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大台ケ原>大峰山系施設整備事業の環境省直轄事業化を願う
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会 提供日付  : 2005/01/01 21:22 登録経由地 : prweb情報受付 01 #00727 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

       大峰山系施設整備事業の環境省直轄事業化を願う
    < 大峰山系環境共生推進計画 第1回懇話会を傍聴して >

                               2004年12月8日
                大台ヶ原・大峰の自然を守る会  田村 義彦

【奈良県:傍聴者、メデイアに整備計画の配布拒否】
 資料1.大峰山系環境共生推進計画策定の目的と策定手順・・・事前配布
 資料2.大峰山系の現状と課題の整理・・・委員の助言で審議直前に配布、持ち出
                    し可能
 資料3.整備基本計画の検討・・・審議直前に配布 持ち出し禁止
 奈良県は2004年12月7日、奈良市に於いて標題の会議を開いた。ところが、傍聴者、
取材記者には受付で上記「資料1」が渡されただけで、あとの資料は、会場入口のサ
イドテーブルに置かれた一部を閲覧(持出禁止)できるだけであった。そして、それ
に代わるものとしてスライドを用意していた。
 会議冒頭、本会は傍聴者に対してすべての資料配布を求めた。取材記者からも同様
の要求が出た。しかし奈良県は、「整備計画が一人歩きされては困るから渡せない。」
と答えた。「一人歩きとはどういゆうことか」と記者共々質問したがそれ以上は黙し
て答えなかった。座長から、審議時間がなくなるから、と資料要求を続けることがあ
たかも審議妨害であるかの如き発言に遮られて、配布拒否のまま審議に入った。因み
に、すべての資料は余分に印刷されて、奥のサイドテーブルに積まれていた。

【時代錯誤の密室奈良県政】
 懇話会発足時に、本会は自然保護団体代表の参画と会議の公開を奈良県に求めた。
県は委員の参画を拒否し、会議の公開は認めた。ただ、自然環境(昆虫・動物)の精
通者として本会の谷幸三常任委員が参加するので、自然保護の立場からも発言するこ
とにした。
 本会は従来、奈良県の密室県政の姿勢に対して、批判、要望を繰り返してきたが、
頑なに県民の声を拒否するだけで、未だにこの有様である。評すべき言葉もない。県
民の知る権利、行政の施策を県民に知らせるメデイアの責任・義務、などにについて
無知倣岸な役人に言うべき言葉もない。

 改めて言うまでもなく、かなり以前から、中央省庁ですら各種審議会、検討会の資
料はおろか、議事概要、時には議事録までもインターネットで公開されており、プリ
ントを郵送で入手できる。
 環境省の大台ヶ原自然再生推進計画策定作業のなかでは、今まで足掛け5年、40回
近い会議、説明会が開催されてきたが、委員、傍聴者、住民に対してすべて同じ資料
が配布された。そしてその資料と会議内容を、直近の2回の住民説明会を除いてすべ
て本会はHPにかなり詳細に掲載してきたが、環境省からクレームを受けたことは一
度もない。
 奈良県は情報公開条例を最後に作った県として有名であるが、戦後60年、少しは主
権在民、情報公開の意味を真面目に考えるべきだ。県民の傍聴者を観客ぐらいにしか
認識していないのではないだろうか。

【利用者は増加したのか? 登山者全体は横這い、信仰のための登山者は減少】
議事(1)「大峰山系環境共生推進計画策定の目的と策定手順」(資料1)
1.「計画策定の目的」
 奈良県の目的は、世界遺産の登録によって「増加が予想される利用者を受け入れる
ことのできる整備推進をしたい」ということにつきる。

 環境省委員から、「7月の登録の前と後、今年の前半と後半の利用者の傾向はわか
っているか」、と質問が出た。事務局であるコンサルは、「まだ整理できていないが
地元の実感として増加していると聞いている」と答えた。事務局は現地踏査ではなく
地元自治体などに対するヒアリングによって資料を作っているが、「実感」で「増加」
を言うのは不正確だ。信頼できる科学的データを提示すべきである。

