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大台ケ原>大峰山系環境共生推進計画が環境省直轄に
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会 提供日付  : 2005/06/08 23:07 登録経由地 : prweb情報受付 02 #00028 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

           「大峰山系環境共生推進計画」が環境省直轄事業になる

              <第2回懇話会傍聴記>
                                2005年2月16日
                    大台ヶ原・大峰の自然を守る会 田村 義彦

【国立公園における公園事業の執行について】
 奈良県は2005年2月15日、奈良市において表題の会議を開いた。
 冒頭、議事に先立って、国立公園における公園事業の執行について、所謂「三位一
体改革」について、奈良県、環境省から説明があった。
 昨年(2004年)10月26日に小池百合子環境大臣が、自然公園の整備について、「国
と地方の役割分担を明確にする観点から、国立公園については補助金を廃止して国の
直轄事業を実施する」方針を発表、12月に決定した。これに基づいて「大峰山環境共
生推進計画」は平成17年度(2005年)から環境省の直轄事業として引き継がれること
になった。

 本会は、このHPに掲載した第1回懇話会報告のタイトルを『環境省直轄化を願う』
としたように、従来の奈良県の過剰施設整備体質と環境省が昨年施工した大台ヶ原周
回線歩道整備の姿勢を比較すると格段の差があるため、直轄化を願ってきただけに今
回の方針を評価したい。決して小泉内閣の「三位一体」政策総体を認めるわけではな
いが、仕事をしたがらない官僚の世界で、ひとり環境省官僚だけが今まで地方にやら
せてきた仕事を自ら買って出て、予算獲得のために財務省と交渉した心意気だけは、
どうせ良からぬ思惑が裏にあるのは確かにしても、単純に多としたい。簡単に地方の
時代とか言われているが、特定計画の際にも地方に任せてよいのかと論議されたよう
に、今の段階では県よりまだ国がましだということである。

 かつて、環境庁があまりにも何もしなかったため奈良県がすべてやってきたのは事
実であり、その努力は多としたいが、それがかえって大台大峰は俺らのものだ、とい
う役人の縄張り意識を永年の間に醸成してしまったのは決していいことではない。こ
の会議の説明のなかでも、奈良県は「国は県の事業執行を妨げるものではない」と空
威張りをしたが、環境省から「仕組みとしては県の単独事業ができるが、従来国の補
助なしでやった例はない」といなされてしまった。いままで、「県には金がない、国
でやってほしい」と言ってきたのであるから、県は「直轄事業」を歓迎するのかと思
っていたところ、土壇場にきて縄張りが奪われるとなると、金がないことを棚に上げ
て縄張りを主張するとは、わかりやすい話ではあるが虫が良すぎて、公式の席の論議
としては恥ずかしくないのだろうか。そしてまた、施工業者の選定などを県にやらせ
てほしいともおっしゃる。正直な願望であろう。しかい、昨年、地元の間伐材を使っ
た西大台の防鹿柵の工事を環境省が業者選定をして施工している。国に態勢ができれ
ば当然国が簡単にやることであるが、「その態勢ができるまで当分は奈良県に対する
「施工委任」のかたちでいくことになるであろう」と環境省は結論づけた。

 「国のことは国がやれ」ということになれば、まさに大台ヶ原は国の土地である。
ビジターセンターに常駐の職員を置くか、奈良支所から職員が詰めてもらいたい。思
い切って奈良支所が引っ越しては如何であろうか。そして、奈良県は本州製紙に寄付
させた集団施設地区を、この際環境省に寄付してはどうだろう、いい機会だと思うが。

 環境省は本計画を尊重するとしているが、決して予算が潤沢にあるわけではない。
倍の予算がいるわけだが、事業規模を半分に削ればすむことであろう。その可能性は
十分にある。やる必要のないところはやらなければよいのだ。本会としては、大台ヶ
原で環境省が95%認めた市民、登山者の感覚、発想を完全に拒否する奈良県にはこれ
以上手を出してほしくない。

