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大台ケ原>データ評価を先送りして保全再生計画を承認
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会 提供日付  : 2005/01/01 21:23 登録経由地 : prweb情報受付 01 #00729 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

     データ評価を先送りして「森林生態系保全再生計画」承認
     <平成16年度大台ヶ原自然再生検討会 森林生態系部会>

 2004年12月24日、奈良市に於いて、表記の部会が開催された。昨年12月25日に開
催された部会に於いて、春夏の調査をしていないことが指摘されたため、環境省は
本年3月末策定の予定を大幅に延ばして、本年3月から11月まで下記各項目の調査が
行われた。

「植生タイプ別調査」
1)再生ポテンシャル調査  2-1.種子供給(結実量調査) 2-2.埋土種子
              2-3.菌根菌 2-4.環境条件
2)防鹿柵内の植物相
3.動物 1.地上性小型哺乳類調査 2.鳥類区画センサス 3.地表性甲虫類調査
   4.大型土壌動物調査 5.ガ類調査 6.食材性昆虫類調査 7.クモ類調査
「大台ヶ原の地域特性を把握するための調査」
「大台ヶ原における希少種・固有種の現状と課題」
「利用による自然環境への影響調査」
「木道の効果確認調査」:後述
「平成16年度ニホンジカ影響軽減対策の実施状況」
 1.区域保護面積(防鹿柵)
  1)設置面積:ha
  2)置場所:七つ池付近
  3)材質:支柱―木柱(*)とFRP柱の組合せ(**)    網:ステンレス
    (*) 木柱は、地元間伐材(ヒノキ)をローリング加工(径を揃える)した
    上で、当地が自然環境へ十分配慮すべき特別保護地区でもあることから、防
    腐剤を使用せず、人工乾燥、表面焼き付け処理、磨き加工を施したものを使
    用した。
    (**) 土質調査の結果をもとに、できるだけ木材を使用。
       木柱:536本(62%) FRP:323本(38%)
  4)事業費:50,211千円
    1m当りの防鹿柵の設置単価(設置工事費等をすべて含む)を参考までに算
   出したが、落札状況等により変動があるため単純な比較はできない。今後、耐
   久性・維持管理費等含めを中長期的に検証していく必要がある。

設置年度   材質   設置面積(ha) 設置延長(m) 工事費(千円) 単価(千円/m)
平成11年度以前     9.39
平成12年度 耐雪格子柵  3.57    1,123.5    91,000      81
平成13年度 耐雪格子柵  2.69    1,130.7    84,000      74
       試験柵)(0.02)
平成14年度  FRP     8.28    3,345.6    131,250      39
平成15年度  FRP    16.48    5,190.0    187,530      36
平成16年度 FRP+木材   4.06    1,286.4    50,211      39
合計           44.9
  5)維持管理
     今年度は台風21号、23号などによる暴風雨被害(倒木による防鹿柵の破損
    等)が度々発生したが、吉野きたやま森林組合の協力を得て、被害個所の確
    認と補修を迅速に実施した。今後と    も、森林組合等の協力のもと、
    定期的な巡視を行い、必要な補修、維持管理をこまめに行っていく。
 2.単木保護対策(ラス巻き)
  1)設置本数:2,500本 (樹種の指定なし)
  2)設置場所:シオカラ谷斜面、尾鷲辻(牛石方向)
    過去(平成8年)に設置したラスが老朽化するとともに、樹皮にくい込んでい
   る状況が見受けられたため、尾鷲辻付近(牛石ヶ原方向)張替えを実施した。
   また、ヒバリ谷付近の樹木に新たにラス巻きを実施した。
  3)事業費:5,977千円

 部会では、これらの膨大な量のデータを、「自然再生推進計画(案)」にどのよう
に取り入れるかが論議されたが、多くの資料は評価が難しいため、とりあえず、いく
つかのデータを記載して現状把握にとどめることになった。希少種・固有種も保全対
策は今後の課題とされた。
 この評価先送りは「森林生態系保全再生計画」だけでなく「ニホンジカ保護管理計
画」にもいえることで、それが「自然再生推進計画(案)」の基本的欠陥といえる。

