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大台ケ原>弥山山頂公衆トイレ新設についての提案
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会 提供日付  : 2006/03/29 23:32 登録経由地 : prweb情報受付 02 #00881 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

 平成17年度大峰縦走線歩道公衆トイレ整備事業第1回現地説明会提出2003/10/25

     聖地大峰山系を“マイカー日帰り登山”で穢してはならない

         弥山山頂公衆トイレ新設についての提案

                       大台ヶ原・大峰の自然を守る会
                            会長  田村 義彦

◆はじめに
 平成17(2005)年3月、奈良県は「大峰山系環境共生推進計画」を策定した。昨
年、懇話会での検討中に「三位一体改革」によって環境省の直轄事業に移行するこ
とになった。
 奈良県は登録を予想して、数年前から歩道、避難小屋などの過剰施設整備に努め、
すでに殆ど終わったといえる。弥山山頂公衆トイレは本年度に残された最後の課題
であるが、それにとどまらず、来年度以降に予想される「登山基地」建設につなが
る重要な課題である。公衆トイレの技術的検討の前に、世界文化遺産登録後の大峰
山系全般の施設整備について考えたうえで、提案をしたい。

◆世界文化遺産登録の誤った理解
 和歌山・三重・奈良三県が世界遺産登録に期待したのは経済的利益でしかなかっ
たが、ユネスコの意図は勿論そうではない。人類が長い歴史の中で創造し継承して
きた文化的な価値を有する記念物、建造物、遺蹟などを、次世代に継承するために
「危機にさらされている世界遺産リスト」に登録されたのである。「紀伊山地の霊
場と参詣道」は、単なる社寺と道の関係ではなく、山岳信仰の霊場と修行の道の関
係にあるという「文化的景観」に価値が置かれ、それを保全するために登録された
のである。

 登録1ヶ月後の2004年7月31日に奈良において開催された国際シンポジュウム『紀
伊山地における文化遺産について考える』において、4年前に世界遺産登録に最初
に手を挙げた金峰山修験本宗宗務総長・金峰山寺執行長 田中利典氏は「世界遺産
というと、観光資源とか地域振興にばかり利用されるふうに聞いておりましたので、
もし今度の登録によって吉野・大峰がそういう形になったら、かえって、手を挙げ
ない方がよかったのではという気すらしてきまして、本当にこの1ヶ月ぐらい気落
ちしてまいりました。世界遺産登録に手を挙げたのは一つには、吉野・大峰の聖地
性、歴史性を地元の人に自覚していただきたいという思いからで、修験者自身がも
う少し自負心をもってほしいと思ったからです。もう一つは、壊れつつある大峰の
自然環境と修験の場を守っていきたいという思うからであります。」と発言された。
((財)ユネスコ・アジア文化センター 文化遺産保護協力事務所編集発行の『記
録集』) 私は、このシンポジュウムに出席したが、「記録集」にはテープ起しさ
れていないが、田中利典氏は「金儲けしろとはどこにも書いてない」とまで発言し
た。

 また、修験道の行者さんからは本会HPを読んで賛同のメールが届き、「行者さ
んの中に、世界遺産登録を期に、奥駈道が過剰整備されることを心配する声が上が
っている。」と教えて戴いた。

 ところが、洞川で開催された登録記念式典で奈良県知事が「これで観光客が増え
るだろう」と挨拶する姿がTV、新聞で報道された。文化よりもお金を優位に置く
この国、この県の恥ずべき現実である。
 世界自然遺産登録後の屋久島、白神山地、白川郷などの観光公害の惨状には言葉
を失う。奈良県は屋久島の現状を受けて、「これだけ多くの観光客が来るからそれ
を受け入れる施設が必要だ」というが、それは間違った発想である。そのような惨
状を大峰山系で繰り返してはならないのだ。

◆大峰山系を不便な山として保全しよう
 奈良県の計画では来年度以降、林道と登山道の接点に「登山基地」(トイレと休
憩所)新設がいくつか予定されている。
 世界文化遺産としての価値が評価された大峰山系の聖地性、歴史性は、都市から
遠く離れ、交通の便が悪いために容易に人が立ち入ることが出来ない地域に宗教が
存在したからこそ今日まで存続し得たのである。世界文化遺産登録を観光の目玉に
して、地域振興の美名の下に、大峰山系を“マイカーで日帰りできる観光の山”に
変えてはならない。長いアプローチを汗して登る不便な山として残すことこそが、
世界文化遺産登録の精神に沿うことである。
 大峰山系最奥の七面山に、荒れた舟ノ川篠原林道を4WDを駆って登るのはまと
もな登山ではない。登山の堕落であり、聖地七面山に対する冒涜である。坪ノ内林
道が稜線に達したからといってそこに登山基地を作る必要はない。大峰同様に世界
文化遺産登録を受けたイタリアのアッシジでは、観光バスやホテルの姿はないとい
う。

◆弥山は“マイカー日帰り登山”の観光の山ではない
 改めて言うまでもなく、古来、弥山は川合から長い尾根道を辿るか、険しい弥山
川を遡行して一日かけて頂きに達し、感動にふるえた聖峯であった。ところが行者
還林道開削によってトンネル西口に車を置いて日帰りする登山者・観光客が増えて
いった。その登山道を誰が開設したのか知る由もないが、近年更に、昔からの小坪
谷源流の踏み跡を広くして道標まで建て、近道であるため殆どの日帰り登山者・観
光客がこのルートを利用するようになり、日帰り観光バスまで来るという。
 環境省は公園計画見直しでこのなし崩し短縮ルートをリストアップするというが、
現状追認は奥駈道の堕落につながる国の責任放棄である。強く翻意を求めたい。リ
ストアップすれば次ぎはトンネル西口の登山基地建設につながり、更に、上北山側
のエコツアーを受けてトンネル東口の登山基地建設にもエスカレートし、大峯山系
の観光地化が一気に進むことになる。