【奥駈道は保護・現状維持を基本とし、補修以外の整備をしない】
議事(1)第1回懇話会の課題の整理と大峰山系の現状の再認識(資料1・2)
 第1回懇話会の意見の反映として二つの重要な方針転換が報告された。
  1.奥駈道は保護・現状維持を基本とする
  2.トイレ新設は山上ヶ岳の予定を取り止め弥山だけとする

【「修験道の行者さんや講の方々は懇話会に対する不安が大きい」】
 修験道代表の委員から「前回の懇話会のあと、多くの方々の意見が寄せられた。奥
駈道が石畳になるのではないか、靡きごとにトイレが作られるのではないか、といっ
た過剰整備について懇話会に対する不安が大きい」と発言があった。私たちの不安と
全く同じである。
 一応奈良県が方針転換をして、奥駈道は「現状の保存を基本とし、補修以外の目的
の整備は実施しない」としたが、油断できないのが「補修」の整備である。従来の過
剰整備のほとんどが「補修」の名目で行われた。実は、このHPにも何度も書いたが、
奥駈道は前鬼〜釈迦ヶ岳、弥山〜聖宝宿跡、大普賢岳〜和佐又山、稲村ヶ岳〜レンゲ
辻など既に過剰施設整備が終わっている。今後、環境省の直轄事業になれば少しは安
心できるかもしれないが、それにしても、注意深く監視をしなければならないことは
確かだ。たとえば資料2に自然歩道が踏圧や流水・植生の繁茂・台風、豪雨による影
響を受けた登山道の写真が載っていて、このように荒れているから整備が必要だとい
いたいのであろうが、既に改修過剰整備の済んだ写真がどれほどひどいものか委員に
見てもらいたいものだ。

 同委員から小笹宿は歴史的に重要な行場なので誘導板を兼ねた案内板がほしいとい
う適切な提言があった。あの雰囲気を阻害しない材質、大きさ、デザインなどの配慮
がほしい。
 他の委員から、現状認識のためのデータが不足しているとの指摘だあったが、奈良
県はデータ収集には時間と金が要る、と説明した。お題目を掲げながら中身はなく、
「初めに整備ありき」と突っ走るのが行政のいつものパターンである。

【山岳トイレ新設は弥山だけ、なぜ山上ヶ岳をはぶいたのか】
議事(2)整備基本計画の確認及び整備計画の検討(資料3・4)
 環境省から、山岳トイレは維持管理が難しいので地元の協力が得られない場合は作
らない、と説明があった。 弥山については、土壌浄化循環方式では電源と広い土地
がネックになって難しいので、貯留方式にして小型モノレールでの搬出が適当ではな
いかとの説明があったが、今後,詳細検討を行うことになった。山岳トイレは難しい
が、この検討をどこで誰がやるのだろう。

 奈良県は、前回の懇話会でリストアップされていた山上ヶ岳を今回リストから消し
た理由を、「現在の仮設トイレ周辺が史跡に指定されていて関係方面の協力が難しい
ので断念した。清浄橋で用をたせるのだから上には要らないのではないか」と説明し
たが、修験道代表の委員から「200m離れている宿坊のトイレを使えというのは無理
だ。前向きに考えてほしい。」天川村長から「山上には電気が入ったので合併浄化槽
も設置できる。管理面が楽になった。」と発言があった。座長は、「懇話会は最終案
を作るのではないので、優先順位をつける位に止めては」と逃げた。年間9万人の登
山者が登る山上ヶ岳と弥山を同一視するのはナンセンスである。山上ヶ岳はいまや洞
川の観光地の範囲に入れて考えるのが現実的であろう。

 「自然では個人の糞便であれば昆虫や細菌などが処理してくれるが、集めると処理
不能になり環境汚染になる」、という発言に対して、自動車から降りて近くで排便す
れば大変なことになると反論があったが、状況をわきまえない文字通りの「味噌糞論
議」「屁理屈」に、聞いていて呆れた。また、トイレは当然有料にすべきであるが、
懇話会では何故か全く議論にならなかった。次回懇話会ではぜひ論議してもらいたい。

