大台ケ原>第1回西大台地区利用適正化計画検討協議会
情報提供者 : 大台ケ原・大峰の自然を守る会
提供日付 : 2006/04/17 22:07
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西大台利用適正化計画に満場一致で賛成
― 第1回西大台地区利用適正化計画検討協議会 ―
2006年2月26日、吉野町中央公民館で標記協議会が開催された。自然環境等に関
する専門家・研究者、関係行政機関、関係団体・地元住民・山岳団体・NPOなど23
名、事務局側は環境省7名、スペースビジョン4名が出席して、「吉野熊野国立公園
西大台地区利用適正化計画検討協議会」の最初の会議が開かれた。
目的は、西大台に利用調整地区を設置する「利用適正化計画(案)」について協
議して、関係者の合意形成を図ることであった。
【 何故、西大台なのか 】
最初に霞ヶ関から臨席した環境省自然環境局国立公園課公園計画専門官から、利
用調整地区制度について<制度創設の背景と経緯><制度の概要><利用調整地区
における立入認定・許可><利用調整地区設定までの手順き>などの説明があった。
それに対して、上北山村漁業協働組合長から、「いままで村であった地域説明会
で聞いてきたのは東大台の話ばかりで、今日突然西大台と聞いてびっくりした。何
故西大台なのか。将来東大台へ広げるのか」と質問が出て、環境省統括自然保護企
画官が答えた。
2004年11月に上北山村で2回目の村民説明会を開いてからすでに15ケ月が経った
が、その間、環境省が村民に直接説明していなかったのは事実である。ただ、環境
省が全く放置したのではない。
新任の統括自然保護企画官等が村役場に足を運んで、村の理解、協力を得る努力を
した。その環境省の努力の結果、地域振興課などの理解が深まり、協力が得られる
ことになった。しかし、その努力が組合長にまで伝わっていなかったのは残念であ
った。組合長の納得し難い表情をみて、筆者は蛇足を加えた。
「ご指摘は全くその通りで、長い間村の方々に説明しなかったことをお詫びします
。ご指摘の通り、再生計画は東大台が中心です。しかし、その再生計画の中に、こ
の西大台利用調整地区の問題が入っているのです。そこで再生計画が昨年一月に決
まったあと、評価委員会はこの西大台利用調整地区の問題にとりかかりました。何
度も会議を開いて喧喧諤諤の論議をしてきました。東大台ではなく西大台なのには
理由があります。
それは法律のしばりです。法律では、原生的自然が残っていて、利用者が増えるこ
とで破壊されるおそれのあるところに限っています。従って、すでに原生的自然が
なくなった東大台は法律の対象にならないのです。しかし、再生計画によって将来
もし東大台に原生的自然が回復すれば、その時は東大台も利用調整地区になるでし
ょう。私達の願いは大台ヶ原全体を利用調整地区にすることです。」
【 法改正の理解の難しさ 】
利用調整地区設置の法改正の主旨が正確に理解されず、過剰利用対策と誤解され
ている傾向は実に強い。過剰利用による自然破壊がひどいために、誰しも過剰利用
対策と考えるのは無理のないところではあるが、身近でも筆者の説明に納得しない
人は何人もいた。わかってくれたのはごく最近のことである。だいいち、評価委員
会においても、利用計画立案に関わらなかった植物、動物担当の委員の中では、「
東大台が先だ」と主張する委員が多く、正しい理解を得るために多くの時間を要し
た。
ある山岳団体から、一日160人の利用者で本当に多いのか。何人なら適正なのか。
大台ヶ原は環境省所有地なので地権者がいなくてやりやすい。やりやすいところか
らやろうという役人のおもわくを感じる、と質問が出た。筆者は、環境容量の確か
な数字はない。確かに官僚がメンツのためにやるのかもしれないが、仮にそうであ
っても、良いことをやるのであれば認めてもいいのではないか、と発言した。
因みに、古くは白井光太郎以来大台ヶ原とは深いつながりのある日本山岳会も委