 思えば一昨年に、降って沸いたように自然再生計画が登場したとき、大台ヶ原には
基礎的データは何もなかった。それまで15年間「トウヒ林保全対策事業」が行われて
来たが、徒に時とカネ(約6億円)を浪費するだけで、まともな調査による確かなデ
ータの蓄積は皆無であった。大台ヶ原を「森林再生のモデル」に選んだ環境省にとっ
ても恐らく意外だったであろう。それだけに、この2年間で事務局の自然環境研究セ
ンターによって急遽行われた丁寧な各種調査の努力は多としたいが、何せ、時間もス
タッフも少なすぎる。このデータではとてもまともな評価をできるはずがない。少な
くとも5年間くらいの学術調査をやるべきだと、本会はくりかえし主張してきた。
2001年11月に「大台ヶ原ニホンジカ保護管理計画」を見切り発車したのと同じように、
「大台ヶ原自然再生推進計画」の見切り発車が迫っている。はじめに再生計画ありき
と、確たる見通しもないまま再生計画は決まろうとしている。安易にはじめた計画の
安易な結末である。

★「実証実験」先行着手 ところが驚いたことに、その自然再生推進計画(案)がま
だ決定していないにもかかわらず、「森林生態系保全再生に関する実証実験」が「先
行的に」すでに着手されていた。
「表層土除去」「地掻き」が6月に1回、「ササ刈り」が6月・9月の2回、11月にトウ
ヒ種子200粒を「播種」されていた。再生計画の遅れを取戻すための環境省のあせり
か、検討会は無視された。
「資料」にある「表層土除去区」「ササ刈り区」「地掻き区」の生々しい寫眞は、将
来の大規模土木工事を連想させる衝撃的なものであった。一昨年、釧路湿原で見た表
層土除去実験を思いだして暗澹たる思いがした。
現状のミヤコザサの近くには母樹がなく、よしんば種子が落ちても発芽できないので、
「積極的な発芽環境の改善のための実証的手法」として表層土を除去して種を播くと
いう。しかし、蘚苔更新(倒木更新は間違い)のトウヒがこの裸地で発芽するのか。
「トウヒ林保全対策事業」で58,000粒の直播をしたが発芽しなかった。しかし、その
ような技術的なことよりも、ミヤコザサは森林から排除すべき敵ではなく、ミヤコザ
サの草原も立派な自然である、と何故考えられないのか。ミヤコザサは55年くらいで
一斉に枯れる。そのとき何かの樹木が生えてくるかもしれない。森林は撹乱要因のな
かで絶えざる変化を繰返してきた。正木峠にトウヒの純林を戻したいというのは、学
者と役人の傲慢でしかない。

 環境省は「昭和30年代前半」に戻したいというが、その頃、ミヤコザサの草原は大
台ヶ原に存在した。
にもかかわらず、それ以前から森林は天然更新をくりかえしてきた。正木峠のミヤコ
ザサの草原は伊勢湾台風後の当然の帰結であって遷移の過程に過ぎない。それを、あ
ってはならない現象であるかの如く誇張吹聴し、自然再生について、さしたる経験も
自信もない自称「学識経験者」たちが、将来に何の責任も持たないままいい加減なこ
とをするのがこの度の森林生態系再生計画である。(下記質問参照)

★パークボランティアによる小規模木柱柵の設置
 環境省のパークボランティア(70名)が研修の一環として、大規模な防鹿柵の設置
が予定されていないところに散在する実生・稚樹群生地に地元の間伐材を使って木柱
の柵を、ドライブウエィ、中道沿いに合計16箇所設置して、来年度も4〜6箇所予定し
ている。この取り組みは現時点では自然再生計画(案)に位置づけられていないが、
将来、自然再生計画に位置づけられるようにしたいという。
 本会はHPに『実生が育つ』のページを作って、実生・稚樹を大切にするように環
境省に要望してきただけに、この取り組みを評価したい。日出ヶ岳〜巴岳の稜線、正
木峠下にも実生・稚樹が多い。
 大台ヶ原の防鹿柵は中途半端に大規模であり、そのために、鹿の餌を奪い、いまや
景観を阻害している。奥日光のように、広範囲を囲うか、個々に囲うかどちらかであ
ろうが、大規模に囲って、鹿の餌としてのミヤコザサを奪い、却って実生・稚樹を食
べさせるよりも、個々に囲うほうが理想的であろう。
 一方、ボランティア達は、かつて、トウヒ林保全対策事業で設置された防鹿柵の中
で、更新初期段階のトウヒ、ウラジロモミの消長過程及び周辺地域の継続的モニタリ
ングを行うという。期待したい。