 修験道代表の委員から、「人の入らない行場の鎖が傷んでいるところがあるが、危
険であることの指導を地元自治体でしてほしい」との要望があった。

【アプローチルートと登山基地について・・・慎重な検討が必要である】
◆仏生ヶ岳アプローチと登山基地
 委員から「トイレを作れば人が集まる。仏生ヶ岳の登山基地は要るのか」と発言が
あった。
 仏生ヶ岳アプローチルートは、そこに至る危険極まりない白川又林道の安全性、維
持管理が前提になる。数年前、落石で死亡事故が発生して長く封鎖されていたが、落
石による自動車の通行不能は日常茶飯事の林道である。この林道の維持管理・安全性
は担保されているのか。その担保なしにアプローチルートを作っても機能しないだけ
でなく事故につながる危険性がある。林道走行中の落石事故、林道に車を置いて仏生
ヶ岳を往復した帰り、林道が落石で封鎖されている可能性も高い。
 上北山村はエコツアールートとして計画していると聞く。林道の管理は上北山村森
林組合であるが、巨額の費用が継続的に必要になるであろう。懇話会には何故か上北
山村が招かれていないが、村の構想をしっかり確認して、県、国としてバックアップ
体制を検討すべきであろう。単に登山道を作るだけでは無責任である。

◆行者還トンネル西口登山基地
 同様の危険性は行者還トンネル西口の登山基地にもいえる。周知のごとく行者還林
道の上北山側は砂上の楼閣で雨のたびに崩れて、しばしば通行止になっている。天川
側も川迫川の増水で橋が落ち、路面が洗われ、崖が崩れている。
 元来ここはマイカー登山者の路肩駐車に始まり、マイカー族の自己責任で勝手に駐
車してきたところである。ところが、ここに公的な「登山基地」が出来たと知れば、
“マイカー観光登山ブーム”のご時世だけに安易な観光客が押しかけるのは明らかで
ある。野営場に家族連れのキャンパーが集まり、ゴミの山になるであろう。委員から
も「行者還トンネルの野営地の管理が出来るのか」という発言があった。
 県は地元の要望だというが、天川村には増築された行者還避難小屋の管理もある。
安全面、防災面、自然保護の観点から責任を持った管理運営ができるのだろうか。管
理運営の体制なしに施設を作ることは自然破壊に荷担する無責任な行為である。むし
ろ、川合か洞川で奈良交通の路線バスに接続する村営送迎マイクロバスをトンネル入
口まで運行する方が村財政にとって有効ではないか。

◆栃尾辻の「登山基地」の図面が資料にないが、すでに登山口の川合にあるのだから
 必要ない。
◆旭釈迦ヶ岳線の「登山基地」
 宇無ノ川不動小屋谷の「登山基地」は正に「マイカー登山族」に迎合した過剰施設
である。いま、この国の自然を破壊しているのは「マイカー登山族」の安易な登山姿
勢である。行政が税金を使って迎合する必要など更々ない。車が傍にあるのに、何故
「降雨時の浸水対策として高床」が要るのか。トイレだけにして、上屋は全く不必要
だ。これは、奈良県が都市公園で培った得意のノウハウの発揮である。自然公園に都
市公園の感覚と経験を持ち込んで、自然破壊をされては困るのだ。

◆七面山アプローチルート
 奥駈道から七面山まで短いアプローチルートを整備するというが、整備の目的・意
味がわからない。近年の“マイカー登山”ブームで船ノ川、宇無ノ川の林道に車を置
いて七面山を往復する登山者が出てきたが、その登山者にはこのアプローチルートは
要らない。七面山は大峰山系最奥の地味なピークであり、山馴れた登山者の山域であ
る。また、修験道の修行のためにも必要ないであろう。もし、登山者のために、奥駈
道からの「七面山往復ルート」を新たに開発するつもりであるとすれば、奥駈道の自
然性、神聖性を保全するために余計なことをする必要はないと言わざるを得ない。

