてはこのような
いかがわしい話は「解説看板」などにも多く見られ、本会は以前から早急な訂正を求
めてきたがいまだに改善されない。利用者に誤った情報を提供し続けているのは重大
事であるので、サイン計画の第二段階として掲示内容が是正されることを期待したい。

 本題に戻して、搬出されなかった正木峠周辺の林野庁所管地の面積は環境省所管地
よりはるかに広い。
また、環境省所管地から搬出したのはトウヒではなく檜だと地元では言われている。
檜であれば「倒木更新」には関わりがないであろう。「倒木搬出」「倒木更新」を森
林再生のファクターの一つとして重要視するのであれば、その評価を学問的に正確に
出すべきである。「大台ヶ原自然再生推進計画(案)」P.13に単に「搬出」とあるが、
重要な計画であるだけに記述は正確を期す必要がある。大学教官の委員からも「学生
に間違ったことは教えられない」との発言があった。
                        2004年11月12日 田村 義彦


  

[article_prweb]oodai.htm