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GEN>黄土372>『楊家将』がおもしろい
情報提供者 : 緑の地球ネットワーク 提供日付  : 2006/08/01 18:42 登録経由地 : prweb情報受付 02 #01226 注意:自然環境フォーラム及びネイチャー&バードフォーラム経由で掲載した    情報には、一部に当該団体の公式なリリースではなく、ネットワーク向    けにのみ提供された情報が含まれています。    また、掲載形式は、原則として上記フォーラムに掲載されたテキストそ    のもので、前後にフォーラム会員宛の説明や挨拶が付け加えられている    場合があります。

  中国山西省大同市の黄土高原の農村での緑化協力活動のなかでの体験を
 書きつづっています。不定期の発行です。
 バックナンバーを緑の地球ネットワークのWebページにおいています。

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   黄土高原だより(NO.372)
     (2006.08.01)
            高見 邦雄(緑の地球ネットワーク事務局長)

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 『楊家将』がおもしろい

 7月11日、中国にむかって発つとき、
 空港の本屋に立ち寄って、文庫本をさがしました。
 中国にいるあいだに、手持ち無沙汰な時間ができるもの。
 活字中毒の私ですから、なにかほしい。
 手にする状況からすると、固いものはしんどい。
 魅力的なミステリなんかで、本業をおしのけて、
 読みふけるようなものでも、困る。
 軽くて、流し読みができ、アッというまに読み終わるのも、
 コストパフォーマンスが悪い。
 このばあいのコストは、お金ではなく、
 数冊しか、携帯できない、という制約です。

 平積みの文庫本の『楊家将』(PHP文庫)に、目がいきました。
 表題より、やや小さいゴシック活字で、
 「北方謙三」とあります。
 けっこう、すきなんですね。
 追っかけて読む、というよりは、
 文庫になったころに読む、という程度のファン。

 学年が同期か、彼が1こ、私より上でしょう。
 この世代が共有する世界観が、彼の作品には流れています。
 おそらく、若いころ、同じ場所に、いたことがあるでしょう。
 共通の友人は、いるにちがいない。
 いま、私が知らないだけ。
 でも、彼が描き出す、人物像は、みな、かっこいいですね。
 それぞれに個性的で、芯が通っている。

 でも、私じしんは、作品の英雄の、対極にあります。
 中途半端で、意気地がない。
 そのために、あこがれるのかもしれない。
 なんてことを、気軽にいってますけど、
 小説を読んでも、スジも、内容も、すぐに忘れます。
 どんな本についても、それは、いっしょ。
 記憶からは消えても、身につくところがほしいので、
 乱読してしまうのが、私の読書です。

 この『楊家将』の表題について、私の印象は、
 一般の読者より、ずっと深かったはずです。
 中国の書店で、たびたび、目にしていました。
 時代小説のコーナーに、かならずある。
 ビデオや、DVDも。
 でも、内容は、まったく知らなかった。
 北方本を、読んでみたら、なんと、
 舞台が、なじみのところじゃないですか。

 時は、10世紀。
 宋と、遼が、万里の長城をはさんで、
 激しく、抗争したときの、物語です。
 主人公の、楊業の一門は、
 代州(山西省忻州市代県)に本拠をおき、
 雁門関を、守っています。
 この地域の長城は、外城と、内城とがあり、
 雁門関は、内城きっての、関所です。

 対する遼は、北方の騎馬民族、契丹(きったん)が、建てた国で、
 物語の開始以前に、燕雲16州を、宋から奪取しました。
 燕州の都が、燕京で、現在の北京。
 雲州の都は、大同。
 その後、大同は、遼の副都になりました。

 大同周辺の農村部は、1993年まで、行政区としても、
 雁北地区と、呼ばれていました。
 雁門関の北、の意味です。
 小説にでてくる地名は、現代のものと、呼び方はちがいますが、
 (現代の県が、州というように)
 どこのことか、たいていわかります。
 たとえば、前々回あたり、この「たより」で書いた
 蔚県は、物語では蔚州です。
 易県は、易州。
 応県は、応州というように。

 私たちは、大同を本拠に、活動してますけど、
 当然、その周囲も、走り回ってきました。
 物語のころは、走るといえば、両足か、馬によるものですけど、
 私たちは、車です。
 そのちがいはあっても、地形は、さして変わっていないはず。
 ああ、あのあたりのことだな、と見当がつきます。

 物語だから当然、といえばそれまでですが、
 スケールのでかい話です。
 私たちは、車ですから、
 高速のばあいは、100kmを1時間ですし、
 車は疲れるということがないから、連続して、走れますけど、
 両足と、馬で、これほどの移動をするんですね。
 日本で、決戦といえば、関が原でしょうけど、
 あの規模で、この戦いを想像したら、おおまちがいです。

 大同事務所のメンバーに、文庫本のカバーをみせると、
 「知ってます、もちろん知ってます!」
 三国志、水滸伝の、つぎにつける、ポピュラーなもののよう。
 漢の世界を守るために、異民族の侵攻と、英雄的にたたかう!
 内輪もめの、ベスト2より、親しめるのかもしれない。
 水滸の英雄、青面獣楊志も、この楊一族の子孫、という設定です。

 これはもう、楊家将の本拠、代県に、
 いかないわけには、いかないでしょう。
 これまでは、ただ、通過するだけでした。
 霊丘にいく用事がありますから、帰りを、代県経由にしましょう。
 そう思って、また、新しい地図を買ったら、
 代県に、「趙[日+木]観国家森林公園」があります。
 その考察という、りっぱな名目も立ちます。

 霊丘から、代県にかけては、太行山の大山脈です。
 道路は、国道108号線ですけど、
 途中からは、さながら、石炭専用道路。
 走っている車の、99%はトラックとトレーラーで、
 そのうちの90%以上が、石炭輸送車でしょう。
 積載能力の2倍、100トン以上を積んでいるのも、珍しくない。
 上り坂ではエンコしますし、下り坂ではブレーキを焼く。
 故障車のたびに、渋滞です。

 運転手の小郭は、反対車線も、みごとにつかって、
 どんどん車をすすめます。
 技術は、もちろん、たしかです。
 しかし、技術だけで、どうなるものでもありません。
 度胸がなければ。
 度胸もまた、判断力と技術に裏打ちされなければ、危なくてしかたがない。
 小郭の運転に、私は、まったく不安を感じません。

 代県で、まずは、楊忠武祠にいきました。
 楊業とその息子8人、さらにその子孫を、まつっています。
 彼らの、ほぼ等身大の、塑像がおかれていました。
 ただみても、なんの変哲もありません。
 でも、物語を読み、想像をふくらませてからみると、
 おもしろいんですね。

 北方版「楊家将」で、私が、かすかに残念に思ったのは、
 華北平原と、太行山、黄土高原の、
 高低差が、あまりでてこないことです。
 ここには、ほぼ1000mの、差があります。
 読み落としたのかも、しれません。
 とにかく、そんなところを、両足プラス馬で、駆け回っているんですね。

 北方『楊家将』は、2004年、第38回吉川英治文学賞を、
 受賞しています。
 文庫になった機会に、もっとたくさんの人が読んで、
 楊家将が日本でもポピュラーになれば、ありがたいことです。
 楊家将の旅、なんてのはどうですか。
 ついでに、私たちのプロジェクトにも、立ち寄ってください。
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