員を委嘱されて、本部と支部が連携をとって参加することになり、当日は東京から
篠崎 仁理事が出席し、斧田関西支部自然保護委員長が傍聴した。
【 住民・関係者に対する資料と説明 】
環境省はこの会議のために、西大台地区の<自然の概況><自然環境の現状と課
題><利用の状況><検討事項><適正化計画に向けた骨格的な考え方>など利用
調整地区関係を含む12項目の資料と、他に参考資料4項目の合計16項目の膨大な資
料を用意した。初めてこの会議に臨む住民、関係者のために膨大な元資料から抜粋、
要約した努力と的確さは評価したい。特に「西大台地区における利用調整地区の指
定について」は活字も大きく、文章も簡にして要、官僚の優秀さを証明する秀逸な
出来であった。しかし、残念ながら、秀逸なのはその一枚だけで、あとは検討会向
きの資料そのままであった。
議事は定番通り、環境省が資料を読んで出席者が意見を出す形で進められた。出
席者の理解を妨げたのは会場のスピーカーの位置の悪さ、ハウリングだけではなか
った。事情を全く知らない地元住民が、日常生活でなじみのない資料を初めて渡さ
れて、お役人の固い説明を理解できるほうが不思議である。理解できなくていらい
らしたり、だらける姿が見受けられた。
環境省が配慮した努力は認める。しかし、検討会の類は経験豊富であっても住民
説明会はいささか経験不足ではないのか。「市民参画」「情報公開」のために、更
なる工夫を望みたい。市民は検討会・審議会に提出されるような科学的数字の羅列
は要らない。数字をわかりやすい言葉にした説明がほしい。官僚が市民を蔑視して
いることは充分承知しているが、本当に「関係者の合意形成」を望むのであれば、
所謂「官僚的」な発想から脱して、市民にもわかるような手立てを考えるべきであ
ろう。
思い起せば、2003年9月の最初の上北山村村民説明会では環境省は全く説明しな
かった。そこで、筆者が「ピエロにするのか」と怒った。翌年11月の二回目の説明
会ではじめて環境省は説明に立ったが、後半は検討委員に説明させる形にした。環
境省自身がもっと前面に立つべきであるのに、何故後ろに引くのか疑問であったが、
時の所長が、官僚の住民相手の説明下手を承知のうえで見事に演出したのかと今に
して思う。そして、検討委員のピエロは宿命か、とこの日も改めて思った。
【 「検討事項」はワーキンググループで 】
「検討事項」とは多岐にわたる具体的事項である。従来数回の評価委員会・部会
でも決めずにこの協議会にゆだねられた。しかし、<論点1.利用の質の向上を図
る方法>では出席者から具体案は出なかった。また、<論点2.利用の調整を図る
方法><論点3.利用調整の実施体制>は、閉会時刻を30分延長しても時間が足り
なくて審議できなかった。
しかし、この三つの課題は具体的に過ぎて、協議会の場でまとめるのは無理であ
る。環境省で決めるか、小人数のワーキンググループで担当を決めて具体的に作る
かしかない。その上で、次回協議会に提案しなければ、このままでは何回協議会を
開いても決まらないであろう。
【 総論において合意形成成功 】
決めるべき具体的事項の殆どを先送りしたとはいえ、23名の出席者全員が西大台
に利用調整地区を設置する「利用適正化計画」に総論において賛成を表明し、合意
形成が図れたのは成功であった。
特に、上北山村議会総合開発特別委員会委員長が「参加していきたい」と賛成を表
明された意味は重く、嬉しかった。率直に言って、理解不足に基づく異論・反論の
頻発を心配していただけに紛糾もなく合意形成を図れたことにほっとした。
しかし、多くの出席者にとって資料が初見であることもあって、総論賛成にして
も各論には疑問が残ったかもしれない。次回の協議会では、できれば環境省原案を
事前に、出席者に送付して勉強・準備をしてもらっては如何であろう。より強い合
意形成が図れるのではないか。
【 西大台の施設整備と公認ガイドの養成 】
今回、構成員公募に応募した個人とNPOの二つのガイド組織から期せずして歩道