★「利用対策部会アピール(案)」から「シカの食害」を除いたことに強い抗議
 この部会の座長、委員から同席していた利用対策部会座長に強い抗議がなされた。
私が、鹿は「複合的要因」の一つであるから改めて鹿だけ書き出す必要はないと提案
して、各委員の賛同を得て削除した。大袈裟にいえば内政干渉といえるが、目くじら
を立てることはやめよう。
 それにしても、語気鋭く温厚な利用対策部長に迫るこの部会の委員達の態度には宗
教的折伏に狂奔する原理主義者と同じ暗いものを感じた。鹿とミヤコザサを二大元凶
とする委員諸侯の怨念にはすさまじいものがある。科学的根拠が無いだけに、原理主
義者がファッシヨ的にならざるを得ないとすれば恐ろしいことである。
 大台ヶ原の「森林の衰退」と鹿の剥皮の因果関係が未だに科学的に究明されていな
いことは環境省も認めている。そのための調査をこれからやろうということが先日の
検討会で決まったばかりである。里山と事情が異なる大台ヶ原を同一視して、鹿を「
最大の阻害要因」とする迷妄には困惑するばかりである。鹿を眼の仇にするよりは周
辺人工林の天然林化を急ぐべきであるが、その発言は委員諸侯からは聞かれず、自然
再生計画(案)にも盛り込まれていない。
 最後に傍聴席から、「シカの食害」は納得できない旨発言したが、座長から、それ
でも大分わかってきた、旨の発言があった。何がわかってきたのか尋ねることは、来
年3月に開かれる予定のシカの検討会にゆずった。

★「木道の効果確認調査」
 この資料が14日の利用対策部会では配布されなかったので、利用対策部会としての
意見提出を傍聴席から求めた。長嶋座長の同意も得られ、資料を各委員に配布して事
務局で意見集約をすることになった。
私が事務局へ送る意見を転載する。

      ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―

― [資料5]「これまでの対策等の評価分析・・木道の効果確認調査」について ―

                                 田村 義彦
「木道の効果確認調査」など今更必要ない

・森林生態系部会委員から、木道の設置目的は人為の排除であって、「歩道の土壌流
出等を防ぐこと」が目的ではない、と指摘があったが、設置当時言われた目的は「植
生保護」と「利用者の歩き易さ」であった。
・問題はその「植生保護」の内容である。歩道を地表から持ちあげて空中回廊にした
ため、利用者が物理的に歩道脇に出られなくなり「歩道脇における裸地の拡大効果」
があったのは当然であって調べるまでもない。利用者は地面に降りられないのである
から「裸地の拡大効果」ではなく、裸地などできるはずがないことは調べるまでもな
く最初からわかっている。
・一方、空中回廊によって覆われた部分の植生はその後どうなったのか。図1,2にも
歩道脇のデータはあるが、歩道下のデータはない。調べていないのか。例えば、伯耆
大山頂上のアルプススタンドの下は真っ暗で植生はないが、それを問題にしないのは
おかしい。
・「調査結果」に「正木峠のテラス部分では、新たな人の踏み込みによる裸地の拡大
が見られた」とあるが、正木峠付近は鹿道が縦横に走っているので、人の踏み込みと
の区別をどのように正確につけたのか。
・これは、正木ヶ原周辺の「歩道整備区間」の「人の踏み込みによる歩道の複線化」
についても同様で、鹿道を人による複線化と誤認している可能性が高い。かつて大台
ヶ原に関わった研究者たちが、利用者を植生破壊の犯人に仕立てるために恣意的に鹿
道を人間の道にしたことがあったが、まさかその伝統が継承されているのではあるま
い。

・正木峠からヌタバにいたる旧歩道は、正木峠から日出ヶ岳分岐にいたる旧歩道同様、
大台ヶ原に降る5000ミリ近い雨水が流れ下るルンゼ状の細い谷である。そこを、人間
が登山道として利用していたのである。日本特有の登山形式である。
歩道として使っていた時代は木柱のダムで補修されていたが、使用禁止された今後、
もしその補修が行われなければ、細い谷が更に浸食の度を加えるのは当然であろう。
「植生の被度」などとのんきなことをいっている閑はない。現在既に流水で空中回廊
の木柱の基礎が洗われて、柱が浮いているところがある。

