大台ケ原>弥山山頂公衆トイレ新設現地説明会
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会
提供日付 : 2006/03/29 23:32
登録経由地 : prweb情報受付 02 #00882
注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した
情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向
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また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ
のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている
場合があります。
弥山山頂公衆トイレ新設現地説明会
2005年10月25日に天川村役場において「平成17年度大峯縦走線歩道公衆トイレ整
備事業現地説明会」が開催された。環境省近畿地方環境事務所(5名)、奈良県森
林保全課(2名)、天川村観光農林課(2名)、坪内地区区長、同環境整備委員(2名)、
弥山神社宮司、弥山小屋管理人、登山団体、市民など30余名が出席した。本会から
森本幸治事務局長と田村が出席した。
環境省の計画は、昨年度に奈良県が作成した「大峯山系環境共生推進計画」を踏
襲したものであった。奈良県、天川村、森林組合が7回現地に入って測量した詳細
かつ多量の図面と写真が資料として配布されて、居ながらにしてイメージすること
ができた。ここまで準備された関係者のご努力に敬意を表する。
◆ 弥山登山者 51,500人!
「弥山小屋のトイレが、小屋宿泊者以外の日帰り利用者の使用を認めている結果、
特に連休や夏季などトイレの処理能力(100人/日)を越えた未分解の屎尿による
周辺への影響が生じている」ため、数年前から地元が公衆トイレ建設の陳情を出し
ていたという。
まず、資料にある弥山の平成14年度の年間利用者(登山者)数51,500人の数字に
驚いた。奈良県の共生推進計画書によると、「小屋の宿泊者数やテント宿泊者数、
及び日帰り登山者のトイレ利用者数のカウント」が平成14年は12, 500人であるか
ら、単純計算では、その差39,000人の日帰り登山者が弥山、八経ヶ岳周辺で雉を撃
ったことになる。勿論全員ではないが半数にしても恐るべき数字である。「弥山神
社のすぐ横で排便して聖域を汚している」と宮司さんは怒りをあらわにされた。坪
内区の代表は、「弥山は聖地だ、神の山を守らなければならない」と発言された。
地元の方々の聖なる山を守ろうという願いはわれわれの願いと同じである。
修験道のメッカ山上ヶ岳には年間9万人の参詣者が登るといわれているが、その
数と比較してこの5万人はいかにも多い。私のトンネル開通前の古い記憶に照らす
と、大袈裟な表現であるが天文学的数字に感じる。奈良県の資料にある同年の稲村
ヶ岳25,000人、和佐又山27,000人に比べて倍である。尤も、弥山は翌年平成15年に
は47,000人と9%程減っているが、トイレ新設計画の基礎数字には平成14年の51,500
人を使っている。
◆ 309号線のパラドックス
国道309号線をつかって行者還トンネル西口から登るこの信じ難い数の日帰り登
山者が、公衆トイレ新設の原因である。そしてまた、その日帰り登山者の屎尿を国
道309号線を使って搬出するわけである。更に言えば、トンネル西口にトイレを作
れば、弥山山頂には要らないことになる。このパラドックスについて説明会で発言
したが何故か論議にならなかった。しかし、大峯山系をマイカーで日帰りできる便
利な山にしてはならない、汗して登る不便な山として残さなければならない、と自
然保護団体としても基本的な考えは発言した。正面切った反論はなかったが、「日
帰りでもいい、うどんを食べて風呂に入って帰ってもらいたい」という切実な願い
があることはひしひしと伝わってきた。
計画によると、山頂に貯留式の公衆トイレ本体8.2m×4.6m×高さ5.9m:男子
用2穴、女子用3穴1棟と、モノレール収納庫8.2m×3.3m×高さ5.2m1棟を建て、
国道沿いにモノレール収納庫と付帯施設を建てる。
◆ 本会の提案
環境省の説明に引き続いて、本会が提案をした。詳細は本会HP別掲の「弥山山
頂公衆トイレ新設についての提案」にゆずるとして、要点のみ記す。
「公衆トイレ新設によって弥山小屋トイレのオーバーユースは解決するとしても、
土壌浄化浸透方式は不完全な処理方法であるため、降水時のオーバーフロー、臭気
などは改善されず、問題を積み残すことになる。公衆トイレを新築せずに、弥山小
屋トイレを搬出を前提にした貯留方式に改築して、この際、根本的な解決を図って
はどうか。」と提案した。
◆ 環境省「私有財産に国費を出せない」
村からは「ベストの方法である」と賛同を得たが、環境省から「村の財産である
弥山小屋を、国費の執行で改築できない。会計検査院の検査を通らない。」という
見解が示された。新潟地震の被害家屋に、「私有財産の復旧に国費は支出できない
」と補助しない杓子定規な解釈に似た見解であろう。
しかし、搬出作業は国を離れて村に委ねられ、村の費用で行われる。運用で工夫
して弥山小屋の屎尿を搬出して周辺植生への悪影響を断つことが必要である。この
形で改善されるのであれば本会に異存はない。
◆ 搬出用小型モノレール
屎尿は搬出用の小型モノレールを「布引谷二俣の尾根」に最短距離の2500m敷設
して、国道309号線に降ろす。午後、車に分乗して現地を見に行ったが、景観を阻
害しない適地であった。敷設のための伐採も、胸高直径20cmが1本、15cmが15本、
