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大台ケ原>“安全信仰論”で混乱した現地検討会
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会 提供日付  : 2005/09/02 23:43 登録経由地 : prweb情報受付 02 #00261 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

         “安全信仰論”で混乱した現地検討会

       ―― 国と地方の役割の明確化を望む ――

 環境省は2005年8月10日・11日の両日に大台ヶ原の筏場と大峰山系の前鬼で現地
検討会を開催した。多忙な来住弘之さんに無理をお願いして筏場に参加することが
できた。

(1)筏場 2005年8月10日
【環境省の整備方針と整備区間】
 歩道整備の対象地は大台ヶ原筏場線、いわゆる筏場道の登山道入口から釜ノ公谷
出合までの約4km、歩いて片道約1時間の第3種特別地域である。
 検討会冒頭、環境省近畿地区自然保護事務所岩田施設科長から「環境省はこの歩
道を中・上級者向きの登山道と規定して、崩壊したため通過が困難な個所において、
必要最低限度の整備を行う」と整備方針が述べられた。

 環境省は参加予定者に対して、設計図面・現場写真などを事前に送った。現地検
討会(説明会)は都合6回開催されたが、資料が事前に配布されたのは今回初めて
のことであり、参加者には事前に検討する時間が与えられて有意義であった。また、
環境省近畿地区自然保護事務所のHPに公開されて、一般市民の参加が呼び掛けら
れたのも初めてであった。前鬼で1名の一般参加があった。

【奈良県の“実力行使”】
 ところがここで、全く予期せざる事態が生じた。
 奈良県が県の原案の配布を突然環境省に求め、突然のことに当惑する環境省を他
所に、強引に資料を配布した。何故、この様な事態に至ったかには理由があった。
 今春、環境省・奈良県・上北山村・設計業者四者で現地調査を行い、奈良県は14
箇所の整備要求を環境省に上げた。環境省はそれを審査して4箇所に絞った。そし
てその4箇所について環境省は現地検討会を設定したのである。

 ところが、4箇所に減らされた奈良県は不満に思って、奈良県原案も検討してく
れと、抜き打ちの実力行使に出たのである。しかし、これは不当な行為である。環
境省の決定に不満であれば、事前に環境省に対して復活交渉を事務レベルで行うべ
きであって、現場に来て、事情を知らない参加者(自然保護団体、山岳会、研究者)
の前で行うべきことではない。

 検討会は、まず、釜ノ公谷出合まで登って、帰路に個々の整備個所について説明
が行われ、意見を述べる形で行われたが、それとは別に、この行政の不一致につい
て何度も激しい議論が交わされた。

【関係者の考え】
〇 北村林業・・・この歩道は北村林業の所有地である。1960年代は林業従事者の
 通い道として、単で走れるように一部コンクリート舗装が行われた跡が残ってい
 るが、近年の林業不振で利用頻   度は減っている。この度の歩道整備について
 も間伐材の使用など協力的であるが、それ以上の強   い 要望は出ていないと
 のことである。
〇 川上村・・・途中の五色湯跡まで村主催の自然観察会を行っているので歩道整
 備を歓迎するが、五色湯跡から奥については要望はない。県の14箇所についても
 村の要望は入っていない。村の観光案内図に三之公谷と並んでこの谷も案内され
 ているが、三之公のようにトイレ、ベンチを設置する考えはない。
〇 奈良県・・・この歩道の道路管理者であるので、事故が起きないように、安全
 な施設整備を望む。
 三位一体改革に伴う国と県の役割について環境省近畿地区自然保護事務所は県に
対して役割をまだ明確にしていないようである。そのために、奈良県の実力行使は
その間隙を突かれたともいえる。一方県は、施行委任返上をほのめかしながらも、
工事量の増加を強く要求して本音が窺い知れない。直轄事業を返上する自治体もあ
れば、誘致に手を上げるところも出るであろう。国立公園は国がやれと言う自治体
と地域の財産と考えて熱意をもってやる自治体に二極分化が進むのではないか。
 大台ヶ原については、従来永い間、環境省(庁)が奈良県に任せっきりできたの
は事実である。その間の奈良県の努力、功績を決して否定するものではない。県は
大峰・大台に愛着を持っているであろう。しかし、県が市民の意見を排してやって
きたために過剰整備になっているのもまた事実である。しかし、既成施設の移管が
できず、維持管理に県が予算を組まなければ荒廃することは目に見えている。今後
は、国が全責任を持つのが基本だと考えるが、問題の根が深く、将来展望も方向性
が問われているだけに楽観できない。この際県は、不細工な実力行使は止めて、国
と地方の役割について本音で詰めてもらいたい。大台・大峰の原生的自然が保全さ
れるか、それとも三位一体改革で荒廃するのか、いま岐路に立たされている。