整備要請の発言があった。筆者は、環境省の管理計画には積極的な施設整備は行わ
ないとなっているので歩道整備はしませんよ、と発言して後は環境省にゆだねたが、
環境省は『管理計画』を見ながら、「全くしないということではない」とつぶやく
のには驚いた。役所の法令には逃げ道と解釈の幅が用意されているのは誰でも知っ
ている。そんなことではなくて、西大台はwilderness area として保存するのだ、
と環境省に毅然として答えてほしかったのだ。
管理計画の保全方針には「この地域に多数の利用者が入りこむことのないよう、
積極的な施設の整備はおこなわない。」と明記されている。実際に、逆峠を少し整
備したくらいで、ほとんどの歩道は整備されていない。歩道が整備されていない、
道標も建っていない、だからこそ、今日まで西大台の「原生的な雰囲気」が保たれ
てきたのである。
今後プロガイド組織が、入山料をとったのだからと客の歩きやすさ、安全性を環
境省に対して求めてくる可能性がある。また、利用調整地区になれば、それを“付
加価値”にして有料ガイドツアーが増えるかもしれない。それに対して環境省は、
利用調整地区の入山者には自己責任を求めているのであるから、毅然として、基本
姿勢である原生的雰囲気の維持を貫くべきである。
東大台の周回線歩道は環境省が「自然観察路」と規定しているために本会は大目
に見たところもあったが、西大台は環境省自身が「登山道」と規定して「積極的に
は整備しない」と言ってきたところである。利用調整地区に指定されれば、当然更
に厳しく規制されて然るべきである。利用調整地区に指定されれば、あとは安心し
て環境省に任しておけばよいと考えていたが、これでは安心などしておられない。
環境省の整備計画を注視しなければならくなった。
一方、中高年登山ブームに便乗した自称プロガイドによる遭難事故が各地で続発
して放置できない状況になったため、北海道、東京都、長野県、屋久島などでは罰
則付きの条例を作って厳しい規制をかけてきた。大台ヶ原においても、県か村で公
認プロガイドを養成することが急務である、と筆者は以前から言ってきたが、早速
とりかかってほしい。
【 環境省は住民やボランティアに任せずに主体的責任を果せ 】
環境省は、予約者に事前レクチャーを実施するという。ぜひ、VC(ビジターセン
ター)を使って義務化してほしい。ところが、奈良県はVCの現在の態勢は手一杯だ
という。となれば環境省自身が張り付かねばならない。本来そうあるべきで、本会
は従来、VCには環境省職員が常駐すべきだと言ってきた。昨年度から環境省の予算
による派遣職員2名が配置されて利用者指導業務行っており、アクティブレンジャ
ー2名も採用された。いずれにしても、環境省が予算措置をした職員が事前レクチ
ャーに専念してもらいたい。
この会議の冒頭でも発言したが、利用調整の目的は入山者数の規制と教育の二つ
である。教育が不充分になればこの制度は堕落し、瓦解するであろう。
また、この制度が実施されれば、受付業務と同様に、「入山後の巡視、指導体制」
が必要になる。ところが、協議会委員に委嘱した「公園利用の管理・巡視実施者」
はボランティアである。ボランティアでは責任がとれない。この制度は今更言うま
でもなく、国の業務である。入山許可は環境大臣が与えるのである。国の責任にお
いて行う本邦初演の大事業である。勿論市民の協力抜きには成功しないが、教育、
指導の最前線では責任のある環境省職員が職責を全すべきである。制度だけ作って
後は住民・ボランティアで宜しく、では済まない。全国民、全世界が注視している。
多少の失敗、試行錯誤は避けられないが、だからと言って基本的な責任から逃れる
ことは許されない。この事業は絶対失敗してはならないのだ。
次回協議会は3月26日に吉野町中央公民館で開催される。多くの市民が参加する
ことを願う。
2006年2月28日 田村 義彦
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