 修験道の代表委員から、「登山者は全体としては横這い、信仰のための登山者は減
少している」との発言があった。
〔付記:この発言は、テープ起こしに基いて記述した。ところが、12月8日に事務局
から各委員に送られて来た「議事要旨」によると「観光客は増加傾向にあるが、信仰
の気持ちで登られている方は減ってきている。」となっている。「横這い」と「増加
傾向」では大きく異なる。これは杜撰なのか、恣意的改ざんなのか、委員から事務局
に抗議したが、12月26日現在、正されたものはまだ送られてこない。
 更に、下記の「整備を利用者に合わせる必要はない」という委員の発言が、「議事
要旨」では「必ずしも必要ではない」となっている。ニュアンスの違いでは済まされ
ない。この二つの事実から考えると恣意的な意図を否定し兼ねる。勿論、「議事要約」
は議事録と違ってある程度事務局の主観が入ることは避けられないが、このような事
実に反する記述は、初めての信じ難い経験である。本会は確認のため本レポートを発
言委員に送ったが、本レポートの訂正は求められていない。〕

 事務局は屋久島、白神山地では世界自然遺産登録後、利用者が急増したことをもっ
て大峰山系でも急増するであろうとプレゼンしているが、「紀伊山地の霊場と参詣道」
とでは性格、内容が大きく異なる。「参詣道」の観光客は確かに増加するであろうが、
「霊場」である奥駈道では厳しい登山を要求されるので利用者が急増するとは考えに
くい。「施設整備を推進」するために恣意的に“利用者の増加”を創り上げることは
許されることではない。

続いて「資料1」を転載する。

2.「計画策定の手順」
○ 第1回懇話会・12月上旬予定
(1)大峰山系の現状と課題の整理
  1)環境条件の把握 ・自然的条件 ・歴史的条件 ・社会的条件
  2)現況施設の把握 ・登山道・標識・トイレ等の現状 ・各種施設の管理状況
  3)利用者動向の把握 各種施設(山小屋やエコミュージアム等)の利用状況 
   ・パッケージツアー、    各種イベント等の状況 ・各種団体(ボランテ
   ィア、学校等)の活動状況 等
  4)関連法規制・関連計画の把握 ・法的保護状況 ・利用計画・保護計画・歴
   史の道整備計画 等
  5)課題の整理 ・世界遺産(史蹟)の取り扱い ・利用促進と環境保全 等
(2)整備基本計画の検討
  1)基本方針の設定
  2)全体整備の方向性の検討 ・特性を踏まえたゾーニング ・利用形態を考慮
   した整備水準の設定     等
○ 第2回懇話会・2005年2月上旬
(3)環境に配慮した整備手法 ・管理手法に関する調査 ・先進優良事例の収集
(4)整備計画の検討
  1)整備検討個所等の抽出 ・登山道、トイレ、登山基地等
  2)施設整備上の課題の整理
  3)整備基本プランの検討 ・整備イメージの明確化 ・過剰利用への対策 等
  4)維持管理及び施設運営方法の検討 ・管理主体、管理方法、地域連携 等
  5)整備による影響・効果に関する考察 ・整備による自然環境負荷低減効果・
   地域振興への効果 等
○ 第3回懇話会・2005年3月上旬予定
(5)大峰山系環境共生推進計画の策定 ・懇話会の意見を踏まえたとりまとめ
  3・「計画の対象」 奥駈道を中心にした地域
  4・「計画対象自然歩道」 奥駈道とそこに至る登山道 

【奈良県 整備基本計画公開をあくまで拒否】
議事(2)「大峰山系の現状と課題の整理」の審議に入ったが、傍聴者と記者には資料
がない。スライドの文字は小さくて読めない。手をこまぬいていると、委員から「資
料を渡さないのは失礼だ。印刷したのがあるのだから持ち帰り禁止で渡したらどう
か。」と提言があった。奈良県は、資料2は現状の説明だから持ち帰っても良いが、
資料3の整備基本計画を見て、「これで決まった」と思われては困るので持ち帰りは
駄目だ、と言い方を変え、座長も同意した。これでは、冒頭で配布を拒否したことと
の整合性が崩れたが、それについての説明はなかったが、ともかく資料2が配られる
ことになった。いい加減さに苦笑するしかなかった。
 「資料2」の内容は、傍聴者、記者に事前に配布された「資料1」に記載されている
事項(上記緑字)についての説明で、秘匿しなければならない内容など全くなかった。