あとは10cm以下で、さしたる自然破壊ではない。1箇所小さな谷を横断するところ
が大雨で流される心配があるが、村内には総延長30Kmのモノレールの実績があり、
修理資材、技術、経験が蓄積されているので心配はないとの村の返事であった。
想定51,500人分の屎尿25トンを降ろすには1回0.4トンであるから63回。費用は
1トン12万円で、年間300万円かかる。環境省は建設費は全額出すが、維持費は全
額地元負担である。天川村が年間300万円をこれから先ずっと負担しなければなら
ない。財政の苦しい村で果して負担し続けられるのか心配なので質問したが、努力
する、との返事であった。
なお、奈良県はヘリコプターによる搬出も検討したが、弥山山頂の気象条件から
無理で、一方、屎尿処理の電源として太陽光、風力発電も検討したが景観を阻害し
コスト高であるため断念したとのことであった。
今後の予定は、1期工事(平成17年度):公衆トイレの付帯施設、2期工事(平成
18年度):公衆トイレ本体と付帯施設。 総工費約1億5千万円、環境省の直轄事業
で奈良県への施行委任である。
◆ じっくり検討できた最初の現地説明会
現地説明会は今回が第9回である。この3年間、回を重ねてきた現地説明会のなか
で、今回は時間をかけて論議検討できた最初の検討会であった。自然保護団体とし
て天川村の方々の想い、希望を虚心に聞くことができた初めての機会であったし、
本会の考えを率直に発言することができ、村の方々からも話し合えてよかったとい
う感想が聞けて嬉しかった。整備内容にもよるが、今後もこのような形の現地説明
会を企画していただきたい。
お二人の市民の出席は初めてであった。お一人から「守る会のHPを見て出席し
たが、守る会が環境省に敬意を表されたので驚いた」と聞いて私も驚いた。守る会
と環境省のすさまじい激突を期待されて出席されたのであろうか。環境省が出席者
全員に発言を求めたがお二人の発言がなかったのが残念である。もしこのHPをご覧
であれば、ぜひご意見、ご感想をお寄せください。
現地説明会は本年度だけで6回開催された。驚異的な回数である。環境省が多大
な労力を費やして膨大な資料を用意した現地説明会はここにきて定着してきたこと
を感謝したい。ほとんどの国立公園ではやっていないのではないか。「吉熊方式」
とも言えるこの方式を今後も継続して、よりよい協働に発展させることができれば
幸いである。
それにしても、長期赴任にピリオドをうって転任された酒向貴子熊野支所長が、
本会の情報公開の要望を容れて、渋る奈良県を指揮して第1回大台ヶ原現地説明会
を強引に開催したのが2002年9月10日である。その後も、密室主義の奈良県政の厚
い扉を押して今日の情報公開を導いてこられたご努力に遠い奈良の地から、改めて
敬意を表したい。
大台ヶ原に空中回廊が設置されてからのこの5年間は、本会にとって正に激動の5
年であった。ようやくここまで来た、という感が深い。それにしても、天川村役場
の方も同じ思いであったことが衝撃的であった。天川村にも新しい風が吹きはじめ
たとすれば、そんな嬉しいことはない。
【付記】 環境省の公園計画に {1}小坪谷線・{2}頂仙岳明星ケ岳線を掲載してはな
らない
現地説明会に出席された弥山小屋管理人の西岡 満氏から小坪谷登山道について
詳しく教わることができた。
即ち、「行者還トンネル西口から小坪谷を登る登山道は3本ある。1本は西口から
すぐ左の尾根にとりついて急坂を登る道で、現在は行者還岳への道になっている。
弥山への登山道は小坪谷を更に奥へ進んで、1本は尾根を、もう1本は沢を詰める。
沢の道は大雨の度に倒木が出るので、現在は閉鎖状態。
これら3本の登山道は昔からの杣道で、近年登山者が勝手に歩いて広げた。道標、
テープも登山者の勝手な設置で、天川村も弥山小屋も関与していない。最近の登山
者は勝手なルートを作り、それをネットで自慢して、更にそれを読んだ登山者がそ
の真似をしてエスカレートさせている。テープ、道標の撤去に苦労している。一寸
歩けばビニール袋が一杯になる。」
私も、テープ、道標の撤去は昔から方々の山でしてきたが、その状況が大峯山系
においてもこれほどひどくなっているとは知らなかった。尤も大台ヶ原の堂倉山へ
の道が、古道尾鷲道を無視して近道に勝手にテープが巻かれていて、かえって迷い
やすい。行く度に取っているが蝿を追いようなものだ。日出ヶ岳から三津河落山に
至る稜線もいたちごっこである。
ところで、環境省は公園計画の見直しで、この小坪谷登山道を公園計画に載せる
計画を立ててパブコメにかけた。本会は高崎横手から明星ヶ岳に至る登山道と併せ
て掲載反対の意見を霞ヶ関へ送った。(本HP「国立・国定公園の公園区域及び公園
計画の変更への意見」)
私はこの2本のルートは共に、天川村又は弥山小屋が登山者誘致にために開削し
たのかと、正直、若干の遠慮があった。しかし、歴史的古道を尊重することも知ら
ず、登山の本道をわきまえない無法登山者の勝手な「なし崩し登山道」を、ことも
あろうに国が既成事実として追認するとは由々しき行為であり、あってはならない。
環境省は「なし崩し登山道」が、市販の地図帳に実線で記載されていることを気
にしているようであるが、売るために読者に迎合する商業出版社の営業政策を国が
気にする必要など毛頭ない。西岡氏はその出版社の地図を訂正させているが、本会
もかつて書店にある7000部の地図を回収させて全面改訂させたことがある。現在も
別件で申し入れている。
更に公園計画掲載に反対するもう一つの理由は、小坪谷線を環境省が認めること
はマイカー日帰り登山による大峯山系の観光地化に糸口を与えることになり、各地
の登山基地建設に広がっていくからである。
2005年10月26日 田村 義彦
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