大台ケ原>西大台の防鹿柵は本当に必要なのか
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会
提供日付 : 2005/08/26 23:54
登録経由地 : prweb情報受付 02 #00241
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西大台の防鹿柵は本当に必要なのか 《I》
西大台に防鹿柵は要るのか、という疑問が断ち難く、河内さんを煩わして、まず、
2003年に経ヶ峰の南に設置された防鹿柵を観察に行った。
位置は、西大台最深部のワサビ谷と高野谷の源流部に位置する標高1470m前後の
台地状の尾根の上に広く設置されていた。山上台地に30数箇所ある防鹿柵のなかで、
最大級の広大なものである。2003年度には、都合8ヶ所設置されて、「合計の設置
面積16.48ha、設置延長5190m、工事費1億8700万円」と公表されているだけで個
々のデータはわからないが、翌2004年に七つ池に設置された防鹿柵が、「設置面積
4.06ha、設置延長1286m、工事費5021万円」であることと比較すれば、こちらの方
が大きいので多分6千万円はかかったのではないか。道路公団の副総裁が税金を無
駄遣いして逮捕された金額は5千万円である。
地図上の計測で、延長概算1400mと思われる防鹿柵に沿って一周して観察した。
柵の内外には、ブナ、ミズナラ、ヒノキ、トウヒ、ウラジロモミなどの巨木が林立
する見事な原生的自然であった。林床にはミヤマシキミが地表を覆い、スズタケの
姿はなかった。大台教会の田垣内氏は「ここはもともとスズタケの少い場所だ」と
言う。鹿の剥皮痕が針葉樹の数本に見られたが、すべて瘢痕形成をした古いもので
あった。鹿の糞が柵外の斜面で僅かに見つかっただけで、鹿道も、姿も、声も、な
かった。
大台ヶ原自然再生推進計画では、7つの植生タイプに分けているが、何故かその
場所が明示されていないので想像するしかないが、多分この場所は「VII ブナース
ズタケ疎」に対応する場所ではないかと思われる。そして、その場所の「考えられ
る阻害要因」は「シカによる実生の採食、成木(母樹)の剥皮」だとして、「防鹿
柵設置の目的」を「シカによる実生および成木(母樹)の樹皮の採食を防ぐ」ため
だとしている。
私達が見る限り「成木(母樹)の剥皮」はほとんどない。「鹿の剥皮を防がなけ
ればならない」根拠になる確かなデータはあるのか。また、「シカによる実生の採
食」を立証するデータはあるのか。
環境省の鹿生息密度調査では、防鹿柵は4つのメッシュの交点に位置するが、そ
のデータはそれぞれ、0.4頭、0.5頭、2.9頭、4.7頭で、平均2.1頭。1平方キロに
鹿は、2頭しかいないのである。林床の広い範囲がミヤマシキミに覆われ、ミヤコ
ザサが生育していないこの場所に、果たして鹿が餌を求めてやって来るのだろうか。
「成木樹皮」は鹿の主食ではない。
昨年のニホンジカ保護管理検討会で、「西大台はスズタケの枯死で餌不足になっ
て、東大台の密度が増えている。」としたり顔でこじつけられたが、それなら、西
大台の防鹿柵は要らないはずだ。また一方では、「東大台に設置された防鹿柵によ
って鹿は西大台に逃げて来るから予防措置だ」とも言う。一体どちらが本当なのだ。
科学的に確かなことがわからないまま、巨額の税金を遣っていい加減なことをしな
いでもらいたい。なぜ、自然の摂理にゆだねることができないのか。
登山道から遠く離れ、ドライブウエーに近いにも拘わらず何故か車の音が全く聞
こえず、つい声をひそめて話してしまうような静寂に包まれた原生的自然は、正に
近い将来「利用調整地区」の指定を受けるにふさわしい場所である。その場所に、
グロテスクな人工物があることで、指定の阻害要因になりはしないだろうか。また、
利用調整地区に指定されたあかつきには、原生的自然を損なうこの人工物は撤去さ
れて然るべきだ。
ドライブウエーの近くで、植物の盗掘跡らしきものと、斧で削って昆虫の幼虫を
取り出した古木を見た。原生的自然の中で防鹿柵同様、人間の身勝手さを見る思い
がした。
2005年7月31日 田村 義彦
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