【整備内容・・「崩壊もしていない、通過困難でもない個所」を何故整備するのか】
 環境省の4案のうち、一番奥の釜ノ公谷出合手前の張出歩道(4号地)については
参加者は全員が賛成した。増水で崩落した石積み・・・100年前の土倉古道の修復
について私ひとりコンクリートの使用に反対したが多勢に無勢であった。
 そのやや下流の歩道が一部崩落した地点(3号地)に溝型鋼橋を設置する計画に
ついて、多くの参加者から、すでに捲き道ができているので橋は要らないのではな
いかとの意見が出て、現状のままで様子をみることになった。県は設置を強く求め
たが、村が山人の素朴な感性から不要論を唱え論議を導いたのが対照的で、強く印
象に残った。
 後程、前鬼のところで書くが、当然強い整備要求を出すであろうと予想した地元
が橋は要らないと言い、過剰整備に反対すると予想した修験道の行者さんが最大限
の整備を要求したり、既成概念というか先入観が見事に粉砕されたのがこの度の現
地検討会であった。やはり、立場の違う人が集まって、利害を抜きに率直に話し合
うことは必要である。その意味で、この度はいささか混乱したが、今後も現地検討
会を継続してもらいたい。そのためには、国の整備方針の説明と、合意形成を図る
ために市民の意見を徴するのが目的で、多数決ではなく国が責任と権限をもって最
終決定をする、という原則と性格を事前に説明すべきであろう。

 屏風滝のすぐ上流で幅、高さ共30m位の岩盤の大崩落が起きて、歩道が壊れてい
た(1号地)。雑練石積工で整備されることになった。
 尾根の上に立っていた大木が台風であふられて、根が食い込んでいた岩盤を破壊
したのではないか、と見られた。家位の大きさの巨岩が谷の真中に落ちていた。大
杉谷を壊滅的に破壊した昨年の台風のすさまじさに圧倒された。

【安全至上主義の登山団体】
 2号地は現時点では不用だと思ったが「やがて崩れる」という“登山団体”の意
見で施行されることになった。山道はすべて「やがて崩れる」。「やがて崩れる」
ので整備するのであれば、この登山道を下から上まですべてを整備しろ、と叫んで
しまった。

 環境省は整備方針に、「中・上級者向きの登山道」と規定して、「崩壊したため
通過困難な個所」と明記している。「崩壊もしていないし、通過困難でもない個所」
を何故整備するのか。しかもその
整備を求めたのが“登山団体”であることには唖然とした。最近の登山はかくも安
全至上主義に堕落したのか。整備で安全が確保された登山道を登るのは既に登山で
はない。このような過剰整備は税金の無駄使いでしかないが、こともあろうに、何
故“登山団体”が荷担するのか。

 また、「最近中高年の沢登りが増えたのでそちらの整備もしてほしい」との発言
があったので、「冗談じゃない」と声を荒げてしまった。中高年の登山者が稜線に
飽きたのか、最近沢に入るのが増えたのは事実で、沢登りを専門とするグループが
遭難多発を心配していると聞いていた。かつて山に登山道がなかった時代に、沢を
詰めて頂きに立ったのは日本固有の登山形態であったが、強烈な体力とルートを選
ぶ感性と経験が必要であり、カネとヒマをもてあます定年退職者には遭難必至の愚
行である。その連中のために税金を使って何をせよと言うのか!冗談じゃない!
(因みにこの登山団体は日本最古の山岳会であり、私は恥ずかしながら43年間在籍
している。そして現地検討会に誘ったのは誰あろう、私自身である。慙愧の念に堪
えない。)