 ちょうどこのケースに酷似した例が北海道・大雪山国立公園トムラウシ山にある。
トムラウシ山は大雪山国立公園のなかで最も原生的な自然景観を残す山であり、当
然日帰り登山は不可能であったが、近年、近道として利用されてきた林道の踏み跡
がなし崩しに登山道になり、日帰りが可能になった。そのために、トムラウシ山直
下の南沼キャンプ指定地の高山植生の破壊や屎尿問題が顕在化してきた。現地では、
このなし崩し短縮登山道の閉鎖が真剣に論議されている。

◆弥山山頂公衆トイレ新設は奥駈道観光地化のはじまりである
 古来、長い奥駈道を辿る行者、登山者のための公衆トイレは1箇所もなかった。
弥山山頂公衆トイレは行者還トンネル西口からの日帰り観光登山者のためのもので
ある。小坪谷源流の自然を破壊しているなし崩し登山道を閉鎖すれば公衆トイレの
必要はない。弥山に安易に訪れる日帰り観光登山者のために、聖地弥山山頂に公衆
トイレを新設することは、修験道の霊場に対する冒涜であり、観光地化に手をかす
ことになる。奥駈の修行に励む修験者の横を日帰り観光登山者がぞろぞろ歩く姿は
あってはならない光景である。

◆質問
(1)弥山公衆トイレ設置の理由(目的)は、奈良県の資料では「弥山小屋のトイ
レは、降雨時やピーク時に土壌処理槽の容量が不足し、液肥状の未処理水がオーバ
ーフローし、周辺植生への影響、臭気等の問題が発生しているから」とされている
が、公衆トイレの新設によって、弥山小屋のこの問題は確かに解決するのか? 
 ・土壌浄化浸透方式(奈良県資料P.84)は不確かな方式であるから、宿泊者・
  従業員だけでも処理しきれないと考えるが大丈夫か? 因みに、奈良県の資料
  P.36では「合併処理方式(土中蒸散方式)」とも記されているが、正確な表記
  に統一されたい。
 ・降雨時のオーバーフローは利用人数に関係ないのでは?
(2)公衆トイレ建設費は? 費用対効果は? 
 ・奈良県の資料によると、弥山小屋の宿泊者・テント宿泊者・日帰り登山者のト
  イレ利用者の総数が、平成15年は8000人、16年は1万人になっているが、宿泊
者以外のトイレ使用者は何名か? 
 ・弥山小屋定員100人を越える公衆トイレとしての利用日数は平成15年で22日、
  16年度で23日で、共に12%に過ぎないがC/Bは?
(3)搬出費はどこがいくら負担するのか?

◆提案・・・公衆トイレ新設を止めて、弥山小屋トイレの貯留式改造を
 弥山小屋のトイレ処理問題が積み残されるのであれば、公衆トイレ新設の目的を
満たさない。山岳トイレの処理方法は環境省の「環境技術実証モデル事業検討会」
などでいろいろ検討されているが、生物学的にも、物理化学的にも未だに完全な技
術は開発されておらず、乾燥・焼却か搬出しかない。弥山小屋の現在の土壌浄化浸
透方式は期待できないので、モノレールによる搬出を前提にした貯留方式に改造す
ることを提案する。新しい建物による景観阻害を防ぎ、税金の節約にもなるであろ
う。

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◆ 奥駈道の道標についての要望
 「吉野熊野国立公園吉野地域管理計画書」の「第3 大峰山脈管理計画区」の「
1 管理の基本方針」「(1)保護に関する指針」の「ア 風致景観の特性及び保
全対象」に「建築物、歩道、標識等公園施設等の整備にあたっては、木材等自然材
料を使用し伝統的な雰囲気を保つことに留意する。」とある。
 ところが、五番関から奥駈道に、奈良県教育委員会の「奈良県歴史の道(大峯奥
駈道・熊野参詣道小辺路)整備活用計画」に基づいたと思われる灰色の石材の道標
が三県共通のデザインでいちはやく設置された。人工石と思われる道標は、自然景
観、雰囲気を阻害し、既設の木材の道標に対して違和感があり、重複設置の個所も
ある。吉野・大峰の世界遺産は未完成であって、ユネスコから管理計画の提出を求
められ、現在作成中である。その段階で、緊急を要しない道標設置を急ぐとは理解
に苦しむ。
 環境省は大台ヶ原においてはサイン懇話会を開催して時間をかけて入念に検討し
てきたが、大峰山系において、特別保護地区内のこの性急な設置について充分な検
討がなされたのであろうか。
 奈良県森林保全課には「大峯奥駈道保存管理計画」があるが、むしろそれを隠れ
蓑に過剰施設整備を行ってきた。行政の縄張り意識で、それぞれ勝手に乱雑に整備
することは許されることではない。環境省は大台ヶ原同様整理して、重複するもの
は撤去していただきたい。
 今後も出るであろう各自治体からの身勝手な整備要求に対して、大峰山系の自然
と文化の保全に責任を負う環境省は、毅然とした姿勢で臨んでいただきたい。
                                   以上



  

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