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GEN>黄土370>苑西庄村の鋪装道路
情報提供者 : 緑の地球ネットワーク 提供日付  : 2006/07/24 23:46 登録経由地 : prweb情報受付 02 #01206 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

  中国山西省大同市の黄土高原の農村での緑化協力活動のなかでの体験を
 書きつづっています。不定期の発行です。
 バックナンバーを緑の地球ネットワークのWebページにおいています。

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   黄土高原だより(NO.370)
     (2006.07.24)
            高見 邦雄(緑の地球ネットワーク事務局長)

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 苑西庄村の鋪装道路

 7月13日に、北京から、大同市広霊県にはいりました。
 自治労大阪府本部の、ツアーといっしょです。
 北京空港から、バスで、高速道路を乗り継ぎ、
 大同への途中の、河北省の化肖営で、地道におり、
 蔚県をへて、広霊に着きました。
 ツアーの乗ってきた、JAL便の関空出発が、2時間遅れだったため、
 県の招待所に着いたときは、暗くなっていました。

 途中の蔚県では、道路の両側の畑で、
 トウモロコシが、なぎ倒されていました。
 局地的に、大雨が降ったようです。
 注意してみると、その葉が、バラバラに砕かれ、
 乱れ髪とでも、表現すべき状態。
 ヒョウ(雹)によるものです。
 日本人には、なじみがないでしょうが、
 まあ、アラレを大きくしたものを、想像してもらいましょう。
 これだけの被害となると、ひょっとすると鶏卵大でしょう。
 私は、この地方で、春にも体験しましたが、夏が多いようです。
 旱魃の地方が多く、作物の生育も思わしくないのに、
 降るとなったら、このような降り方をするのです。

 14日午前から、15日朝まで、苑西庄村で、すごしました。
 私にとっては、特別に、印象深い村です。
 1994年3月に、はじめて、この村にきて、
 それから、毎年、数回ずつ、訪れています。
 つぎつぎに井戸が涸れ、飲む水にも、困っていました。
 1997年夏に、テレビ朝日の「素敵な宇宙船・地球号」の番組が、
 この村を、主要な舞台にして、制作され、
 それが縁になって、各方面の協力で、この村にも、井戸を掘りました。

 通水式の場面を、私は、いまでも、覚えています。
 村のお年寄りが、私の手を握って、離しません。
 「この村の、もらい水の歴史に、終止符が打たれた」といって、
 大泣きしました。
 私も、もらい泣きして、しまったのです。
 中国では、生水は、絶対に飲まないことに、決めているのに、
 「飲んでみてください。
 こんな甘い水は、どこにもありません」といって、
 つぎつぎに、コップをさしだされ、
 このときだけは、飲まないわけには、いかなかったのです。

 村の人たちは、そのときの気持ちを、もちつづけています。
 日本人がくるとなると、よその村に嫁いだ女性も、
 村に帰ってきます。
 今回、私が、泊めてもらった家でも、
 主の姉が、息子をつれて、帰ってきて、
 私たちの、食事、その他のめんどうを、みてくれました。
 出稼ぎにでている人も、この機会に、帰ってきます。
 まるで、村祭りのようなものです。
 ツアーの人たちも、その心のこもった接待に、感動していました。

 私が泊まったのは、私の義理の娘の家です。
 家庭の貧困が原因で、中学校にいけなくなるのを、
 私が、寄宿費を含めた、学費を支援することにしました。
 年に2千元(3万円弱)。
 何回か、これまでも、家を訪ねていましたが、
 泊まるのは、はじめてです。
 村のなかでも、おそらく、いちばん貧乏でしょう。
 私たちのために、まあたらしいフトンが、準備してありました。
 買ったものか、借りたものか?