 施設整備事業に利権がからむことは当然である。奈良だけではなく、全国どこにで
もある話だ。「これで決まったと思う」者には「まだ検討中で決まっていない」と説
明すれば済むことではないのか。それで済まない何かがあるのだろうか。むしろ、計
画を公開して、広く関係者、県民の意見を聞くことは望ましいことであろう。下司の
勘繰りと評されるかもしれないが、従来は、議員、有力者、業者等々の思惑を受けて、
県民の目の届かない密室で事が進められていたという「誤解」を払拭する良い機会で
はないのか。懇話会公開の意味を、県自身が否定することはない。形式的に懇話会を
公開し、後は密室で、では県民に対する愚弄である。呆れているだけではすまない。

 因みに昨年、奈良県は大台ヶ原のサイン計画懇話会を主催したが、そこでは標識の
設置場所、数量など計画の詳細を明記したすべての資料が、傍聴者に配布された。も
っとも、場所が県・国有地で、事業規模が比較にならない位小さいのが理由であろう
か。

委員の発言要旨
・「利用者による植生への影響」が、アンケートでわかるのか。事務局は全域を歩い
 て調査せよ。
・登山者の増加イコール植生破壊は短絡ではないか。
・山上ヶ岳と奥駈道は異質だ。トイレがどこにでもあるのはおかしい。各駅停車は困
 る。
・木道、トイレの増設反対。

 事務局から、資料は村の聞き取りによる定性なので、定量的に使うのはまずい、と
よくわからない説明があったが、事務局の実地踏査が極めて不充分であることが露呈
した。文字通り机上の空論で施設整備を行うなど論外である。奈良県は登録を見越し
て、既に過剰整備をし尽くしているが(『修験道と登山を冒涜する修験道整備』『世
界遺産登録』『大峰山系前鬼・静かなる古道の危険な階段』)、未整備な個所を“植
生への影響大”などと都合の良い理由をつけて整備にもっていくことは許されること
ではない。

【懇話会委員の共通認識を】
 環境省委員から「施設の老朽化の程度、植生破壊の状況などについて懇話会の共通
認識のために、写真、ビデオなどを次回に用意されたい。」との要望があった。

 各委員の発言を聞いていても現地を知らない委員が多く、例え知っていてもその現
状認識、将来への展望には大きなへだたりがある。発言は独演会の様を呈し、議論に
ならない。これでは、独演会のあとは、事務局がつくった机上の空論で事が決する危
険性が高い。次回懇話会から整備個所の具体的な検討に入るであろうが、そのために
は上記提案の実行が不可欠である。事務局の努力を期待する。

 ちなみに、大台ヶ原自然再生検討会では、委員全員参加の二日に亘る現地視察会が
行われたが、今は季節的に条件が悪いが、せめて前鬼から雪の大峰山系を望見する視
察会があってもいいのではないだろうか。また、洞川で修験道の講話を受けて、奥駈
道について共通認識を得るのも整備を考えるうえで有意義であろう。

【環境省:整備を利用者に合わせる必要はない。
                   不便が制限要因になることは良いことだ】
議事(3)「整備基本計画の検討」
 審議直前に配布された持ち出し禁止の「資料3」に基づいて審議された。
 内容は「資料1」に書かれている項目(上記赤字)の説明であって、秘匿しなけれ
ばならないことは何もない。懇話会委員である本会常任委員所有の資料があるので、
ここに資料の内容を書くことは可能であるが、県との無用のトラブルを避ける意味で、
現時点では控える。しかし、次回懇話会では整備個所の具体的検討に入るのであろう
が、その時点では審議内容の報告として書かざるを得なくなるであろう。

 委員の発言は、奥駈道にトイレがいる、いらないとすれ違い、トイレはいらないが
避難小屋がいる、などと腰が定まらなかった。奥駈道の認識、自然観などの違いであ
ろうが、真っ当な結論に至るのか気になるところである。

 環境省委員から「奥駈道はもともと危険を伴うところだ。整備を利用者に合わせる
必要はない。不便が制限要因になることは良いことだ。」との発言があった。この考
え方を、懇話会の基本理念として今後の審議を進めていただきたい。事務局も「維持
保全が目的です」と答えた。その目的を忘れないでほしい。