◆上記以外に8本のアプローチルートがある。
 奈良県が「大きな予算が付いたからこの際全部やっておこう」と地元の希望を集め
たのであろう。殆どが既存のルートであるが、問題はその改修の思想と技術である。
個々の状況がかなり異なるので現状分析と改修のやりかたについて慎重で綿密な検討
が必要である。環境省の直轄事業になったのは幸いであるが、奈良県の施工委任にな
れば奈良県の思想と技術も大きく発揮されるわけであるから大いに心配である。それ
をどうチエックするのか、例えば大台ヶ原で行われたような現地説明会を開いて登山
団体や自然保護団体の意見を聴取するのか、現地が無理なら、奈良か大阪で設計図を
公開して市民の意見を聴取するのか、設計施工段階での市民意見の反映をどう担保す
るのか、次回懇話会でしっかり論議してもらいたい。

【第1回懇話会で公開を拒否した整備計画がなぜ公開されたのか】
 前回の懇話会レポートでも書いたように、奈良県が「計画が一人歩きするから」と
頑なに公開を拒否した整備計画が何故か今回公開された。理由の説明は一言もなかっ
た。こういう場合、当然行政に説明責任があるにも拘わらず平然としている無責任さ
には言葉がない。

【奈良県HP掲載の「議事要旨」はなぜ訂正されないのか】
 第1回懇話会の[議事要旨]が翌日2004年12月8日に各委員に送られてきたが、その中
で二人の委員の発言が歪められていたので事務局に訂正を求め、このHPにも書いた。
しかし、それ以後訂正した旨の回答はなかったが、この日配布された「議事要旨」は、
テープ起こしをしたのか、本会の指摘通りになっていた。
 しかし、奈良県庁の公式HP掲載の「議事要旨」は2005年2月16日現在、間違った
ままである。対外的にはこれが正式の「議事要旨」である。委員の名前も記されてい
る。杜撰なのか故意の改ざんなのか、いずれにしても信じがたい出来事である。奈良
県のHPは早急に訂正されるべきである。

【奥駈道の自然性・神聖性保護のための世界遺産登録】
 ユネスコは奥駈道を、特有な自然環境に根ざした信仰に関わる自然性が高い神聖性
を評価して、その保護管理を求めているのである。しかし、そのための保全プロジェ
クトがない日本は登録をあせって申請書類から「文化的景観」の文言を削って、あと
で適切な保護提出管理計画を提出するという条件でなんとか登録が許されたといわれ
ている。その保護管理計画を2006年度末までに提出しなければならないので、現在和
歌山、三重、奈良の3県で作成中と聞く。これ以外にも世界文化遺産登録の条件を満
たしていない内容については多くの問題点が指摘されているが、それについては他の
機会にゆずるとして、ここで一つだけ指摘しておきたいことがある。

 今回の登録は『紀伊山地の霊場と参詣道』という表題で登録された。構成は「吉野
・大峰」「熊野三山」「高野山」の『霊場』と、それらを結ぶ『参詣道』に分けられ、
『参詣道』は熊野参詣道、高野山長石道と並んで大峰奥駈道が登録された。

 これはおかしい。大峰奥駈道は古来修験道の『霊場』である。日本が提出した申請
書が元々参詣道であったのかユネスコがそう判断したのか知る由もないが、申請書が
参詣道であったとすれば関係者の認識不足が問われるべきである。修験道の歴史を詳
述するまでもなく、大峰奥駈道は霊場をつなぐ参詣道ではなく、それ自体が『霊場』
である。登録された『霊場』は17の寺社であるが、そのどれと比較しても奥駈道は優
るとも劣らない立派な『霊場』である。国内法でも重要文化財、史跡、天然記念物に
指定されているが17社寺はすべて及ばない。一方、観光客が押しかけている熊野参詣
道、高野山長石道と同列に見るのも間違っている。ユネスコに提出する保護管理計画
も奥駈道は霊場であるという認識に立って、有効な保全策を作成するように奈良県に
望みたい。

 2004年7月23日、「世界遺産登録記念祝賀式典」で、柿本奈良県知事は「これで多
くの観光客が来てくれるであろう」と臆面もなく挨拶する姿をテレビで見た。メデイ
アも「算盤勘定」を書くだけで「遺産の保護」に触れたところはなかったが、ユネス
コの文書のどこにも「金儲けしろ」とは書いていない。ユネスコが評価したのは、自
然性と神聖性であり、世界遺産登録の目的は保護管理であることをしっかり認識しな
ければならない。
                                    以上



  

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