・設置後5年を経て、現在、環境省は木道が過剰整備であったことを認め、「場所に
よっては撤去も含めて検討する旨、基本計画に盛り込んだところ」であると、正式に
表明している。(平成16年11月25日川上村地域説明会概要)この視点が欠落している
のが、この調査の基本的欠陥である。「効果確認」などと予断をもった調査など今更
必要ない。
 また、本年、整備された正木ヶ原〜尾鷲辻間の歩道も正木峠同様に細い谷である。
その歩道がコンクリートを使わない空石積み伝統工法で見事に仕上がり、5回の台風
による3800ミリの豪雨に耐えることが立証された。
 空中回廊を出来るだけ早く撤去して、旧歩道を伝統工法で補修整備して、再び利用
者に土と岩を踏む登山の根源的な喜びを与えられることが現実化してきた。それこそ
が、国立自然公園の質の高い利用である。環境省の英断を願う。

      ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―

★奈良県 「異論なし、このまま進めてほしい」
 かつて、利用対策部会で県の財政難から異論を呈した奈良県がこの発言をしたのは
注目に値する。

★質問
 この日が、森林生態系部会の最後の部会であったので、「表層土除去」問題など基
本的な質問を用意していたが、先を急ぐ部会の雰囲気が基本的な論議を受け入れるも
のではなかったので質問は取り止めたが、用意していた質問を記す。

【 森林生態系部会(04/12/24)への質問 】
◆四日市製紙皆伐後は天然更新したにも拘わらず、何故、伊勢湾台風後は天然更新し
ないのか・従来、大台ヶ原に関わる植物研究者は、大正時代の四日市製紙による東大
台の伐採を「択伐」としてきたが、近年、歴史研究者川端一弘氏の研究によって範囲、
面積は定かでないにしても「皆伐」であったことが明らかになり、「計画案」も「択
伐」を「皆伐に近いかたちで伐採」に修文された(P.1)。
『梢の博物誌』では柴崎篤洋氏が正木ヶ原から尾鷲辻一帯は皆伐であると詳しく分析
している。遅塚麗水等は『大台ヶ原登山の記』で、スケッチ入りで皆伐の実態を記し
ている。
・つまり、東大台の二次林は四日市製紙の「皆伐に近いかたちで伐採」されたあと、
87年を経て「天然更新」で再生したことになる。

・ところで、「計画案」では、「森林衰退」の原因を、「伊勢湾台風による大量の風
倒木とその搬出」「林冠開放による林床の乾燥」「公園利用者の増加による林床植生
の衰退」「シカの増加」としているが、伐採を「皆伐に近いかたち」とするならば、
当時の状況は「伊勢湾台風による大量の風倒木とその搬出」に似たものであったと考
えられる。「林冠開放による林床の乾燥」も同様で、四日市製紙の伐採も乾燥もたら
したと当然考えられる。その後、「公園利用者の増加による林床植生の衰退」「シカ
の増加」の要因が加わったにせよ、大正時代の伐採は天然更新により再生したにも拘
わらず、伊勢湾台風後には何故再生しなかったのか明らかにされていない。

◆「ミヤコザサ優先地の天然更新が困難」と断定するのは早計
・1986年から18年間行なわれた「トウヒ林保全対策事業(後に植生保全対策事業に改
称)によって、毎年(1994年を除く)防鹿柵が設置されてきた。当初は「囲えばいい
だろう」というだけの猪垣的発想で設置して調査は全くなされなかった。「計画案」
でも「必ずしも長期的な視点にたった総合的な計画のもとに実施されてきたわけでは
ない。」と事業の杜撰さを認めている。(P.34)
・検討会でも指摘されて、今更ながら急いで3ケ所の調査がされた。「計画案」には
「昭和61年以降に設置された設置年代の異なる3つの防鹿柵」とあるが、実際調査さ
れたのは設置後日が浅い平成3、8、13年設置の防鹿柵のデータ(P.41図3−2)だけで、
遷移の経過の調査としては極めて不充分である。
・ところがその調査の結果、「ミヤコザサの優先している個所では防鹿柵の設置のみ
では、森林の天然更新は困難なことを示している。」(P.34)と断定している・そ
の理由として、「林床がミヤコザサに覆われている場合は、他の植物はミヤコザサよ
り高く伸長して成長する個所はほとんどないことがわかった」という。これは、防鹿
柵によって鹿の採食をまぬがれたミヤコザサの成長が他の植物の成長を阻害したわか
りきった話で、「天然更新困難」の根拠としては意味がない。
・また、「計画案」の「自然再生の目標」には「天然更新により」と大目標が掲げら
れているが、僅か数年の経過調査で、ミヤコザサの優先地で「天然更新が困難」であ
ると断定するのは、数十年、数百年単位の自然の遷移を無視し、目標である「天然更
新」を否定し、人工造林に道を開く恣意的断定である。
・ここに詳しくは述べないが、「正木ヶ原」「牛石ヶ原」などの地名に見られるよう
に、大台ヶ原には古来ミヤコザサの草原があったことが、300年前の古文書に見られ
る。ミヤコザサは古来大台ヶ原に生育していたにもかかわらず森林は天然更新してき
たのである。