 委員諸侯は、世界遺産登録は奥駈道が修験道の霊場であることをユネスコが評価し、
文化的景観を維持保全するために登録されたという原点に立ち返り、しかも登録の際
に保全管理計画の不備を指摘され、2年後に提出することを義務付けられていること
を心していただきたい。この2年間に過剰施設整備を既成事実化しようとする県の意
図が感じられ、心配である。「はじめに整備ありき」ではなく、奥駈道の文化的自然
景観を維持保全するための方策を検討していただきたい。

【大峰山系施設整備事業を環境省直轄事業として奈良県施行委任での実施を願う】
 環境省は10月26日、小池百合子大臣が「三位一体改革について」の新しい方針を発
表した。それによると、国立公園の整備は補助金を廃止し、国の直轄事業として実施
する、とある。そのためには、勿論人と予算の裏付けが必要であり、財務省が簡単に
認めるとは思えない。しかし今まで地方自治体が、国は出来ないだろうと「過剰施設
整備という名の自然破壊」を繰り返して来た悪しき慣行を、この際断ち切っていただ
きたいと切に願い、環境省の新しい方針に期待したい。

 大台ヶ原の周回線歩道整備事業は、3年間に亘り民意を汲み上げた検討を重ね、奈
良県施行委任の直轄事業として、国の強力な指導の下に、業者の献身的努力によって
見事に成功した。全国の国立公園歩道整備の範たる快挙である。これがもし奈良県の
補助事業であったとすれば、従来の例からすれば、コンクリートで塗り固めた悲惨な
結果になっていたであろう。

 環境省は、大台ヶ原の空中回廊、「緑のダイアモンド計画」などにみられた大規模
過剰整備を見直して、2003年に政策転換を行った。その方針に基づいて周回線歩道が
空石積みで見事に出来上がった。しかし、奈良県は環境省の政策転換を理解している
とは思えない。大峰山系の最近の歩道整備をみても、旧態依然とした発想だ。本事業
においても、建て前では「必要最小限度の整備」などと言いながら、本音では大普賢
〜和佐又尾根など過去の数々の整備に見られた過剰整備を意図していることが「基本
計画」を見てうかがえる。

 奈良県は縄張りを失いたくない本音があるにしても、従来の様に好き勝手にできな
い直轄事業は、今後は国でやってもらいたいと考えているように見受けられる。補助
事業を直轄化すれば、財政的にも県の負担が減る。
 本事業は環境省の補助事業であるが、大台ヶ原の歩道整備のように、直轄事業の奈
良県施行委任のかたちで実施できないであろうか。当然環境省の出費は倍増する。し
かし、整備の規模を半減すれば同じであろう。奥駈道は稜線の僅かを残して伐採され
てしまった。残された僅かな原生的、宗教的雰囲気を維持保全するために環境省の英
断を願いたい。

【懇話会委員名簿】
 傍聴者と取材記者に配布された資料に懇話会委員名簿はなかったが、秘匿する理由
はないので記載する(敬称略)。それにしても、地元自治体の代表が天川村だけで、
関係する川上村、上北山村、下北山村、十津川村から一人も入っていないのはどうし
たわけであろう。
1.参詣道と長年係わりを持ってきた修験道に精通した者
                  大峰山寺代表役員 龍泉寺住職  岡田悦雄
2.世界遺産登録及び大峰奥駈道の価値等に精通した者
                  県教育委員会文化財保存課課長  宮谷 太
3.奈良県の山岳及び体育教育面からの登山、ハイキング活動等に精通した者
                      奈良県山岳連盟事務局長 登り賢ニ
4.大峰山の観光利用とそれに関わる地域振興に精通した者
                   奈良県立大学地域創造学部教授 西田正憲
5.大峰山系を代表する観光地域及び地元自治体代表の者  天川村村長 大西友太郎
6.環境省自然環境局近畿地区自然保護管理事務所の公園管理官
         環境省自然環境局近畿地区自然保護管理時事務所所長 亀澤玲治
7.大峰山系の自然環境(植物)に精通した者
               奈良教育大学教育学部生物学教室教授  松井 淳
8.大峰山系の自然環境(昆虫・動物)に精通した者
                     大阪産業大学非常勤講師  谷 幸三


  

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