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大台ケ原>大台ケ原自然再生計画が決まる
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会 提供日付  : 2005/05/07 23:24 登録経由地 : prweb情報受付 01 #01006 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

     難解で特異な「大台ヶ原自然再生推進計画」決まる

     ―― 平成16年度 大台ヶ原自然再生検討会 ――

 2005年1月18日大阪市に於いて、最後の親検討会が開催されて「大台ヶ原自
然再生推進計画(案)」 が承認、決定された。

1)環境を整えるよりも環境を明らかに
 検討内容は、殆どは字句の修正程度であったが、自然再生の著述がある委員
から、「森林生態系保全再生計画が、<常に多くの実生が成育する環境を整え
ることを目的とする>とされているが、<環境を整える>を<環境を明らかに
する>に替えるべきだ」との指摘があった。
 生態系について確かなことがほとんどわかっていない大台ヶ原では、「環境
を整える」より先に「環境を明らかに」することが重要であると私は理解した
が、環境省は時間と空間の問題と理解したようである。将来の展望は勿論、現
状把握も正確にできていないまま事を為そうとする本再生計画の基本的な欠陥
が指摘されたわけで、この指摘をきっかけに議論が進めば、土壇場の今からで
も、軌道修正が図れるのではないかと期待したが、指摘にとどまり議論になら
なかった。

 同委員は前回の会議で仮説がないとを指摘したが、1年経った今に至るも、
データ解析を先送りしてまだ仮説がしっかり書けていない現状を見て諦めたの
か、再度の指摘はなかった。

2)表層土除去よりも盛土で
 かつて「トウヒ林保全対策事業」に関わったことのある大台ヶ原に詳しい委
員から、「実証実験の表層土除去はかなり深く掘られているために雨の時に池
にならないか。リター層(落葉層)、腐食層が剥がされて鉱質土壌が出ている。
大台ヶ原は浸透性が高くない。結果の解析が難しくなるのではないか。昔の播
種実験の経験では、梅雨期に種子が流亡したり、移動したりして失敗した。降
雨の影響の評価を考慮しなければならない。地面を切り下げるよりも、むしろ
上等の土の盛土でもよいのではないか。無理やり掘らなくてもよいのではない
か。また、播種と周辺の母樹からの自然落下との区別をどうつけるのか。細か
く目を配らないと実験にならないかもしれない。」と厳しい批判が出た。
 この実験計画を作ったであろう森林生態系部会座長も環境省も多くを語らな
かった。恐らく「実験」は、掘った穴を埋めることなく、予定通り進められる
のであろう。かつて、トウヒの種子58,000粒を直播したが一本のトウヒも育た
なかった。それを承知でなぜ屋上屋を架すのか。表層土除去実験成功の先には、
表層土を除去して土を入れ替えた大規模造林工事が待っているのであろう。

・林野庁近畿中国森林管理局から気になる発言があった。「大台ヶ原に隣接す
る森林生態系保護地域コアエリアの鹿の頭数制限を考えている。また、現在ト
ウヒの苗を育てているがあと5年位で現地へ返せる。来年から檜を返す。これ
について、2月に環境省と会議をもちたい。」以前から言っているが、造林の
素人の下手な「実験」よりも、造林のプロに教わったほうが確かで早いのでは
ないか。


3)難解で特異な性格
 大台ヶ原自然再生推進計画が決まった段階で重要なことを書かなければなら
ない。
 自然再生推進法成立以前にすでに発足していた「大台ヶ原森林生態系保全対
策検討会」は、自然再生推進法の成立をもって「大台ヶ原自然再生検討会」と
改名、改組された。会議の度に環境省は、検討会は自然再生法に基づくもので
はなく、「直轄の自然再生推進計画調査」だ、と同じ説明を繰返した。
 2003年の7月に至り、その説明が終った。自然再生推進法に移行したという
説明はなかったが、検討
委員たちは既成事実としてそう認識したようで、私もそう受けとめた。しかし、
その認識は間違っていた。大台ヶ原自然再生推進計画は、未だに自然再生推進
法に基いていないし、関係もない。自然再生推進法と同じ言葉を使い、装った
だけである。
 もともと「自然再生事業」は自然再生推進法に基く事業と基かない事業があ
るが、環境省はHPなどでもその違いには全く触れていない。「自然再生事業」
という言葉は明確に定義されないまま世上様々な使われ方をしている。

 自然再生推進法による自然再生事業は、「実施者」の発意により「自然再生
協議会」を組織し、その協議会が「自然再生全体構想」を決定し、次いで「自
然再生事業実施計画」を策定し、「事業を実施」することになっているが、今
回策定された「大台ヶ原自然再生推進計画」はこの流れのどこにも位置してい
ないし、関係もない。

 因みに、大台ヶ原よりも早くスタートした釧路湿原自然再生事業は自然再生
推進法に基いて「自然再生協議会」が組織され、現在「全体構想」をパブコメ
にかける段階まで来ている。後発の大台ヶ原が先に本再生計画を決めてしまっ
たが、勿論性格も内容も全く異なる。サロベツでも現在、自然再生協議会の参
加者募集が行われている。一方、小笠原では今月、大台ヶ原に似た検討会が組
織された。阿蘇も検討会方式のようである。