 このあたりから国の計画と県の復活要望案が交錯して、県の説明を聞く意欲を失
った。14箇所を改めてどう決定するかは、環境省が持ちかえって検討する。従来の
現地説明会では、環境省はほとんど現地で決定を下した。例え反対意見で計画を取
止め、変更になる場合でも、環境省は現地で即座に決定を下した。しかし、この度
はそれができなかった。一旦却下した県の10案の復活を現地で認めることなどでき
るはずがない。かくも混乱した現地検討会は初めてあり、その原因は県の強引で不
当な実力行使にある。環境省の毅然とした決定を期待する。

【想像を絶した本沢川の変貌】
 昨年の連続した台風は上流から膨大な量の土砂を運んで谷を埋め、水が姿を消し
ていた。一変した谷の姿に呆然とした。五色湯跡では、いままで歩道からでもかす
かな硫黄の臭いがしたが、土砂で埋められて臭いはしなかった。やがて流水は長い
時間をかけて砂利を更に下流に押し流すであろうが、それまでにどれほどの時間が
かかるのであろうか。

(2) 前鬼  2005年8月11日
 筏場の翌日、前鬼で現地検討会が開催された。河内由美子さんに無理をお願いし
て、4時起きで長躯前鬼に9時に入った。

【環境省の整備方針と整備区間】
 整備区間は前鬼の小仲坊から三重滝まで往復4時間の歩道である。環境省は、行
者さんと、中・上級の登山者を対象にした歩道と規定し、特別保護地区であるから
「自然環境・安全確保を配慮した必要最小限度の整備」を行う、とした。

【行者さんへの呼び掛けと意外な発言】
 実は、この検討会に修験道の行者さんの参加を求めることを私は環境省に進言し、
3名の行者さんが参加して戴けた。行者さんに来て戴いたのには理由がある。昨年、
行者さんから本会の資料(『修験道と登山を冒涜する奥駈道整備』)を送るように
とのメールを戴き、本会の考え方を論議して戴いて、同感だ、とのご返事を戴いて
いた。また、昨年奈良県が設置した「大峰山系環境共生推進計画懇話会」委員の修
験道代表の住職から「行者のなかに奥駈道の過剰整備を心配する声がある」と率直
な発言があった。私は事前に環境省に対して「この度の整備ルートは行場である。
行者さんたちが過剰整備を要求するはずがない。行者さんたちの意見を尊重してほ
しい。自然保護団体、登山者としての発言を控える。」と進言していたのである。

 ところが、冒頭の挨拶で、行者さんの代表から、環境省の方針「必要最小限度の
整備を行う」を受けて、「最大限の整備を行ってほしい」と発言があった。険しい
山道を歩く困難があるからこそ修行なのだと考えていただけに驚いた。私は洒落と
理解した旨発言したが、洒落ではなく本心であると再発言があった。
 今更言うまでもなく、私は勿論、あらゆる整備に反対しているのではない。過剰
整備に反対しているのである。また行者さんも、安全至上主義で過剰整備を求めて
いるのではない、そこそこの整備を求めているのだと私は信じたい。

【下北山村の大量動員】
 一方、県の呼び掛けを受けたのか、下北山村関係者の10名近い大量参加があった。
村は、世界遺産登録をうけて前鬼の観光ツアーを計画しているとのことなので、こ
の度の整備に期待した組織増員であろう。 世界遺産登録は保全が目的である。と
ころが日本では金儲けと受け止めている。特別保護地区のなかに観光客の「安全確
保」のために歩道を過剰整備することは許されない。村も観光客誘致を理由にしに
くかったのか遭難者搬出を理由にしたようであるが、山岳地帯では遭難は不可避で
あり、当然自己責任であるが、地元自治体の責任も不可避である。昔のような善意
に基づく出動の時代は過ぎた。すでに各地で実施されている冷静な対策を講ずべき
であろう。そして、遭難を云々する前に、まず遭難の可能性のある場所に観光客を
誘致すべきではない。頻度の低い登山者の遭難対策論議はその後のことであろう。
 このコースの入り口に必要最小限度の内容の、小さな警告板が必要である。大き
な看板に多くの情報を書いても人は読まない。

【奈良県の再度の不当な実力行使】
 驚いたことに奈良県は前日の筏場に続いて、再度、資料配布を強行した。筏場で
その不当性を私は指摘し、奈良県は認めておきながらの再度の資料配布に私は怒り
を覚えた。現場の論議も混乱したようである。現地検討会終了時にその不当さを非
難した。これでは、法律に基づいて業を為す立場の役人の所業とは到底思えない。
復活折衝については行政の手続きに基づいた手段があるはずである。どこかの政党
か組合のように村に動員をかけたり、現地検討会を復活折衝の場に利用したり、市
民の前で展開したこの醜態は、自己の目的達成のために手段を選ばず、現地検討会
の崇高な目的をゆがめる暴挙と言わざるを得ない。

