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GEN>黄土350>龍山
情報提供者 : 緑の地球ネットワーク 提供日付  : 2006/03/17 23:53 登録経由地 : prweb情報受付 02 #00843 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

  中国山西省大同市の黄土高原の農村での緑化協力活動のなかでの体験を
 書きつづっています。不定期の発行です。
 バックナンバーを緑の地球ネットワークのWebページにおいています。

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  黄土高原だより(NO.350)
     (2006.03.17)
            高見 邦雄(緑の地球ネットワーク事務局長)

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   龍山

 緑の地球ネットワークが、最初に緑化協力をはじめたのは、渾源県です。
 1992年1月のことですから、すでに15年目にはいっています。
 渾源の県城(県の中心、県政府所在地)のすぐ南を、
 東西に走る、恒山山脈がふさいでいます。
 県城をふくむ盆地の標高は約1000m、
 稜線の標高は2000mほど。
 県城からみえる山脈の北面は、断層崖になっており、
 高さ1000mの、ほぼ垂直の壁です。

 恒山の主峰は、県城の真南にあります。
 標高2016.8m。
 北岳恒山と呼ばれ、中国五岳の1つで、道教の聖山として、有名です。
 残りの4山は、
 東岳・泰山(山東省)
 南岳・衡山(湖南省)
 西岳・華山(陝西省)
 中岳・崇山(河南省)。
 この恒山にも、たくさんの見所と、伝説があり、
 中国の全土からだけでなく、
 華僑・華人を中心に、海外からも、
 年間数十万人の、参拝客、観光客が訪れます。

 恒山主峰のことは、べつの機会にゆずることにして、
 今回は、主峰から10kmほど南西の、龍山の話です。
 1994年の夏、立花吉茂先生を団長に、
 日本から初の、専門家の代表団が、大同を訪れることになりました。
 この土地のことを、できるだけ理解してもらい、
 環境に適した、戦略を立ててもらうのが、目的でしたから、
 できるだけ、植生の残っているところを、みてもらいたかったのです。

 地元が選んだのが、この龍山でした。
 地図でみると、県城のすぐ西の、荊庄郷から遠くありません。
 それなのに、成立したばかりの、大同事務所のメンバーは、
 頭をかかえています。
 地元の地図に、等高線はありませんから、
 すぐ近くにみえるんですけど、
 じつは荊庄郷から、龍山までは、
 ほぼ1000mの、垂直の壁が、さえぎっています。
 踏み分け道はあり、地元の人は、上り下りしているようですが、
 日本人だと、安全に問題があるし、どれだけ時間がかかるか、わからないそう。

 大きく、南に迂回すれば、なんとか車の通れる、山道があるそうです。
 まずは1994年7月末の、ワーキングツアーが、
 このルートに、挑戦することになりました。
 いくつかの郷政府に頼んで、7台ほどの軍用ジープを集めてもらい、
 それに、分乗しました。
 霊丘県に向かう、公道は、まだよかったんですよ。
 山道に、はいってからが、たいへんです。
 道とは思えない、道です。
 途中、水のない川底を走りますし、
 断崖絶壁のうえも走ります。
 車がまた、車なんですね。
 クッションが悪く、乗っているだけで、全身マッサージ。
 天井にしょっちゅう、頭をぶつけます。
 へたをすると、ムチウチになりそう。

 道路の終点で、車を降りました。
 「あれがカラマツの原生林だ」と指さされました。
 たしかに、樹齢は、重ねているようです。
 風格があります。
 でも、生えているのはまばらで、あそこに数本、
 こちらに数本、という感じです。
 自分のイメージのなかの、原生林にはほど遠かった。

 頂上をめざして、歩きました。
 小さな、踏み分け道をたどります。
 登るにしたがって、感動が深まりました。
 まさに、高山植物の宝庫。
  色とりどりの草花が、咲き誇っています。
  しかも、日本のそれに比べて、花がずっと大きく、
  色が華やかで、透明感があります。
  そのあと、立花先生にきいたところでは、
  日中、強光線のもとで光合成をし、
  夜間は気温が下がって、呼吸による消耗が少ないと、
  このように色が鮮やかになるのだそう。
 でも、残念なことに、そのころ、私は
 植物のことを、ほとんど知りませんでした。
 ですから、名前をあげることができません。

 ハーブも、多かったのです。
 私たちが歩くと、踏みつぶされた草が、
 鮮烈な香りを、ただよわせます。
 もったいなくて、もうしわけないような気持ち。
 参加者の一人、中野紀子さんは、短い夏休みを、このツアーに参加するか、
 日本アルプスに登って、高山植物を楽しむか、
 ずいぶん迷ったそうです。
 でも、ここにくることで、両方をあじわうことができた、
 といって、よろこんでいました。

 途中から傾斜が急になって、
 あまり先のところは、みえません。
 息も、苦しくなります。
 あそこまで歩けば、頂上だろうと思い定めて、がんばると
 また、同じような光景が、くり返しでてきます。
 それどころでは、ありません。
 なんと、畑がでてきたのです。

 結局、2066mという、龍山の頂上には、行き着けませんでした。
 でも、頂上がみえるところには、たどりつきました。
 驚いたのは、それより上に、畑があったことです。
 頂上のすぐ下です。
 植えられていたのは、菜の花。
 こんなところで、冬越しはできませんので、
 菜の花といっても、春蒔き。
 それが7月末に、黄色いカーペットのように、満開なのです。
 背丈は、30cmもありません。

 畑があるくらいですから、人が住んでいて、
 村があります。
 私たちがジープを止めたころから、
 遠くで人がみているのは、わかっていたんですよ。
 それがいつのまにか、数十人になって、私たちを取り囲んでいました。
 そういう情報が、どうやって通じるのか、私にはわかりません。

 山頂近くの、小さな台地に、石の記念碑がありました。
 ここには、早くも周代に、宗教の修行場があり、
 北岳恒山より、ずっと古い、ということでした。
 くわしい内容は、忘れてしまいましたけど。

 帰りもまた、同じ道を帰りました。
 こういう山道は、登りより、下りのほうが、ずっと怖いものです。
 しかも、何台かのジープが、途中で、トラブルを起こしました。
 ブレーキ故障でもあったら……。
 夫婦で参加していた、前川恒子さんが、
 「べつべつの車に乗ればよかったねえ。
 そしたら、どちらかが事故にあっても、
 つれて帰ることができたのにね」といいました。
 10年たっても、私は、その言葉を忘れることができません。
 
 そのせいでもないんでしょうけど、
 祁学峰が、「あまりに危険すぎる。
 私たちのやっているのは、冒険じゃない」といいだして、
 そのあとにくる専門家の調査団には、べつのコースを、準備しました。
 その後も機会はなくて、龍山にいったのは、あの1回だけ。
 もし、道がよくなっているようなら、再度、挑戦してみたいものです。
 
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『ぼくらの村にアンズが実った
           〜中国植林プロジェクトの10年』
 高見邦雄著・日本経済新聞社・四六判280頁・1600円+税
 書店でお求めください。

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