◆「表層土除去」「地掻き」による「実証実験」は天然更新の否定であり、人工林化
の道を拓くものである。
・7つの植生タイプのうち再生ポテンシャルの「中」「低」の3タイプにおいて「表層
土除去・地掻き・ササ刈り・播種」を行うことは「森林再生機能の再生」どころか成
長生育さえ出来なくする危険性がある。国立自然公園特別保護地区に指定されて、枯
葉一枚枯枝一本の採取も禁じられている場所での修復不能の「表層土除去」「地掻き」
は暴挙であろう。
・「天然更新により後継樹が健全に生育する森林が再生することを」目標にしてこの
実験を行うというが、もしこの実験に“成功”した場合、「20年後」には、ミヤコザ
サ優先地の表層土を広範囲に除去する土木事業を行うというのであろうか。自然再生
推進事業は法案論議の段階から国交、農水、環境三省の予算をつかった巨大公共事業
を推進するのではないかと懸念、反対されてきたが、この荒っぽい実験計画をみると、
その懸念が現実のものになる危険性を強く感じる。言葉としては「順応的な取り組み」
とか「補助的に人の手」とか柔らかな言葉がちりばめられているが、そのためにかえ
って衣の下の鎧を見る思いが強い。「森林更新機能の再生が可能となる環境を整える
きっかけづくりのために補助的に人の手を加えるものであり」と「基本的には自然の
復元力に期待します」は論理的整合性に欠ける。果たしてこの手法をもって、「天然
更新による自然再生」といえるのであろうか。
・「計画案」では、現時点で推定される森林更新の阻害要因としてミヤコザサと鹿を
二大元凶に祭り上げている。恐らく、ミヤコザサの優先がなければ自然が再生すると
前提を立てているのであろうが、ミヤコザサの優先地もまた自然であることを忘れな
いでほしい。この発想は森林総研の論文が根拠と思われるが、林業の見地からして近
視眼的ではないか。森林総研ですら、ミヤコザサの優先地で永遠に遷移がおきないと
は実証していない。ミヤコザサの生育域の拡大をもって「森林衰退」の根拠にするが
如きは、ナンセンスという以外ない。
・将来、大規模人工造林事業を展開するための恣意的実験としか思えない。これが、
原生的な自然環境を保全、維持していくべき場所にふさわしい実験、施策といえるの
か、広く関係学会の学者・研究者、林野庁、林業家などの意見を求めるべきである。
検討会の中に自然再生についての「学識経験者」がほとんどみられないだけに尚更必
要であろう。
                        2004年12月24日  田村 義彦

  ==================================
  
森林生態系部会を傍聴して
 各地の里山の鹿の食害を無条件に大台ヶ原にあてはめて「最大の阻害要因」と脅威
を煽る検討委員の語気の強さにあらためて背筋が寒くなる思いがした。
 環境省の依嘱を受けて専門的な立場から見解を述べることが委員の仕事とはいえ、
人間の思い上がりを感じずにはいられない。大台ケ原の自然再生計画(案)が手順を
踏んで承認されて行っているが、大台ヶ原の自然を積極的に見守る・積極的に利用し
ない・という姿勢ではなく、あらためて土木公共事業であることに気づかされる思い
がして、気分が悪くなった。
                        2004年12月26日  河内由美子


  

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