【整備内容・・・誰でもが行けるコースではない】
 検討会は三重滝まで行って、帰路説明する形で行われた。ところが、行程の途中
で私の肺気腫が悪化し、持参した酸素2本を使い切ったので引き返した。以下、河
内由美子さんにレポートして戴く。

 当地を始めて訪れたのは二十歳そこそこでしたので、岸壁を登るのに下から押し
上げてもらわなければならなかったコリトリ場の行場と、北俣川を遡行の真似事を
しながら清流の冷たさに悲鳴を上げたことなど、断片的な記憶しかありませんでし
た。26年前に感じた水の冷たさを、時季は同じでも今回は全く感じませんでした。
険路・悪路ということは承知のコースでしたので、県が昭和58年に改修する前のこ
とで、桟橋が老朽化していたことは覚えていますが、あるがままを受け入れて歩き、
当然のことながら登山道の整備について何か思い巡らしながら歩いた記憶はありま
せんでした。

 この中上級者コースは大勢のツアーや熟知した先達なしで巡ったり、地図の読み
取りが出来ないハイカーが巡るコースではないと、私なりに再確認しました。もと
もと大峰は、油断できない危険な山です。だからこそ役の行者が開山して近年まで、
その姿を変えることなく伝えられて、守るべき世界遺産として登録されたのでしょ
う。現地説明会の中で、「誰にでも来られるように整備してほしい」「誰もが迷わ
ないよう案内板を立ててほしい」という意見を何度も耳にしながら、認識の差を感
じました。毎年のように起こる遭難対策のご苦労を承知で言わせてもらえば、「人
に優しい登山道」等という考えはそれこそ遭難に手を貸すようなもので、「人に厳
しい登山道」、だから覚悟してかかるようにという周知こそが必要だと思いました。

 具体的な整備についてですが、環境省が配布した資料の1号地、コリトリ場への
下り:渓流部斜面で崩壊消失した桟橋箇所は、今後も崩壊が続くと予想されるので
地盤が落ち着くまで桟橋工事はせず、路線変更とそれに伴う鎖の整備をするという
整備内容に対して、参加者から「コース取りがおかしい」と少し上部の足場の良い
コースを使い途切れた桟橋部に取り付くという案がでました。地元から環境省のコ
ース取りでは遭難者を担架で運び上げられない、一刻一秒を争う、という声があり
ました。

 2号地:三重滝降口の岸壁地で老朽化した桟橋設置箇所での鉄梯子の整備につい
ては、鉄の棒を2本渡した横板では滑るので木材ではどうか、という意見が出まし
た。焼付け程度の防腐加工しか許されない木材では耐久年数がそれ程長くないこと、
又行者さんからは丸太も滑るので、滑らない仕様を施してほしいと意見がありまし
た。かなりの急傾斜地、補修改修が容易ではない箇所だけに、ここは出来るだけ耐
久性の良いものを使用した方がいいように思いました。鉄の棒を渡した梯子では、
足元が透けて恐怖感があるのでは、という声もありましたが愚論だと思います。

 三重滝に着き小休止をとっていると県担当者が配布した資料を基に、県職員と参
加者一部で改修について先に話が進み始め、驚きました。県のやり方は本当にフェ
アーではない、幻滅しました。その後も環境省案にはない案内表示板や巻き道の改
修、踏み跡程度でいいとする環境省の案に路面が濡れると絶対滑る・怪我をしたら
誰が責任をとるのかという地元の意見まででました。山での責任のなすり付けほど
醜いものはありません。過去の悪い事例を作ってしまったのも登山者でしょう。情
けないなあ・と思いました。

 先にも書きましたが、このコースは誰でもが行けるコースではない・という共通
認識をもつべきでしょう。自然林の大規模伐採を食い止める為、保護と保全を目的
に平成3年に1億円の国費で買い上げた宝ですから、出来るだけあるがままの姿であ
ってほしいと願わずにはいられません。

            2005年8月13日     河内 由美子  田村 義彦



  

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