4)密室性・・・多様な主体の参画と市民の声の担保は?
 本再生計画の植生、利用、鹿の三分野の中で、「協議会」の組織化が予定さ
れていて、一応、「多様な主体の参画」の可能性があると思えるのは、利用対
策分野の「マイカー規制」と「利用調整地区設置」の二つだけで、あとはすべ
て環境省の独自の事業計画である。

 二つの「協議会」にしても、自然再生推進法に基く「自然再生協議会」のよ
うに、一応手を上げた者の参画が担保されるものではない。本計画書に「関係
機関等と調整」すると書かれてあるだけである。「関係機関」と緊張関係にあ
る市民組織や自然保護団体などの参画の可能性は楽観を許さない。確かに本計
画書の「自然再生の基本的な考え方」の総論には「多様な主体の参画」として
「自然保護団体」の文字も見えるが、具体的にそれを保証する手立てがないだ
けに絵に書いた餅になり、ひどい場合は御用NPO等で固めて、行政が独走す
る可能性がある。
 最後の親会議の段階で、「森林再生推進計画」のなかに「多様な主体の参画」
の文字が突然挿入されたが、内容をみると作業ボランティアを求めているに過
ぎない。これは本来の意味での「多様な主体の参画」ではない。
 一方、市民に対して捕殺ネットの所在すら明かさない鹿捕殺計画に市民を参
画させる手立ては勿論書かれていないし、環境省にその意志はないだろう。
 本再生計画の三分野のうち、植生、鹿のニ分野については多様な主体の参画、
市民の声が担保されていない。今後環境省は、本再生計画の殆どの部分を、御
用達の意見を求めることはあっても市民の声に拘束されることなく、自由に従
来通り独走できるわけである。

 本再生計画は自然再生推進法が掲げる民主的なポーズを装いながら、実は、
市民に背を向けてきた従来の行政の姿勢と全く変わらない密室性があることを、
委員として関わって来たいま、改めて認識して愕然としている。
 足掛け4年、延々とやってきた大台ヶ原自然再生検討会では、自然再生推進
法で使用される全く同じ言葉が使われたことで、検討委員の多くが、あたかも
自然再生推進法に基く再生計画を作っているような錯覚、幻想を抱いてしまっ
たようだ。委員だけではない、周辺の関係者も同じであろう。
 ところが実は、検討会は法に基く「自然再生協議会」とは似て非なる、従来
からの行政追認のセレモニーとしての検討会の一つに過ぎなかったのである。
この勘違いが委員を含む関係者の想いに混乱を生じている。

 わかり易い例を一つ示す。環境省は表層土を除去した播種実験を検討会の審
議とは別に、すでに昨年(2004年)6月以来実施してきた。利用対策部会の委員
も昨年末に初めて知って驚いた。この親検討会でも委員から「もうやっている
のか」と確認の質問が出た。検討会がまだ承認していない計画案の内容が、す
でに半年も前から実行されているのは検討会無視であり、普通はあり得ないこ
となので委員は驚いて質問したのであろう。環境省は一瞬言いよどんだが肯定
せざるを得なかった。
 しかし、環境省にとって検討会は参考意見聴取の場に過ぎないのであるから、
検討会の承認以前に事業執行者として事業をしても何ら法にもとることはない
と考えて実施したのであろう。しかし、それでも環境省は、フライングにいさ
さか気がとがめたのか、昨年暮に部会に提出した資料には「先行着手」と書い
ていた。しかしそのあとで、「先行」と断わる必要の無いことに気付いて、こ
の親検討会の資料では「先行」の文字は削除されていた。本再生計画と検討会
の位置付けを的確に示す実例である。

 親会議の最後で、3月末に任期が切れる検討会を今後どうするのか一応議題
になった。環境省は、昨年最後の二つの部会を、「今後実施に移される事業を
フォローアップする体制が必要なので検討する」、と締めくくった。それだけ
に、最後の親会議で何らかの提案があるのかと思っていたが、何もなかった。
 ところが、環境省の考えが定まっていないのを他所に、森林生態系部会座長
から、利用者の環境教育について利用対策部会と協力してやりたいと提案があ
り、利用対策部座長も同意した。しかし、3月末で部会が消滅するのであるか
ら協力のしようがない。(別枠のニホンジカ保護管理検討会だけは本年度最後
の会議を3月に開く予定になっている。)仮に検討会が、自然再生推進法に基
く「自然再生協議会」のような位置付けであれば、両座長の想いは継続するで
あろうが、検討会はそのような位置付けにはない。
 このように本再生計画は、手のこんだ手法によって見事に仕上げられたヌエ
的作品である。行政はよ
くこの手法を使い、市民の判断を狂わせる。

 2001年5月以来、市民の立場からすべての検討会の情報公開を続けてきたレ
ポートをこれで終る。長い間、冗長に過ぎる駄文に付き合って戴いた方々に心
から感謝する。
                     2005年1月19日  田村 義彦


  

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