 小学校の小さな庭で、私の娘が、あらかじめ書いていた、
 あいさつの原稿を、読もうとしました。
 涙で、声をつまらせて、自分では、読めません。
 「勉強したくて、たまらなかったのに、
 そのときは、貧乏のために、
 中学校への進学を、あきらめていました。
 私は、家庭の貧乏を、呪いましたし、
 そのような両親を、恨んだこともあります」。
 通訳の崔文さんが、原稿をみて、訳してくれました。

 彼女の父親も、このたびは、出稼ぎから、帰っていました。
 娘の、そのような思いを、知っていたでしょうか。
 善良そのもの、といっていい人です。
 気の、弱い人でしょう。
 どんなしごとも、てきぱきとは、できそうにない。
 私としては、しごとのパートナーとしては、選びたくない。
 でも、いっしょにいたら、善良な人であることが、すぐにわかります。

 程度のちがいはあっても、この村の人、すべてが、
 彼と、相似形の存在かも、しれません。
 農村にホームステイするとき、ほかの村であれば、
 私は、「暗くなってからは、家の外に出ないでください」と、要求します。
 夜ですし、酒もはいっていますから、
 なにかあったら、困ります。
 宿泊した家でも、家族の人が、十分に注意して、
 玄関(といえるかどうかは別として)のカンヌキをかけ、
 門にも、内からカギをかけます。
 ところが、この村では、それがない!
 かけようにも、カンヌキも、カギもない家が多い。
 私が泊まった家は、家を取り囲む、土塀すらありません。

 夕涼みかたがた、外にでると、そこはもう、道路です。
 ちょっと歩いたら、道にちゃぶ台をおいて、
 何人かが、それを囲んでいます。
 県からきた、公安です。
 捕まるかわりに、私は、何杯も、何杯も、白酒で、乾杯させられました。
 翌朝、運転手の小郭が、「だいじょうぶですか?」と、私にききました。
 「たった1人で、あれだけを相手にして?」と。

 総勢200人あまりの、小さな村ですけど、
 井戸ができたために、村の人口が、戻ってきています。
 以前は、嫁さんなんて、ゼッタイといっていいほど、こなかったけど、
 最近は、それがあって、小さな、赤ん坊がいます。
 赤ん坊や、こどもの声がすると、自分の孫でなくても、
 年寄りたちも、しあわせなんですよ。

 大同市では、200人未満の、小さな、貧困な村は、
 原則として、移転させることを、決めました。
 近くの、比較的大きな村に、吸収させるわけです。
 苑西庄村も、その対象でした。
 引き受けるほうの村は、楊窰村で、
 この村とも、私たちは協力関係を、継続しており、
 私も、なんどか、泊まったことがあります。
 人口は、800人ほど。

 苑西庄村は、それに抵抗していました。
 井戸があり、2000年から植えているアンズも、
 まもなく、収穫できるからです。
 条件はよくなくても、新しいところに移って、
 ひょっとして、肩身のせまい思いをすることになるより、
 ここにとどまりたいと、思ったのでしょう。

 恐ろしいことに、楊窰村の井戸が、最近、涸れてしまったのです。
 いまは、谷底の、わずかな水に、頼っているそうです。
 800人の、比較的大きな村ですから、なにをするにしろ、
 簡単ではありません。
 私も、怖くて、みにいけません。
 苑西庄村で、井戸を掘ったことを、彼らはもちろん知っていますから、
 そのように期待されても、困るからです。
 苑西庄村が移転する話は、立ち消えでしょう。

 これまでは、苑西庄村まで、バスをすすめるのに、苦労しました。
 数年前の、サントリー労働組合のツアーは、
 雨のために、村に近づけず、
 予定を変更して、帰らざるをえませんでした。
 村にはいったら、はいったで、いつも天候が気がかりでした。
 雨になったら、道がぬかるんで、帰れなくなります。

 今回は、途中の、レンガ工場のところで、
 ちょっと、もたつきましたが、あとは順調でした。
 なんと、あそこの道が、コンクリートで、鋪装されたのです。
 村のなかの、「大通り」も、鋪装されました。
 県が、出資したそうです。
 移転の話は、これで最終的になくなったと、みていいでしょう。
 この村も、だんだんと、ふつうの村になります。

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『ぼくらの村にアンズが実った
           〜中国植林プロジェクトの10年』
 高見邦雄著・日本経済新聞社・四六判280頁・1600円+税
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